チート薬学で成り上がり！ 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました！

第3章 アレクを狙って

第707話 街の新たな発展と将来のために！

アレクに怒られた大樹は、あれからずっとヘルミーナに抱っこされながら胸に顔を押し付けて泣いている。しかし、アレクはいつものように優しく接するのではなく、今回は厳しくしようと考えて、こちらから歩み寄らないことにした。

「ガッハハハハ、何杯飲んでも飽きんのぅ。って、やっと戻ってきよったか。坊主の坊主は、拗ねておるのか？」

おやっさんとマンテ爺は、あの短時間で3樽目に突入していた。
そして、いつもと違う様子におやっさんは、すぐに大樹の異変に気付く。

「色々ありましてね。剣ですが、全て落としてしまって、もしかすると傷が付いてるかもしれません。もし、打ち直すなら材料負担はしますので言ってください。本当に、ごめんなさい」

アレクは、父親として大樹の代わりに頭を下げた。大樹からは、落ち着いてから謝らせようと決めたので、今は拗ねたままにさせている。

「傷？落ちたくらいじゃ傷なんぞ付かんわい。じゃがのぅ、坊主の坊主、物を粗末に扱っちゃいかん。それに、自分のやったことを父親に謝らせるのは、情けないぞい。よ～く考えるんじゃな」

おやっさんは、怒っている素振りは一切なく、諭す感じでもなく、淡々と話をしていく感じに思えた。それは、大樹を赤ん坊だからと馬鹿にしているわけではなく、親子で解決する問題だと言っているような感じだ。

「俺も父親になったんですね。改めて、おやっさんの目と話し方で思いましたよ。強くなった自覚はありますが、まだまだ父親としては新人ですね。俺も、早く一人前になれるように頑張ります」

アレクは、子供に対してどう向き合えばいいのか、まだ模索しているところだった。しかも、度重なる問題で、大樹と過ごす時間も取ることが出来ないでいた。しかし、大樹はどんどん成長していき、手の掛からない子になっていくので、どこかで甘んじていた部分があり、今回のことやおやっさんの言葉から、更に父親として成長する必要があることに気付かされた。

「ワシは、何もしとらんぞい。まぁ、親子共に成長すればよいじゃろう。それよりも、何か用があったんじゃないのかのぅ？」

おやっさんは、いつものような達観した様子で話す。しかし、これがおやっさんの優しさなのである。

「はい。大人も通える学校を建てようと思っています。それに伴い、子供の学校も大きくしようかと考えています。力を貸してもらえますか？」

「ほぉ～大人の学校とな？それは、何を学ぶんじゃ？」

この世界では、貴族や商人や少数の平民くらいしか学校に通うことがなく、ましてや大人になってから学ぶ人間などいないので、おやっさんからすると、すぐに想像ができない。

「算術と読み書きと常識が主になります。ですが、更に知識をつけたい人が現れた場合、進学クラスを作るつもりです。人間も魔物も魔族も平等に」

アレクは、王都にある学園並の規模を将来作ろうと考えていた。本当ならば、前世のような理数系で習うような高度な授業を行いたかったが、アレク自身頭はよくないので断念することにした。

「学ぶ理由がわからんのぅ。皆、学がなくとも仕事が出来とるぞい。理由を教えてくれんか？」

この世界は、生きていくことに必死で、やりたい仕事を選ぶといった概念が存在しない。だからこそ、おやっさんのような考えに行き着いてしまう。

「人間魔物魔族問わず、やりたい仕事を出来ているかと言われたらそうではないんです。しかし、学ぶことで商人や会計や貴族に仕えたりなど仕事の幅が広がります。それに、もう一つ理由があるんです」

「なんじゃ！もう一つとは？」

おやっさんの考え方が、根底から覆されたことで、もう一つが気になってしまう。

「もう一つは、共存のためです。学を付けたからといってすぐに差別はなくならないのはわかっていますが、いつか魔物から人が学ぶ世界も見てみたいじゃないですか。その足掛かりですよ」

アレクも、知識が付いたからといって、今まで狩る対象になっていた魔物が、そう簡単に社会に溶け込めないのはわかっているが、いつかみんなが笑って平等に暮らせる世界を作るには、このような変化をもたらす必要があると考えている。

「そうじゃな。いつまでも、この街だけにいるわけにはいかんし、解体や瓦礫撤去の魔物扱いも嫌じゃしのぅ。ワシが、仲間を集めて、早々に建ててやるわい。任せるんじゃ。なら早速行くかのぅ」

おやっさんは、思い立ったらすぐ行動なので、店を飛び出し仲間の下に向かった。

「行っちゃった。まだ詳細を伝えてないのに」

「改めて本当にいい街よね。私達も、向かいましょう。詳細を伝えにね」

どんな建て物かや内装すらも話していないのに行ってしまった。
ヘルミーナは、ここまで素直で協力的な街の住人が素晴らしいと感じて、自然と笑みが溢れる。
そして、アレクも笑顔をヘルミーナに返して、マンテ爺とヘルミーナと大樹と一緒に、おやっさんが向かった場所に行くのだった。