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第3章 アレクを狙って

第696話 地獄を統べた二人の男達の再会!

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銀髪でスタイリッシュスーツを身に纏った男が、トリーを抱えて歩いていた。
その場所は、2つの赤い月が、唯一歩く道を照らしてくれる。そして、周りを見渡すと、大きな岩や鉱物が固まった大きな物体のような物が、そこらかしこにあるだけの空間が広がっていた。

「これは、これは、前大王ヴァンドーム様!お久しぶりでございます。しかし、か弱いとはいえ、道すがら悪魔を根絶やしにされては困ります。また、難癖を付けられて第5階位様辺りが戦争を仕掛けてくるではないですか」

トリーを連れ去った地獄の王は、まさかの地獄の前大王だった。そして、地獄に戻ってきたが、向かう先に着くまでに、幾度となく力の差すら理解できない悪魔達が、襲いかかってきた。しかし、ヴァンドームは全て触れる前に消し去った。

「相変わらずだなウォルター。あのような下級悪魔を飼っているやつが悪い。それに、どの口が言ってるんだ。第5くらいならウォルター一人でどうにかなるだろ?」

綺麗に整った髭に、オールバックで纏められた白髪がよく似合う執事の格好をしたウォルターに、笑いながら話しかける。

「ふっほっほっほ、ヴァンドーム様は、相変わらずですね。何も変わっていらっしゃらない。それから、第3階位様の軍勢くらいならば問題ございません。あの時よりも、更に成長しておりますから」

ウォルターは、執事らしく丁寧な話し方をしているが、話す内容的に地獄の住人らしく負けず嫌いに見える。

「ほぉ~、第3にか。ならば、あとでどれ程強くなったか、試すとしよう」

ヴァンドームは、頭の先から爪先までを一度ゆっくりと見てから、ウォルターに戦いを申し込む。

「ご冗談は、お止めください。私の身が持ちません。それより、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「本気は出さん。多少付き合ってくれたらいい。おっと、そうだったな。今日は、こいつを引き渡しにきた。それから、第8のやつも、もうすぐ死ぬ。その話をしにきた」

ウォルターが、用件を尋ねると、ヴァンドームはトリーの引き渡しとアレクの強さを見てマグルは殺られると確信した。

「なんだか、穏やかではありませんね。これは、すぐさま大王様に報告せねばなりませんね」

ウォルターは、先程とは打って変わって鋭い目つきに変わる。

「俺が、直接向かうから、ウォルターは邪魔が入らないようにしてくれ。それから、あいつは、既に知っているはずだからな」

そう言い残して、トリーを抱えて、少し先にある地獄の大王が住む大きな真っ黒い城へと向かう。
後ろでは、ウォルターが何か騒いで、止めようとしているが、ヴァンドームは一切聞く耳を持たず去っていく。

「貴様、何者だ?ここは、大王ヴィドイン様の城だ!今すぐに立ち去れ!でなければ、殺す」

城に近付くと何者かが、ヴァンドームの行く手を阻んだ。見た感じは、人間に例えると10代後半くらいの見た目で、黒い目と赤い髪が特徴の男である。

「まだ100にも満たない若造だな。俺が、辞めてから生まれたやつか。俺は、帰る気はない。どうする若造?」

ヴァンドームは、目の前の少年を少し小馬鹿にするような口調で話して、わざと挑発する。

「馬鹿にしやがって!許さねぇ!死ね」

ヴァンドームに小馬鹿にされた男は、間髪入れずに、黒い地獄の炎を放ってくる。
そして、ヴァンドームは避けることなく地獄の炎をまともに食らい飲み込まれる。

「力量もわからないクズは、そのまま灰になっちまえ」

地獄の炎は、飲み込んだあとも、ヴァンドームの体全体を包み込むように燃え続ける。

「ほぉ~、100も満たない若造にしてはやるな。だが、俺の相手が務まるには、まだまだだな」

ヴァンドームは、地獄の炎をあっさりと霧散させて、逆に力量の差を見せつける。

「な、な、なんで!?俺の炎が、こんなあっさりと......そんなはずない!何かの間違いだ。最大で......」

「メギド何をやっているのですか!?この方は、前大王のヴァンドーム様です!今すぐに、謝罪しなさい」

メギドが、もう一度地獄の炎を放とうとした瞬間、ウォルターが両手を広げて間に割って入る。

「前大王様!?本当に......?」

メギドは、少し震える。だが、300年前に辞めて、一度も戻っていない前大王が、ここにいるのかと、まだ信じられずにいる。

「ほぉ~、ウォルターの言葉を信じないとは、この300年で地獄も変わったな。なら、真実を分からせてやる」

ヴァンドームは、地獄の力の一部を解放してメギドに向かって放つ。

「あぁぁぁ、ぐぁぁぁぁぁぁぁ」

先程、メギドが放ったような相手に外傷を与える大技ではないにも関わらず、精神が崩壊するような声を上げる。

「ヴァンドーム様、お止めください!このままでは、メギドが死んでしまわれます」

「地獄の者なら、自分よりも強い者に逆らった場合、こうなることはわかっているはず。何故止めなければならない?」

ウォルターは、現大王ヴィドインの配下であるメギドをヴァンドームが殺した場合、争いが起こる可能性があると考えて止めた。

「俺に免じて、それくらいにしてやってくれないか?メギドには、後程キツイ罰を与えておく。それに、トリーの件で、来てくれたのだろう?」

ワインレッドのマットに、地獄にいるとは思えないほど、優しい顔をした人物が止めにはいる。

「はぁ~。現大王に、そう言われたら従うしかないな。久しぶりだな。ヴィドイン」

止めに入ったのは、現大王のヴィドインである。ヴァンドームは、メギドに放っていた地獄の力を止めた。

「あぁ~、300年振りか。色々聞きたいこともあるから、久しぶりにワインでも呑もう」

300年振りに出会った二人は、仲が良いのか、二人共笑顔で言葉を交わすのだった。
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