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第3章 アレクを狙って
第708話 職人の有り難さと気付きと成長!
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大樹は、アレクにごめんなさいをして、元の親子の関係に戻ることができた。
そして、今日はアレクが大樹を抱っこして、二人で学校の建設状況を確認しにきた。
ちなみに、ヘルミーナはスベアと元学園組と十戒とで、教育方針やら授業スケージュールの話し合いに出かけている。
「二人で、出掛けるなんて久しぶりだね。でも、俺の方についてきてよかったの?あっちには、セトとかランスとか相手してくれるお兄さんがいっぱいいたのに」
「僕は、パパといたかったんでしゅ。まだまだ、よくわからないことがいっぱいでしゅから学ぶでしゅ。それと、パパがみんなに慕われる理由を知りたいんでしゅ」
建築現場を見に行くだけなので、大樹からすると暇だろうと思い、セト達がいる方が楽しいのではないかと感じたアレクだったが、大樹は先日のことで足りない物があることや街に出るとアレクに感謝する声などをいつも聞くので、何故なのかを知りたくなった。
「大樹がいいならいいか。それに、パパも大樹と一緒に出掛けられて嬉しいしね」
「うん。僕も、パパと遊べて嬉しいでしゅよ」
大樹が、満面の笑みで応えると、照れたアレクは鼻を擦って、照れ隠しをしながら少し嬉しそうな顔をする。
「おやっさ~ん、順調そうですね」
腕組みをしながら、建設途中の学校を見ていたおやっさんに声をかけた。
「坊主か!それに、坊主の坊主も来たんじゃな。うむ。順調だぞい。だが、今回は試験を兼ねて魔物だけに任せておるわい。見習い卒業試験というやつじゃな」
各ドワーフの見習いが、総出となって学校建設にあたっている。しかし、外観を見た感じ、見習いが作ったとは思えないほどの出来栄えになっていた。
「おやっさん、坊主の坊主ではなく大樹と呼んであげてくださいよ。それにしても、まだ途中ですが、もう卒業でいいんじゃないですか?十分立派に感じますが」
「なんじゃ?坊主の坊主で間違ってないじゃろ?それ以外、呼ばんわい。それと、坊主には、そう見えるか。じゃがな、ワシらは毎日家主の命を預かっておるんじゃ。意味がわかるかのぅ?」
アレクは、坊主呼びに諦めがついていたが、流石に坊主の坊主は呼びにくいだろうし、大樹も名前で呼ばれたいだろうと思ったのだが、おやっさんは呼び方を変えてくれないようだ。
「相変わらずですね。もう坊主の坊主でいいですよ。それより、命ですか?ん~?どういうことだろう......教えてもらってもいいですか?」
冒険者や騎士ならば、命という言葉を使うのはわかるのだが、大工が命を、それも毎日預かっている意味がわからない。
「そうじゃな。坊主は、毎日屋根が落ちてこないかと、ビクビク怯えながら暮らしておるかのぅ?どうじゃ?」
「いえ、そんなことは考えたこともありません。気にするとしたら、災害や魔物が現れた時くらいでしょうか?」
おやっさんから、急に屋根が落ちてくる発言を受けたが、前世も今も一度たりともそのようなことに巻き込まれたこともないし、ましてや、そのようなことを考えもしなかった。
「普通は当たり前になっとるから、そうじゃろうな。しかしのぅ、ワシらからすると、普段の生活の中で事故などあってはならんのじゃ。柱の一本一本から丁寧に寸分の狂いなく建てる。意味がわかったかのぅ?」
「あ!やっとわかりました。最初の発言を謝らせてください。愚弄する発言をして申し訳ございませんでした」
プロでもない素人のアレクが、わかったような口ぶりで簡単に答えてしまったことに気付いて、おやっさんに頭を下げて謝る。
更に、見習いとプロを同じような仕事をしているような気持ちで捉えたのもいけないと感じた。
「うむ!わかってくれたらええんじゃ。ワシは、アレクの人となりを知っているから大丈夫じゃが、どんな職業の者に対しても、真剣に取り組んでおる者に言ってはならんぞい」
「はい!肝に銘じます。それから改めて、この街の移住区を建てて頂きありがとうございます」
アレクと関係性があるからこそ、おやっさんは最初の発言で怒ることなく、優しく教えた。
そして、アレクは当たり前だと思っていたことが、そのような思いで作られていることを知って、改めて感謝する。
「ワシの専門は、武具じゃわい。その言葉は、建てたドワーフと見習いの魔物達に言ってやるんじゃな」
おやっさんは、感謝する相手を間違っていると言って、近くで見習い達を鋭い眼光で見ているドワーフの方に目配せする。
「わかりました。大樹、パパの成長に、もう少し付き合ってくれるかな?」
「いいでしゅよ。僕も、勉強になるでしゅ。僕も、みんなにありがとうしたいでしゅ」
アレクは、「そうかそうか」と言いながら、大樹の頭を撫でて、お礼を言いに行くのだった。
そして、今日はアレクが大樹を抱っこして、二人で学校の建設状況を確認しにきた。
ちなみに、ヘルミーナはスベアと元学園組と十戒とで、教育方針やら授業スケージュールの話し合いに出かけている。
「二人で、出掛けるなんて久しぶりだね。でも、俺の方についてきてよかったの?あっちには、セトとかランスとか相手してくれるお兄さんがいっぱいいたのに」
「僕は、パパといたかったんでしゅ。まだまだ、よくわからないことがいっぱいでしゅから学ぶでしゅ。それと、パパがみんなに慕われる理由を知りたいんでしゅ」
建築現場を見に行くだけなので、大樹からすると暇だろうと思い、セト達がいる方が楽しいのではないかと感じたアレクだったが、大樹は先日のことで足りない物があることや街に出るとアレクに感謝する声などをいつも聞くので、何故なのかを知りたくなった。
「大樹がいいならいいか。それに、パパも大樹と一緒に出掛けられて嬉しいしね」
「うん。僕も、パパと遊べて嬉しいでしゅよ」
大樹が、満面の笑みで応えると、照れたアレクは鼻を擦って、照れ隠しをしながら少し嬉しそうな顔をする。
「おやっさ~ん、順調そうですね」
腕組みをしながら、建設途中の学校を見ていたおやっさんに声をかけた。
「坊主か!それに、坊主の坊主も来たんじゃな。うむ。順調だぞい。だが、今回は試験を兼ねて魔物だけに任せておるわい。見習い卒業試験というやつじゃな」
各ドワーフの見習いが、総出となって学校建設にあたっている。しかし、外観を見た感じ、見習いが作ったとは思えないほどの出来栄えになっていた。
「おやっさん、坊主の坊主ではなく大樹と呼んであげてくださいよ。それにしても、まだ途中ですが、もう卒業でいいんじゃないですか?十分立派に感じますが」
「なんじゃ?坊主の坊主で間違ってないじゃろ?それ以外、呼ばんわい。それと、坊主には、そう見えるか。じゃがな、ワシらは毎日家主の命を預かっておるんじゃ。意味がわかるかのぅ?」
アレクは、坊主呼びに諦めがついていたが、流石に坊主の坊主は呼びにくいだろうし、大樹も名前で呼ばれたいだろうと思ったのだが、おやっさんは呼び方を変えてくれないようだ。
「相変わらずですね。もう坊主の坊主でいいですよ。それより、命ですか?ん~?どういうことだろう......教えてもらってもいいですか?」
冒険者や騎士ならば、命という言葉を使うのはわかるのだが、大工が命を、それも毎日預かっている意味がわからない。
「そうじゃな。坊主は、毎日屋根が落ちてこないかと、ビクビク怯えながら暮らしておるかのぅ?どうじゃ?」
「いえ、そんなことは考えたこともありません。気にするとしたら、災害や魔物が現れた時くらいでしょうか?」
おやっさんから、急に屋根が落ちてくる発言を受けたが、前世も今も一度たりともそのようなことに巻き込まれたこともないし、ましてや、そのようなことを考えもしなかった。
「普通は当たり前になっとるから、そうじゃろうな。しかしのぅ、ワシらからすると、普段の生活の中で事故などあってはならんのじゃ。柱の一本一本から丁寧に寸分の狂いなく建てる。意味がわかったかのぅ?」
「あ!やっとわかりました。最初の発言を謝らせてください。愚弄する発言をして申し訳ございませんでした」
プロでもない素人のアレクが、わかったような口ぶりで簡単に答えてしまったことに気付いて、おやっさんに頭を下げて謝る。
更に、見習いとプロを同じような仕事をしているような気持ちで捉えたのもいけないと感じた。
「うむ!わかってくれたらええんじゃ。ワシは、アレクの人となりを知っているから大丈夫じゃが、どんな職業の者に対しても、真剣に取り組んでおる者に言ってはならんぞい」
「はい!肝に銘じます。それから改めて、この街の移住区を建てて頂きありがとうございます」
アレクと関係性があるからこそ、おやっさんは最初の発言で怒ることなく、優しく教えた。
そして、アレクは当たり前だと思っていたことが、そのような思いで作られていることを知って、改めて感謝する。
「ワシの専門は、武具じゃわい。その言葉は、建てたドワーフと見習いの魔物達に言ってやるんじゃな」
おやっさんは、感謝する相手を間違っていると言って、近くで見習い達を鋭い眼光で見ているドワーフの方に目配せする。
「わかりました。大樹、パパの成長に、もう少し付き合ってくれるかな?」
「いいでしゅよ。僕も、勉強になるでしゅ。僕も、みんなにありがとうしたいでしゅ」
アレクは、「そうかそうか」と言いながら、大樹の頭を撫でて、お礼を言いに行くのだった。
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