上 下
612 / 694
第3章 アレクを狙って

第684話 心優しき父親ライザーからの依頼!

しおりを挟む
アレク達は、足早に世界樹の入り口から去って城に向かう。
そして、オレールが先行しているのだが、一切止まる様子もなく、あっという間に城へ着いてしまう。

「なんという早さだ!余の常識を超えておる」

王は、あまりのスピードに、背負ってもらっていたはずなのだが、何故か疲れた表情をしている。

「敵かもしれない者がいる可能性がありましたからね。また、毒魔虫のような面倒くさい攻撃をされる前に阻止したいですから。でも、慌しい様子もないですし、大丈夫そうですね」

ライザーがエルフ達の指揮を取っているお陰で、今まで通り城の門には兵が立っており、日常と変わらない様子である。

「あの森や城内と周囲にも怪しい気配はありませんよ。どこかに身を潜めているか、街に溶け込んでいる可能性が高いと思われます」

オレールは、敵の気配を探知して探ったが、新しい反応は見当たらないという。

「ありがとう。じゃあ、一旦ヤンさんとジアを寝室に運んで、俺達は敵が潜んでないか探しに行こうか。パスクは、このまま城に残って王様達を守ってくれるかな?」

「はい!畏まりました。アレク様、くれぐれもお気をつけくださいませ」

ヤンとジアを、寝室に運んで寝かせたところに、城にいた誰かが知らせに行ったのか、ライザーが凄い勢いで、寝室に突撃してきた。

「ジアァァァァ」

ライザーは、血相を変えて、アレク達には見向きもせず、大声を上げてジアの下に向かう。

「ライザーよ、みっともない。そこにおるオレール殿が、手当てをしてくれたのでな。今は、寝ているだけだ。静かにせい」

王は、子供が倒れて辛い気持ちはわかるのだが、エルフの国の守護者として、ライザーには、取り乱してほしくないのだ。

「王、それにアレク殿まで......申し訳ございません。娘が倒れたと聞いて、周りが見えておりませんでした」

ライザーは、大きな体に似合わず、顔を少し赤く染めて恥ずかしいといった表情を浮かべる。

「ライザーさん、ジアとヤンさんは、高濃度の魔力を浴びてしまい、体内に異物な魔力が残った状態でした。オレールが処置をしたのですが、治す際に二人が体力を使い果たして倒れたといった感じです」

オレールが、無理矢理に魔力を流して異物となる魔力を排出させたといった不安になることは言わずに、何があったのかをライザーに話す。

「オレール殿、娘を助けて頂き感謝します。いったい、私の娘をこのようにしたのは、どこのどいつなのですか?今すぐにも、殺してやりたい」

ライザーは、顔を真っ赤にして、怒りをあらわにする。守護者という地位につくだけあって、強さを兼ね備えており、普通のエルフでは考えられない魔力と威圧を全身から出すのだ。

「ライザーさん、落ち着いてください!体からダダ漏れです。それと、敵は不明です。これから探しに行く予定でいます。ライザーさんは、ここにいてジアさんを守っていてください」

アレクは、ライザーが行ったところで、ジア達の二の舞いになると思っているのだが、流石にストレートに言うわけにもいかず、濁しながら伝える。

「待ってください!娘をこんな姿にしたやつをこの手で殺して......」

やはり諦めきれないようで、ライザーは部屋を出て行こうとする。しかし、王が止めに入る。

「うむ!ライザーの気持ちは痛いほどわかるが、アレク殿はライザーの名誉を守りながら、ここにいるように言ったのだ。みなまで言わせるつもりであるか?ライザーならば、アレク殿が連れていかん答えがわかるであろう?」

王は、アレクが優しさで、ライザーのプライドを傷付けないように言ってくれたことを伝える。

「くっ!王よ、私も重々わかっています。しかし、娘をあのようにされては......あぁ~、ク、クソ!俺はなんて情けなく無力なんだ」

ライザーは、壁を殴って自分の無力さに悲しくなる。そして、大きく息を吸ってため息を吐く。

「取り乱してしまい、申し訳ございません。わがままばかり言ってしまって......アレク殿、またしても力をお借りすることになるが、どうか娘の敵を討って頂けないでしょうか?」

ライザーは、両膝を突いたかと思えば、額をこれでもかと地面に擦り付けて泣きながらアレクに敵を討ってくれとお願いをする。

「わかりました。必ず、捕まえてみせますので、ライザーさんはジアの側にいてあげてください。王様には、パスクが護衛に付きますので」

それを聞いたライザーは、「ありがとう」と心の底から絞り出したような声でお礼を言う。
そして、アレクとオレールとナハスとレッドドラゴンは、敵の探索に向かうのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]病弱を言い訳に使う妹

みちこ
恋愛
病弱を言い訳にしてワガママ放題な妹にもう我慢出来ません 今日こそはざまぁしてみせます

とじこめラビリンス

トキワオレンジ
児童書・童話
【東宝×アルファポリス第10回絵本・児童書大賞 優秀賞受賞】 太郎、麻衣子、章純、希未の仲良し4人組。 いつものように公園で遊んでいたら、飼い犬のロロが逃げてしまった。 ロロが迷い込んだのは、使われなくなった古い美術館の建物。ロロを追って、半開きの搬入口から侵入したら、シャッターが締まり閉じ込められてしまった。 ここから外に出るためには、ゲームをクリアしなければならない――

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されたやり直し令嬢は立派な魔女を目指します!

古森きり
ファンタジー
幼くして隣国に嫁いだ侯爵令嬢、ディーヴィア・ルージェー。 24時間片時も一人きりにならない隣国の王家文化に疲れ果て、その挙句に「王家の財産を私情で使い果たした」と濡れ衣を賭けられ処刑されてしまった。 しかし処刑の直後、ディーヴィアにやり直す機会を与えるという魔女の声。 目を開けると隣国に嫁ぐ五年前――7歳の頃の姿に若返っていた。 あんな生活二度と嫌! 私は立派な魔女になります! カクヨム、小説家になろう、アルファポリス、ベリカフェに掲載しています。

〖完結〗二度目は決してあなたとは結婚しません。

藍川みいな
恋愛
15歳の時に結婚を申し込まれ、サミュエルと結婚したロディア。 ある日、サミュエルが見ず知らずの女とキスをしているところを見てしまう。 愛していた夫の口から、妻など愛してはいないと言われ、ロディアは離婚を決意する。 だが、夫はロディアを愛しているから離婚はしないとロディアに泣きつく。 その光景を見ていた愛人は、ロディアを殺してしまう...。 目を覚ましたロディアは、15歳の時に戻っていた。 毎日0時更新 全12話です。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと
恋愛
21.05.23完結 ーー 「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」 差し伸べられた手をするりとかわす。 これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。 決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。 彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。 だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。 地位も名誉も権力も。 武力も知力も財力も。 全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。 月並みに好きな自分が、ただただみっともない。 けれど、それでも。 一緒にいられるならば。 婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。 それだけで良かった。 少なくとも、その時は。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。