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第3章 アレクを狙って

第713話 悩みと解放と師匠の偉大さ!

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アレクとノックスは、久しぶりに訓練をして軽く汗を流していた。
そして、ノックスから急に闘技場の隅へ来るように言われた。

「師匠、まだ軽く準備運動をしたくらいですよ。どうしたのですか?」

「とりあえず、座って話すぞ」

話しかければ、修行修行修行と三度の飯よりも好きな修行を行わずに、わざわざ腰を据えて話し始めたことに、アレクは驚く。

「最近、戦いに薬を使わなくなった理由はなんだ?何かあるのか?」

以前も、軽く話したことはあったが、またこの話を振られると思っていなかったアレクは、少し悩んだような顔をする。

「師匠だから話しますが、薬に頼ると自分の実力を伸ばすことができないんじゃないかと考えてしまい、素直に受け入れられない自分がいます」

「はぁ、馬鹿か!なら俺は、一刀両断が使えなくなるな。ここにいる全てのやつがスキルを使えなくなる。更に、アレク坊のために力を封印してる馬鹿がもう一人いる。誰かわかるか?」

ノックスからすると、スキルも立派な実力であり、使わずして死ぬなら、それは驕りであり馬鹿の所業だと思っている。

「それはそうですが......薬を使えば無限に強くなるんですよ。固定されたスキルならまだしも......それより、俺のために封印?誰ですか?」

アレクは、無限に強くなるのはチート過ぎて、本来ある実力の成長を止めてしまうのではないかと感じていた。

「本当に、坊主だな。だから、一生アレク坊とおやっさんには坊主と言われるんだ。考えが甘いぞ!それと封印してるのは、パスクだ。あいつは、魔眼持ちにも関わらず使っていない。ここまで言っても、まだわからないか?」

パスクは、アレクを心の底から主人だと思っている。だが、思いが強いあまりに、本来の力を使わないアレクに対して、自分も枷を課して同じ境遇を歩もうとしている。

「あっ!そう言えば......魔眼がありましたよね!俺のせいで本来使える力を制限されていたなんて。申し訳ないことをしてしまった」

アレクは、自分のせいだと気付いて肩を落として落ち込む。

「今、本来使える力を制限と言ったな。その通りなんだ。使える物を使わないのは驕りだ。アレク坊は、神にでもなったつもりか?それにな、戦闘に使うだけが全てじゃないだろう?」

ノックスからすると、使わないのは宝の持ち腐れであり、無い者に対しての侮辱だとも捉えている。
そして、生活の発展や命を助ける手段としても使えることを伝えたかった。

「わかりました。出し惜しみせず使います。そして、陛下に相談をして、生活の発展や医療にも役立てて行こうと思います。でも、まずはルシファーを滅ぼしてからですよね」

アレクは、魔物との共存の他に、新たな目標が芽生えた。
しかし、ルシファーを滅ぼさない限り、新たな目標を叶えることはできないと考えた。

「ほぉ~、ならパスクにも伝えとけよ。それから、忠誠心を間違えるなと俺が言っていたと伝えてくれ。あいつなら、理解するだろう」

「はい!今すぐに話してみます。師匠ありがとうございました。何か胸につかえたものがなくなった気がします」

アレクは、笑顔で手を振ってパスクがいる屋敷に向かう。

「師匠として、俺はアレク坊に道を示せているのだろうか......なぁ、もしお前が生きていたら、あれくらいの年齢の息子がいたかもな......」

ノックスは、愛していた女性を思い浮かべながら、感傷に浸る。
ノックスも、忘れられない過去や心に傷を負っている。どれだけ強かろうと人の子なののだ。





「ハァハァハァ、パスク~話があるんだ!今すぐに聞いて」

「アレク様、訓練に行かれたのでは?それよりも、お水を入れますので、椅子にかけてお待ちください」

アレクは、大急ぎでパスクが書類仕事をしている部屋に突撃をした。
パスクは、驚いた顔をしていたが、慌てる様子もなく水を入れに行く。

「とりあえず、これを飲んで落ち着いてください。それで、話とはなんですか?」

パスクは、アレクに水を渡して席に腰掛ける。アレクは、コップに入った水を一気に飲み干して「ふぅ~」と息を吐く。

「ごめん!師匠から魔眼を使ってないことを聞いて初めて気付いたんだ。俺が、パスクの力を制限してたってことに......」

「アレク様!何をおっしゃっているのですか!力を制限されたなど思ってもいません。私は、ご主人様と共に同じ景色を歩みたいのです。私個人のわがままだと思ってください」

パスクは、アレクの言葉を遮るように自分の意志を伝えた。
冷静沈着なパスクが、ここまで慌てるのは珍しい。

「最後まで聞いてほしい。俺は、ルシファーとの戦いが終わったら、人々のために力を解放する。そして、ルシファーを倒す時も、仲間を守るために出し惜しみせず使う。だから、パスクも解放してほしい。お願い」

アレクは、パスクに今考えていることを話した。すると、パスクは笑顔で「わかりました」と一言だけ言う。
アレクは、瞬時にわかりましたに込められた色々な意味を感じて、「ありがとう」と返す。

「あと、師匠から伝言があって、忠誠心を間違えるなって言ってたよ。パスクなら、すぐに理解するだろうって」

「アッハハ、ノックスさんには敵いませんね。全てお見通しでしたか......恥ずかしい限りです」

パスクは、少し笑ったあとに、天を見上げる。どれだけ頭がよくなっていても、人は盲目になると、まともは判断が出来なくなるんだなと気付いて恥ずかしくなってしまった。

そして、アレクとパスクは、お互いにスキルや魔眼を使わなかった理由を話して、前以上に絆が増すのだった。
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