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第3章 アレクを狙って

第705話 家族団欒とヘルミーナの仕事が決まる。

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アレクは、ヴィドインとの話し合いが終わったあと、大急ぎでヘルミーナと大樹の下に向かった。

「ヘルミーナ、大樹、待たせてごめんね。急なお客さんで、ただいまって言いに行けなかったよ」

アレクは、部屋に入るなり、二人に声をかける。すると、ヘルミーナに絵本を読んでもらっていた大樹は、すぐに立ち上がって満面の笑みでアレクへ抱き着きに行く。

「パパ~、おかえりなさいでしゅ。凄い嫌な気配がしたからずっと心配してたでしゅよ」

「おかえりなさい。大樹が、ずっと心配してるから私も気が気じゃないなかったわ。今日来ていたお客様は、大丈夫だったのかしら?」

大樹は、すでに気配察知が出来るようになっており、ヴィドインの底に眠る禍々しいオーラを察知していた。
ヘルミーナは、昔に比べて落ち着いたというのか、母親になったからだろうか、慌てる様子が一切なくなった。

「改めてただいま。二人に会えなくて寂しかったよ。よし、大樹抱っこだ。ヘルミーナもおいで」

アレクは、大樹を抱きかかえて、ヘルミーナを軽く抱擁し、家族三人仲睦まじい光景が広がる。
そして、暫く家族の再会を味わったあと、アレクは大樹を膝の上に乗せて、ヘルミーナとくっつくように座る。

「さっきの話だけど、地獄の大王が来てたんだよ。今のところ、利害が一致?う~ん?どちらかというと協力してほしい感じになってるから、敵対関係にはならないかな」

アレクは、事細かな内容は話さないが、ヘルミーナと大樹にもわかるように端的に伝えた。

「ずっと思っていたんだけど......アレク呪いとかかけられてるとかないわよね?だって、色々巻き込まれすぎだもん」

アレクが、あまりにも次から次に巻き込まれてしまうので、ヘルミーナは何か未知の呪いが影響しているのではないかと思ってしまった。

「アッハハハハ、確かに俺も、それは思ったから調べたんだけど、至って健康だし呪いもなかったよ。ちなみに、ヘルミーナと大樹のことも、こっそり調べたけど異常なしだったから安心して」

アレク自身も、不自然過ぎるほどに負というか厄介事に巻き込まれてしまうので、何か影響してるのではないかと、診断をしていた。

「なら安心ね。それに悪いことばかりじゃなかったわね。魔物と親密になれたのはアレクのお陰だもん。魔物の方が親切だし、話しやすいもの。大樹を高い高いで投げ飛ばすのはヒヤヒヤしちゃうけど」

アレクが、任務に出ている間に、街の魔物達と仲良く生活していたようだ。
しかし、投げ飛ばす高い高いとはなんだと思ってしまう。

「高い高いで投げ飛ばす?どういうこと?」

「オーガの子供と遊んでたら、オーガのおじさんが、高い高いしてくれたでしゅ。そしたら、せ~のって言ってビューンて空まで飛ばしてくれたんでしゅよ」

大樹は、その時のことを思い出しながらアレクに話した。

「どうやら、オーガの間では子供の頃から度胸をつけるためにやるそうよ。伝統的なものらしいわ。子供達からしたら遊びと思ってるみたいだけど」

オーガは、屈強な肉体と誰にも負けない精神力を持ってこそ一人前とされる。そのために、子供の頃から英才教育が始まる。

「種族によって色々あるんだね。大樹なら心配ないだろうけど、普通の人間もいるから、今後を考えると教えた方が良さそうだね。死人が出てからじゃ遅いし」

魔物達が復興を頑張ったお陰で、少人数ではあるが人間も移り住んでくるようになり、じきに子供達も増えると考えると、このままではいけないと感じてしまう。

「大樹のことも心配してくださいね。まだ赤ん坊なのよ。でも、違いを学ぶのは大切ね。アレクが、もしいいなら私にその役を任せてくれないかしら?」

「ゔっ、感覚が麻痺してたけど、赤ん坊だったんだよね。大樹、ごめんね。怖いことがあったら言うんだよ。えっと、私がやるってどういうこと?」

大樹は、「僕は、強いでしゅから、大丈夫でしゅ」と自信満々に返答する。それを、聞いたアレクとヘルミーナは、顔を見合わせて思わず苦笑いを浮かべてしまう。

「スベアさんが、子供達の先生をする話があったと思うんだけど、私は大人達に教育をしようと思うの。算術も読み書きも教えられる。それに、魔物との共存を考えるなら必要不可欠だと思うのよ」

アレクは、今まで子供達の事ばかり考えており、進化を続けてなんでも出来る大人のことをあまり考えていなかったことに気付く。
確かに、魔物との共存を考えると常識や知識をつけることでより人間との距離が縮まると感じた。

「是非やってほしいけど、大樹を見ながらとか大変じゃないかな?大丈夫?」

「大丈夫よ。さっき、アレクに赤ん坊なんだからって言った手前言いにくいのだけど、ミルクもトイレも一人で出来ちゃうのよ。それに、大樹も一緒に学べばいい機会だと思うの」

手間がかからないのは有り難いことなのだが、あまりにも赤ん坊離れし過ぎていて、ヘルミーナは呆れてしまっているようだ。
それから、大樹が他の子供達と将来関わる時に、常識を身に着けておけば、何かと安心出来るとヘルミーナは考えた。

「大樹凄いよ!お父さんとして誇らしく思うよ。自慢の息子だ。ヘルミーナも、俺には勿体ないくらい出来た奥さんだよ。二人が俺を選んでくれて本当に嬉しい。ヘルミーナ先生の件、すぐに進めよう」

アレクは、大樹を抱っこするとぐるぐる回って喜びをあらわにする。そして、ヘルミーナの方が見ながら改めて結婚してくれたことにお礼を言う。

「キャハハハ、パパ~楽しいでしゅ」

「フフッ、私も、アレクが旦那さんで大樹のパパでよかったと思ってるわ。あと、先生はやめて恥ずかしいわ」

大樹は、満面の笑みで楽しみ、ヘルミーナは頬を染めて恥ずかしがるのだった。
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