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第3章 アレクを狙って

第694話 今後に向けてとアレクの胸騒ぎ!

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アレクは、マグルを倒したあと、仲間に通信の魔道具で連絡を取り、倒したことを伝えた。そして、結界を解除してもらい、再び城へと帰還した。

「みんな、お疲れ様。今回関わった元凶は、排除出来たよ。これで、全て終わりかな」

アレクは、全員に首謀者を無力化できたことを伝えた。
すると、王とライザーと残りのエルフ達が、膝を突いてアレクに頭を下げる。

「アレク殿、本当に今回の件、エルフ全員に代わり感謝する。そして、先程の盟約のことだが、アレク殿の条件を全て呑み、従おうと思う」

王が、発言したのは、属国にも等しい条件だった。しかし、周りのエルフは、誰一人として反対する者はいない。
そして、エルフ達はアレクに対して怯えているわけではなく、希望を持った目をしていた。

「条件を全てですか?俺達が、無理難題を押し付けたら、どうするのですか?」

「アレク殿が、そのようなことをしないのは、ここに来てからの言動を見ればわかることだ。それに、もし無理難題を言われたとしても、命の恩人のアレク殿であれば、皆受け入れるであろう」

王は、全面的にアレクを信用している。しかも、無理難題を突き付けられてもというくらいだ。だが、アレクからすると、そんなことをすれば、エルフ全員がまた暴れ出すだろうと想像する。

「王様の言う通り、無理難題を言うことはありません。ただ、この場所以外に、拠点を設ける必要があるかなとは思っています」

「新たな移住区を作るということか?理由を聞かせてもらってもよいだろうか?」

閉鎖的かつ自分達の歴史や居場所を大切にするエルフならば、もっと驚きの声や反発があるだろうと考えていたが、全くその気配がないので、逆にアレクが驚いてしまう。

「エルフの国には、世界樹や長命にする水が存在しています。この事実が明るみになった場合、他国から戦争を仕掛けてくるか、なんらかの手段で奪いにくると考えます。そのために、偽の拠点作りをする必要があると思っています」

人間とは、欲深い生き物で、必ずどこかの王族や貴族が、全てを奪いにやってくる。そして、エルフ自体が、珍しい存在であるため、奴隷や見世物にする輩も出てくるだろう。

「ふむ。やはりアレク殿達が特別だったのだな。ということは、新しい拠点を作ったとして、余達はどっちに住めばよいのだ?」

アレク達を見ていると、人間は危害を加えない存在に思えるが、改めて言われて、アレク達が特別なのだと、再認識させられた。

「今は、こちらでいいと思います。会談が行われる際に、王様とライザーさんと代表者が、その場所に行けばいいと考えています」

アレクは、住むというよりも、会談の場として設けようとしていた。

「それならば助かる。だが、どこの国から会談をすべきなのだろうか?それと、会談がある際は、アレク殿にも同席してもらいたい」

アレクの言うことは理解出来るのだが、今まで閉鎖的だったエルフ達が、他種族と交流を持つことは非常に難しいことだ。そのため、どうしても躊躇ってしまう。

「勿論同席します。それから、俺の懇意にしている王族や貴族を招こうと思います。そして、初めは魔ノ国との国交が進めましょう。魔ノ国は、魔道具の生産に優れた国です。それに、多種多様な種族がいる国なので、差別などはありません」

アレクは、魔ノ国から転移の魔道具やエルフ達を外敵から守る魔道具を作って貰おうと考えていた。これなしに、他国との国交は絶対にあり得ないと思っている。

「うむ。アレク殿は、もうそこまでの計画を立てておったのだな。アレク殿の計画を無駄にせんよう、余は同族に周知することから始めよう。すまんが、力を貸してくれ」

「計画は立てられますが、エルフ達を説得出来るのは、王様しかいませんからね。それに、盟約を結んでいるのですから、力を貸すのは当然です」

王が思っていた以上の計画を立てていたアレクに対して、知力においても敵わないなと感じる。そして、ここまでしてくれている以上、自分に出来ることは何でもやろうと思うのだ。

「そう言ってもらって助かる。アレク殿は、あと何日くらい滞在できるのだ?」

「そうですね。湖の調査をして一度帰ろうと思っていたので、明日にはエルフの国を去ろうと思っていました。何かありましたか?」

アレクは、そろそろ魔ノ国に帰りたいと考えている。家族のこともそうだが、一昨日前から何が原因かわからないが、胸騒ぎがしていた。

「そうか。今何かあるわけではないのだが、アレク殿と世界樹に行った時に、一瞬であったが、世界樹が揺れたのだ。昔からの言い伝えなのだが、世界樹が揺れる時、何か厄災が降りかかると言われておる。そのことが気になってな......」

アレクの胸騒ぎは、気のせいではなかったようだ。しかし、何が起こるかまでは、予言者ではないのでわからない。

「そうでしたか......俺も、胸騒ぎが収まりませんでした。王様の言葉で、確信が持てましたので、色々な出来事に備えようと思います」

「本来ならば、全エルフで助力したいところではあるが、かえって邪魔になるであろう。無力で申し訳ない」

アレク達の戦いを見て、足手まといなのは明白であるため、何も出来ない自分達を情けなく思ってしまう。

「お言葉だけで十分です。それに、何か厄災が起こるという事実がわかっただけで十分過ぎるくらいです。では、とりあえずあれを直しましょうか」

「そう言ってくれるとありがたい。そうであるな。このままでは、冬が来た時に、病にかかってしまいそうだ」

暗い話ばかりしていては駄目だと感じたアレクは、天井に穴がいた箇所を指差し笑いながら言う。それに対して、王も笑いながら冗談を混じえて答えてくれたのだった。
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