上 下
592 / 732
第3章 アレクを狙って

第703話 あのデストロイが......人は環境で変わる!

しおりを挟む
ノックスとヴィドインが、話し合っている頃、アレクは二人を連れて防音対策がされている部屋に入った。

「二人共、お疲れ様。嫌な役回りをさせてごめんね」

アレクは、部屋に入るなり、二人に謝り始める。

「チッ、めんどくせぇ役回りやらせやがって。次戦場に行く時は連れてけよ。毎度毎度、お前だけ抜け駆けしやがってよ」

「通信の魔道具で、殺気を出し続けろと命令が来た時は、驚いたわい。確実に、戦闘になると思ったからのぅ」

二人が、事前に警戒していたのは事実だが、どうやらアレクが、通信の魔道具で殺気を出し続けるよう命令したらしい。

「本当に、ごめんね。みんなが、警戒する人物だったから、どんな人か確かめたかったんだよ。勿論、二人の強さがあってこそだからさ。期待に応えてくれてありがとう」

アレクは、二人に頭を下げる。そして、二人を見ると、仕方ないなといった表情をしていた。

「俺は、次の戦場に連れて行ってくれるなら、なんでもいいけどよ。あいつは、血なまぐさい匂いが漂ってやがるし、期待できそうだ」

デストロイは、我慢に我慢を重ねてきたので、もう我慢の限界に達しているようだ。

「次は、必ず連れて行くよ。それに、ある予言で、厄災が起こるって言われたから、デストロイの出番は山程あるはずだよ」

デストロイは、ニヤリと笑って嬉しそうにしている。
アレクからしても、魔物の街を守るためには、デストロイの助けは必須なので、戦闘したいだけという動機だったとしても必要不可欠な存在だ。

「ワシも、この体を試したいのぅ。もう少し慣れるのに時間がかかるが、どこまで戦えるか気になるわい」

基本的な動きの確認から始めて、やっと模擬戦で戦えるようになった。やはり、今までと戦い方も目線も、全てが違うので苦労しているようだ。

「あ、そうだった!なんで、マンテ爺が人化してるの?」

アレクは、ヴィドインとの話し合いですっかり忘れていたマンテ爺の人化について尋ねた。

「ワシのことは、あとでええじゃろう。それよりも、地獄の大王を持たせる方が厄介じゃわい。それで、ワシらは戻ったら謝ればええんじゃろ?」

マンテ爺は、経緯を話すと日が暮れてしまうと思って、話を戻す。そして、今回の話し合いがうまく行くように、自らのプライドを捨ててでも、アレクのために動こうとしている。

「そうだね。あまりの変わりようで気になって仕方なくなっちゃったよ。謝ってくれたら嬉しいけど......嫌じゃない?デストロイとか余計に......」

マンテ爺に言われて、アレクも今ではないと思って、本題に戻す。
今回のことは、アレクの指示で動いた結果なので、余計にアレクは、申し訳なさを感じるとともに、プライドの高いデストロイが、受け入れられるのかと思ってしまう。

「俺が、謝る理由がねぇ......だが、それで俺の部下に被害が出る可能性があるなら謝ってやる。これだけは、言っとくからよ。お前のためじゃねぇからな」

デストロイは、思いがけないような答えを口にする。
アレクは、ツンデレのような感じが可愛くて仕方なくなる。

「ワシは、初めから謝るつもりでおるぞい。謝ったからと、何か減るもんでもないしのぅ」

マンテ爺は、一切気にする様子もなく、アレクのためになるならと平気な顔をして言う。

「二人共、ありがとう。なら戻ろうか」

三人は、部屋を出て応接室に向かうのだった。





アレク達が、応接室に入ると、ヴィドインとノックスと豪牙が対面で座り、先程の殺伐とした雰囲気はなく談笑をしていた。

「そっちの話は終わったのかな?」

「はい!先程は、大変失礼致しました。二人からも謝りたいと言っていますので、謝罪を受け入れてもらえると有り難いです」

ヴィドインは、先程よりも物腰柔らかくアレクへと聞いてくる。
アレクは、いなかった間に、何があったのか少し気になるが、あとでノックスに聞けばいいかと思う。

「この街を守りたいと願うばかりに、少々気が立っておったようじゃ。殺気や襲いかかってしまったこと申し訳なかったのぅ」

「悪い。俺も気が立っちまって止めれなかった。許してくれ」

マンテ爺とデストロイは、ヴィドインに対して、謝罪の言葉とともに頭を下げる。
ノックスと豪牙は、まさかあのデストロイまでが、頭を下げると思わなかったので思わず驚いてしまう。

「君がいない間に、新たな事実も発覚したしな。我としても、敵対は避けたい。二人の謝罪を受け入れよう。そして、こちらも挑発するような物言いをして悪かったな。これで手打ちにしてくれ」

ヴィドインも、同じように頭を下げて謝罪をする。
アレク達の目から見ても、地獄の者が他人に頭を下げるなど前代未聞だとわかるので、色々を飲み込んで謝罪してくれたことがわかる。

「俺のいない間に、何があったかは、存じ上げませんが、水に流して頂けるなら嬉しい限りです。お互いわだかまりもなくなりましたし、本題に入りませんか?」

「そうだな。対等な関係として、取り引きをしたい。早速、本題に入らせてもらおう」

アレクが、ヴィドインに対して握手を求めると、嫌な顔一つせずに、口角を上げて握手に応じてくれたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

成長チートと全能神

ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。 戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!! ____________________________ 質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。