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第3章 アレクを狙って

第680話 神力のさらなる可能性!

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「まずは、おやっさん特製の剣で試してみようかな」

アレクは、そう言い残して鞘から剣を抜き、金色の実の枝を的確に斬りつける。

「え?嘘!?」

アレクが、何故驚いたかというと、枝には一切の傷がついておらず、逆におやっさん特製の剣が刃こぼれしてしまったからだ。

「オリハルコン製の剣が、一撃で......アレク様、この剣はもう使い物になりませんね。よく見ないとわかりませんが、細かい傷がチラホラあります。軽く地面に叩きつけてみてください」

アレクは、言われた通りに、コツンと軽く地面に剣を当てると、ビキビキと音がしたあと、バラバラと粉々になってしまった。

「あ!本当だ!パスクの言う通りだったよ。でも、神力も魔法に近いのかもね。今まで爆発的に上昇させるしか考えなかったけど、神力を操作できれば、あれだけの力を発揮することが可能ってことだもんね」

世界樹を見ていると、全体的に均等に神力が流れている。しかし、枝の根元や弱い部分には、全体に流れる以上の神力が流れていたのだ。
それを見たアレクは、魔力のようにコントロールが可能なのではないかと思いついた。

「ほぉ~、確かにそうですね。アレクくんの考えは正解かもしれませんね。今すぐに、出来そうですか?」

オレールは、顎に手をやって、アレクの理論を自分なりに紐解きながら、アレクはもう出来るのかを聞く。

「無理だよ。修行しないと厳しいと思う。それに、今の俺だと綺麗に切るのは無理だと思う。全開にして、手刀で切ったら世界樹がなくなるか、ボロボロにしてしまいそうだよ」

魔力を込めた剣であっても切るのは難しいと感じた。そのため、神力を剣に纏わすことが前提で、更に寸分の狂いもなく、実の枝だけを切る神力を纏わすコントロールを身につける必要があると感じた。

「では、一旦諦めましょう。今回は、この空間と世界樹の神秘を見られただけで十分だと思います」

オレールは、笑顔で話す。内心は、アレクが気付いた神力操作の研究を早くやりたいと思っている。

「そうだね。じゃあ、帰ろうか。王様、頂く予定の世界樹の種は、ここに落ちてたりするのですか?」

「いや、種は1000年に一度、世界樹から取れるだけである。それも、一つだけだ。あそこに、木で出来た箱があるであろう。あの中に入っておる」

周りが神秘的過ぎて気付かなかったのだが、世界樹の横に前世でいう目安箱のようなものが置かれていた。
王は、その箱に近付いて、両扉の取っ手を指で摘んで開ける。

「お待たせした。これである。アレク殿なら大丈夫だとは思うが、決して盗まれないよう頼んだぞ」

渡された種は、ヒマワリの種くらいの大きさで、金色に光っているとか、そんなことはなく至って普通の植物の種だった。

「ありがとうございます。盗まれないように保管しますね。えっと、育て方とかは、普通の植物と同じですか?」

「わからんのだ。歴代の王も余も一度試してはみたのだが、芽すら出ん。力になれず申し訳ない」

アレクは、貴重な種であることはわかるのだが、育て方もわからない種をもらったところで、宝の持ち腐れなのと、いらない物を渡されただけではないのかと考えてしまう。

「そ、そうですか。とりあえずは、色々調べてみて、無理そうなら創造神様に聞いてみようかな」

もし、行き詰まったら最終奥義である創造神を召喚すればいいと考える。王以外の全員が、アレクらしいというか、アレクにしかできないパワープレイだなと思うのだ。

「何度聞いても驚かされる。もし、精霊神様に会う機会があれば、感謝していたと伝えてくれんか?」

王は、今回の一件で、エルフの国を救ってくれた精霊神に感謝を伝えたかった。しかし、その術がないので、アレクに託す。

「はい!会えたら伝えておきます。そろそろ、みんなも待ってると思いますし、戻りましょうか?」

意外にも長居してしまったので、四人を待たせているのが悪いなと思ったアレクは、足早に四人が待つところに帰るのだった。
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