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第3章 アレクを狙って

第662話 人間の村に住むエルフとの出会い!

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エルフの国でやるべきことが決まったアレク達は、何の迷いもなく歩みを進める。

「あそこの防御結界を抜ければエルフの国。もうすぐ」

「ハァハァハァ止まれ!動いたら撃つ」

ジアが、目的地に近付いていることを伝えようとした時、後ろから止まるように言われる。
アレク達の後ろにいたのは、腹から血を滲ませながら、弓を射る仕草をするエルフであったが、手には弓も矢も持っていないのだ。

「どうやってここまできた?外には化け物がいたはず!」

「大人しくしてください。あなたこそ動いたらどうなるかわかりますよね?それより、傷の治療をしてから、お互いに話し合いませんか?」

ジア以外は、エルフが隠れていることを知っており、オレールは気付かないうちに単独行動を取ってエルフの背後に回っていた。

「幼いながらも精霊が見逃すとは......外にいた化け物を倒してここにきたようですね。合点がいきました。ですが、この奥.......ぐふぉゲホゲホ」

エルフは、腹を押さえながら片膝を突いて咳き込む。
ちなみに、このエルフの精霊がアレク達の力を見定められなかったのは、代替わりした幼い精霊であったためである。

「早くこのポーションを飲んでください」

オレールは、自身が持っていたエクストラポーションを渡す。

「ゲホゲホ、人間が作ったポーションで治る......いや申し訳ない。ありがたく飲ませてもらいます......はっ!?えっ!?」

自分が作ったポーションですら治らなかった傷が、人間が作ったポーションで治るはずがないと言いかけたが、好意で渡してくれたものを無下にしてはいけないと、謝ってから飲むのだ。

「傷痕も残っていないなんて......これはあなたがお作りになられたのですか?」

人前で裸になるなど美しさに反するとして絶対に脱がないはずのエルフが、上半身裸になって傷口を確かめる。そして、敬語など使うはずもないのに、先程からオレールに対して終始敬語なのだ。

「いえ、私ではございません。あちらにいる私達の主であるアレク様がお作りになられました」

普段であれば、と呼ぶはずであるが、エルフに対しては正しい上下関係を把握してもらわないとアレクが舐められてしまうと感じてを付けたのだ。

「助けて頂いたにも関わらず、挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。私は、共和国の外れにある人間の村で暮らしているヤンと申します。この度は、助けて頂きありがとうございます」

ヤンは、片膝を突いてアレクに挨拶をした。
そして、ヤンのエルフらしくない振る舞いは、人間の村で生活していたからのようだ。

「丁寧なご挨拶をありがとうございます。私は、ウズベル王国より辺境伯を拝命されております。タカハシ・フォン・アレクと申します。アレクとお呼びください」

アレクは、常識ある丁寧な挨拶に対して応えるべく、貴族らしく気品ある挨拶をする。

「辺境伯様でございましたか。先程の薬いや、それよりもここへ何をされに来たのでしょうか?」

ヤンは、薬のことを尋ねようとしたが、それよりもエルフを連れて人間が何故この場所にいるか聞く方が優先だと思ってアレク達の目的を尋ねる。

「エルフの国を救ってほしいとジアから依頼を受けてきました。それから、解決法が見つかったので安心してください。ヤンさんも精霊からの救援要請で駆け付けたのですよね?」

本当は、薬のことを尋ねたかったのだろうとすぐにわかったのだが、それを我慢してまで常識的な言動をするヤンをアレクは気に入り始めていた。

「そうでしたか......って今なんと!?解決法とおっしゃいましたか?」

「はい!では、少し休憩も兼ねつつ何が起こっているか話しましょうか」

毒魔虫は、すぐに脳細胞を破壊してエルフを死に至らしめるようなものでないとわかったので、アレクはヤンに一から説明することにしたのだった。
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