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第3章 アレクを狙って

第695話 秘密調査から戻るパスク!

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外が、少し明るくなってきた早朝に、アレクは城を出て、湖へと向かっていた。誰も、起こさないようにと、部屋の窓から飛び出して空を飛んでいく。すると、後ろからパスクがやってきた。

「アレク様~、おはようございます」

パスクが、大きな声であいさつをする。

「おはよう。これから、湖の調査に行くけどついてくる?」

急に、パスクから声をかけてきたにも関わらず、アレクは驚かず平然と言葉を交わす。

「はい!お供します。それから、ご命令されていた調査が完了しました。結果報告をしてもよろしいでしょうか?」

ここ数日、パスクがいなかったのは、アレクから単独調査の命令が下されていたからだ。

「お疲れ様。パスク一人に任せてごめんね。大変だったでしょ?」

最初は、パスクとオレールに調査をさせるつもりだったが、トリーから攻撃を受けたナハスとレッドドラゴンを見ると、戦力的に厳しいと感じたアレクは、もしもの時のために、オレールをこちら側に残した。

「いえ、アレク様から色々薬を頂きましたから、あっさり終了しました。それから、あの化け物地味たやつにも見つかりませんでした」

アレクは、変身薬と魔力変化薬と神力を一時的に消す薬を渡していた。

「それならよかったよ。あの化け物に見つかるのを一番恐れていたからね。それで、共和国はどんな感じだったの?」

アレクが、お願いした単独調査とは、共和国の様子と地獄の力か神力を持つ者が、存在するのかを探索してもらうことだった。

「人の往来は激しく、商人も多く特産物なども色々ありました。それに、街並みも綺麗で、警備隊も適度に巡回していました。だからといって圧政されている様子もなく、理想的な国だと思います」

パスクの話を聞く限り、かなりいい場所だと感じた。あの強大な力を持つ男がいる場所ということで、色々勘繰り過ぎてしまったのかとアレク思う。

「思ってたのと違ったから正直驚いてるよ。あいつがいないなら、全員で旅行したいくらいだもん。それで、もう一つの方はどうだった?」

「神力やあの男のような力は感じませんでした。それから、噂を耳にしました。なんでもある男が、スラム街を買い取って一新させたらしいです。スラム街を見てきたのですが、統率が取れており、家屋も人も身綺麗でどよんだ空気が一切ありませんでした」

アレクが、懸念していた地獄の力を備えた人物が集まっている説は消えた。
そして、スラム街なくなれば、街にとっても人にとっても良いことばかりにも関わらず、何故パスクは、顎に手をやりながら言うのだろうか。

「最悪のシナリオは回避できたね。スラム街がなくなった!?しかも、買い取る?国は、何も言わなかったのかな?それに、個人の資金力か組織的か......今のところは、静観するほかないね。他国の事だし」

国ですら手を焼く組織がいるであろうスラム街を買い取りまとめる上げること自体が異様であり、何かしら起こっているのは事実だが、他国に介入はできないので、見守るしかない。

「踏み込んだ調査をしたかったのですが、組織や国が絡んでいると面倒なことになりそうでしたので、アレク様の判断を仰ごうとしていました」

パスクは、国家間の問題にするわけにはいかないので、街の様子だけを確認して戻ってきた。

「流石、冷静な判断で助かるよ。本当なら、探りなんてしたくないんだけど、あの男がいるのとエルフの国と盟約を結んだからね。特に、エルフの国に飛び火するような事態は避けたい」

共和国を調査したのは、あの男の支配が始まっていないかと、もし戦争や争い事が共和国で起きるなら、早急にエルフの国の防備を固める必要があったからだ。

「内情まではわかりませんが、国の様子を見る限り、すぐに何かが起こる様子はありませんね。それよりも、ゼロ以外に敵がいるとなると、相当厄介ですよ」

活気ある街を見ている限りは、大丈夫だと判断した。そして、パスクが一番懸念しているのは、地獄のやつらとルシファーの同時進行された時に、抑えきれるかわからないからだ。

「はぁ~、それなんだよね。問題は......まぁ、起こってないことを心配しても仕方ないしね。でも、世界樹からの知らせと、俺の胸騒ぎで不吉なことが起こる確信が持てたから、魔物の街に戻ったら備えておこう」

「はい!色んなことを想定して作戦や逃走用ルートや計画を立てておきます」

パスクは、わざわざ世界樹のことや胸騒ぎについて尋ねようとはしない。アレクに絶対の信頼をおいているからこそだ。
そして、すぐに頭の中で立案を立て始めるのであった。
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