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第3章 アレクを狙って

第709話 地獄の大改革と落ち込むヴィドイン

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「予想はしていたが、ヴァンドームのやつ、とことんやったな」

ヴィドインは、アレクとの会談を終えて、地獄に帰還した。そして、城に戻る前にヴァンドームがどこまでのことを仕出かしたのかを確認するため、各王の領土を見回ることにした。

「トリーとマグルの領土は、完全破壊したか。新しい王を誰にするかだな」

今回の下界に干渉した二人の領土や部下に関することは、協議を重ねてから判断する予定だったが、ヴァンドームが完全に瓦礫に変えてしまった。

「ほぉ~、おもしろい。こうも、キッパリと分かれるということは、何かあったな。早速、ヴァンドームに確認しにいくか」

各領土を見回った結果、一切被害が出ていない場所とトリーやマグルの領土のように瓦礫と化した場所が、完全に分かれる形となっていた。

「ヴィドイン様、お帰りなさいませ!ヴァンドーム様は、訓練場におります」

ウォルターが、ヴィドインの帰りを待っていたかのように、城の前で待機していた。

「今帰った。だが、お前はウォルターなのか?地獄の力が何倍も増している気がするのだが......」

ヴィドインは、数日しか地獄を離れていないにも関わらず、ウォルターが前にも増して強くなっていた。

「ホッホホホホ、ヴァンドーム様に鍛え上げられました。今や、第1階位様とも渡り合えるほどと言っても良いでしょう。それに、地獄の力が増して若返った気がしますぞ」

ヴィドインは、額に手をやって、どうすればそれほどの力を、この短時間に手にすることが出来るのかと呆れてしまう。
しかも、ウォルターは地獄の力の増幅により、肌艶がよくなっていた。

「もう、我いらなくないか。大王としての資質の違いに悲しくなってきた」

力技ではあるが、地獄にとって力が全てなので、各王に対する力の差を見せつけられ、部下の力の底上げを数日で成し得たことに、ヴィドインは大王としての自信を失う。

「何をおっしゃいますか。確かに、大改革をされましたが、ヴィドイン様は書類仕事を一切行わないので、一部の部下から大避難の嵐。更には、各地から陳情書も送られて来ております。中には、馬鹿の泣き言もございますがね」

力が全ての地獄ではあるが、書類仕事は存在している。ヴィドインは、下界でいう文官に当たる人物達と上手く連携を取りこなしていたが、ヴァンドームは一切しないので、部下達が屍のような状態でこなしていた。
そして、簡単に破壊するので、畑や鉱山や各施設が大損害を受けて、城に陳情書が送られてきてしまっている。

「忘れてたな。ヴァンドームが一切書類仕事をしなかったのを。ちなみに、陳情書を燃やしたとかはないよな?」

ヴァンドームが、大王だった頃は、陳情書の類が来た瞬間に、ヴァンドームが焼き払って、自ら陳情書を送った場所に出向いて武力解決していた過去がある。

「燃やしました。その後、馬鹿な内容を送った人物も燃やしておりました。それから、書類仕事をする者も鍛え上げるといい、一切書類仕事は出来ておりません。私も、日夜訓練漬けの毎日です」

ヴィドインは、数日いなかっただけで、色々なことがあったのだなと思考を停止して感慨深さを覚え始めた。
考えても、意味はない思ったからだ。

「そうか。我も、これからは苛立ったら破壊すればいいんだな。もうなるようになれだ」

「良いかと思われます。それとヴィドイン様は、大王になり、休む暇もなく働かれましたから、羽を伸ばしてください。それに、飢える者が少なくなったのは、ヴィドイン様の功績です。あまり己を卑下するようなことをおっしゃらないでください」

ウォルターからすると、地獄の大王ならば、もう少し武力を振りかざしていいとも考えていた。

「飢える者か......だが、結果がこれではな」

舐められた結果、今回の事件に発展して大変なことになった。しかし、ヴァンドームの頃は、逆らう者は誰もおらず、圧政していた事実はあるが、うまく回っていたように感じて大王としての力の差に落胆してしまった。

「確かに、お二人は全く違う大王です。しかし、ヴァンドーム様が次期大王に貴方をお選びになったのですよ。それに、多くの者が貴方に感謝しているのも事実です。私には、大王の苦しみを理解できませんが、大王の形は1つだけはないと思います」

ウォルターは、ヴィドイン以上にいい大王はいないと思っていた。その上で、力を振るえて文官もできる両立した大王に成長出来れば完璧だとも思っていたので、これを機に何か変わるきっかけを手にしてほしいと考えた。

「戻ってきたかと思えば、俺の力に驚いたか......って言い返せよ。はぁ~、久々に殴り合いだ。こい!」

「お、おい!離せ!どういうことか説明しろ」

ヴァンドームが、姿を現して、からかうような言葉を言うが、終始辛気臭い顔をするヴィドインを見兼ねて、首根っこを掴み訓練場に連れて行くのだった。
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