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第3章 アレクを狙って
第658話 獣神と精霊神の秘密!
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獣神は、雲の上にある神殿を目指して階段を登っていた。階段には手すりなどはなく、もし踏み外そうものなら真っ逆さまに落ちてしまうだろう。しかし、拓けているからゆえの神秘的な景色がそこにはあった。
「おもしろいものを見せてもらったぞ。マンティコアよ。あの者の成長を楽しみにしなくてはな」
神殿まであと少しという辺りで、獣神が小さな声で呟きながら階段を登る。
「覗かせてもらったけど、いい魔物を見つけたようね」
階段を登り切ったところに、背中には大きな羽が一枚あり、キラキラと体の周りが輝いた綺麗な女性が立っていた。
「覗いておったのはお主であったか!そうであるな。しかし、まだ人型を保つには苦労するであろうが、いずれ使い分けることができよう。それよりも、お主が何故ここにいる?」
獣神の話からすると、マンテ爺は元の姿と人型の変化には時間がかかるらしい。
「獣神が、認めた者なら大丈夫でしょう。気長に待てばいいわ。それと、ここにきた理由は、獣神に預けた精霊石を受け取りにきたの」
「精霊石ならば、神殿に保管しておる。だが、頼まれていた神力はまだ貯まっておらんぞ。いいのか?もしかしてだが、羽が回復する手段でも見つけたのか?」
何故だか不明ではあるが、獣神に神力を蓄えて貰おうと預けていたようだ。
「薬学神でもだめだったのだから、今のところ生やす手段はないわ。でも、地上のどこかにいる薬学神と弟子である半神が力を合わせてくれたらわからないわね。それよりも、精霊石をお願い」
どうやら、羽を元に戻すために一度薬学神が薬を作ったようだが、生やすことはできず、諦めてしまったようである。
「そうか。精霊神に取って羽が神力の源であるからな。それに、羽が消失した原因もいまだ掴めんのだろう?精霊石ならこっちにあるついてくるのだ」
「起きたらなくなっていたからわからないの......それに薬学神の薬ですら治らなかったのだからどうしようもないわ。でも、薬学神いわく神クラスの存在が関係してるって話よ。普通に、ちぎれただけなら治せるって言ってたから」
この女性は、ジアが会いたくて仕方がない精霊神だった。だが、羽が一枚ないことで神力を生み出すことができず、治すこともできないので、半ば諦めてしまっているのだ。
そして、精霊神は獣神のあとをついて行き、神殿の中へと入る。
「俺の神力が他の神くらいあれば、すぐに貯めてやれるのだが......相変わらず、他の神に精霊石を預ける気にはなれんのか?」
「一番信用してる獣神以外には預ける気になれないわ。もし精霊石まで奪われたら私には何も残らないもの」
一応獣神は、神ではあるが、半神ほどの神力しかない。
「いまだに、羽を奪った相手は神の中にいると思っているのだな。まぁ、俺は神力に一切興味がない。力こそが全てであるからな」
精霊神は、神であるにも関わらず、一切神力に興味がなく己の力のみを極める獣神だからこそ信用している。
「疑いたくはないけど、可能性が一番高いわね。ごめんなさいね。見返りもなくお願いしてしまって。でも、獣神しか信用できないの」
「気にするでない。こうなる前からお主だけは我を神として認めてくれておった。その心に嘘偽りがない以上助けるのは当たり前である」
神は皆平等とはいえ、神力が半神くらいしかない獣神は精霊神を除く神から下に見られていた。しかし、羽を失う前から精霊神だけは、獣神のことを気にかけており、力になりたいと自然に思うようになったのだ。
「神力で優劣を決めるのはおかしいわ。創造神様も、そうおっしゃっていたじゃない。それより、いつになるかわからないけど羽が復活したら、一緒になりましょう。獣神を一番の男にしてあげるわ」
精霊神は、密かに獣神のことを気にするようになり、今では好きになってしまい、一緒に暮らしたいと考えるようになっていた。
「お、おい!からかうでない。それより、精霊石だ。使う用があるのであろう。早く帰るといい」
獣神は、顔を真っ赤にして恥ずかしがりながら精霊神に精霊石を渡して、走って神殿の出口に向かう。
「もぅ、わかり易すぎよ。でも、そういうあなたが好きだわ。いつか絶対に羽を取り戻して、あなたに本当の神力を与えるわね」
精霊神も、頬を少し赤く染めて恥ずかしがりながらも、獣神のために決意を固めるのであった。
「おもしろいものを見せてもらったぞ。マンティコアよ。あの者の成長を楽しみにしなくてはな」
神殿まであと少しという辺りで、獣神が小さな声で呟きながら階段を登る。
「覗かせてもらったけど、いい魔物を見つけたようね」
階段を登り切ったところに、背中には大きな羽が一枚あり、キラキラと体の周りが輝いた綺麗な女性が立っていた。
「覗いておったのはお主であったか!そうであるな。しかし、まだ人型を保つには苦労するであろうが、いずれ使い分けることができよう。それよりも、お主が何故ここにいる?」
獣神の話からすると、マンテ爺は元の姿と人型の変化には時間がかかるらしい。
「獣神が、認めた者なら大丈夫でしょう。気長に待てばいいわ。それと、ここにきた理由は、獣神に預けた精霊石を受け取りにきたの」
「精霊石ならば、神殿に保管しておる。だが、頼まれていた神力はまだ貯まっておらんぞ。いいのか?もしかしてだが、羽が回復する手段でも見つけたのか?」
何故だか不明ではあるが、獣神に神力を蓄えて貰おうと預けていたようだ。
「薬学神でもだめだったのだから、今のところ生やす手段はないわ。でも、地上のどこかにいる薬学神と弟子である半神が力を合わせてくれたらわからないわね。それよりも、精霊石をお願い」
どうやら、羽を元に戻すために一度薬学神が薬を作ったようだが、生やすことはできず、諦めてしまったようである。
「そうか。精霊神に取って羽が神力の源であるからな。それに、羽が消失した原因もいまだ掴めんのだろう?精霊石ならこっちにあるついてくるのだ」
「起きたらなくなっていたからわからないの......それに薬学神の薬ですら治らなかったのだからどうしようもないわ。でも、薬学神いわく神クラスの存在が関係してるって話よ。普通に、ちぎれただけなら治せるって言ってたから」
この女性は、ジアが会いたくて仕方がない精霊神だった。だが、羽が一枚ないことで神力を生み出すことができず、治すこともできないので、半ば諦めてしまっているのだ。
そして、精霊神は獣神のあとをついて行き、神殿の中へと入る。
「俺の神力が他の神くらいあれば、すぐに貯めてやれるのだが......相変わらず、他の神に精霊石を預ける気にはなれんのか?」
「一番信用してる獣神以外には預ける気になれないわ。もし精霊石まで奪われたら私には何も残らないもの」
一応獣神は、神ではあるが、半神ほどの神力しかない。
「いまだに、羽を奪った相手は神の中にいると思っているのだな。まぁ、俺は神力に一切興味がない。力こそが全てであるからな」
精霊神は、神であるにも関わらず、一切神力に興味がなく己の力のみを極める獣神だからこそ信用している。
「疑いたくはないけど、可能性が一番高いわね。ごめんなさいね。見返りもなくお願いしてしまって。でも、獣神しか信用できないの」
「気にするでない。こうなる前からお主だけは我を神として認めてくれておった。その心に嘘偽りがない以上助けるのは当たり前である」
神は皆平等とはいえ、神力が半神くらいしかない獣神は精霊神を除く神から下に見られていた。しかし、羽を失う前から精霊神だけは、獣神のことを気にかけており、力になりたいと自然に思うようになったのだ。
「神力で優劣を決めるのはおかしいわ。創造神様も、そうおっしゃっていたじゃない。それより、いつになるかわからないけど羽が復活したら、一緒になりましょう。獣神を一番の男にしてあげるわ」
精霊神は、密かに獣神のことを気にするようになり、今では好きになってしまい、一緒に暮らしたいと考えるようになっていた。
「お、おい!からかうでない。それより、精霊石だ。使う用があるのであろう。早く帰るといい」
獣神は、顔を真っ赤にして恥ずかしがりながら精霊神に精霊石を渡して、走って神殿の出口に向かう。
「もぅ、わかり易すぎよ。でも、そういうあなたが好きだわ。いつか絶対に羽を取り戻して、あなたに本当の神力を与えるわね」
精霊神も、頬を少し赤く染めて恥ずかしがりながらも、獣神のために決意を固めるのであった。
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