上 下
546 / 795
第3章 アレクを狙って

第657話 マンテ爺の進化と真価と神化!

しおりを挟む
マンテ爺は、暗闇の中一人で寝そべり現実から目を背けようとしていた。

「ワシは、誰かに閉じ込められておるのは理解したのじゃが、本心をさらけ出せじゃと......」

寝そべりながらマンテ爺は、誰かもからない存在に図星を突かれて命令されていることに苛立ちを覚える。

「ワシが、何をしたというんじゃ!早くここから出すんじゃ!」

マンテ爺は、抵抗するように大声で叫ぶが、声の主からの返答は一切ない。
それから暫くマンテ爺は、その場から動こうとはしなったが、ゆっくりと立ち上がってグルグルと回ったあとピタリと止まって天を見上げる。

「ワシは、ワシは......アレクの隣で一緒に戦える従魔になりたいんじゃ!このままだとアレクに合わせる顔がないんじゃ......強くなりたいわい。それに、一緒に飯も食いたいんじゃ」

プライドの高いマンテ爺が、本心をさらけ出して思いの丈を叫ぶのだ。
すると、目の前に赤い髪と赤い髭を蓄えたイカツイ顔をした男が姿を現す。

「やっと自分の奥底に眠るまことを語ったな。我は、獣神である。昔お主と似た経験をした者だ。お主は、本当に主と寝食を共にし、主を守れる強い従魔になりたいのだな?」

マンテ爺の前に現れたのは、獣神であった。そして、再度確認するようにマンテ爺へと本心を尋ねてくるのだ。

「獣神様じゃったのか!?不敬なことを申して申し訳なかったわい。さっき語ったことは本音じゃ!強くなれるならなんでもするわい」

マンテ爺は、獣神に驚くと同時に、変なプライドなどは投げ捨てて、全てをさらけ出したのだ。

「気にしておらん。魔物は、プライドを持ち弱みを見せず、強い者に惹かれるのが一般的である。しかし、時にはプライドを捨て全てをさらけ出すことも大事なのだ。マンティコアよ、少し晴れた気持ちになったのではないか?」

獣神は、魔物の本質を語りながら、今回本心を述べたマンテ爺を褒める。

「そうじゃな。不思議な感じじゃがな。それに、昔からば思わなかった感情を抱くようになったのは確かじゃし、それをさらけ出すなどなかったじゃろう。少し清々しい気持ちじゃ......なんじゃ!?これは」

マンテ爺が、清々しいと言ってニヤリと笑った直後マンテ爺の心臓が早まり熱くなるのを感じて驚きをあらわにした瞬間、ピカッとマンテ爺の体が光り輝いたのだ。

「自分自身を認め、弱さを認め、魔物にはあるはずのない人に近い願望をさらけ出すことで新たな種へと進化する。マンティコアよ、あとはお主の努力次第である。次に会える日を楽しみにしておるぞ」

獣神は、マンテ爺に新たな門出を祝うように助言し終えると、その場から姿を消した。
そして、マンテ爺も光り輝きながら暗闇の中からいなくなるのだった。





マンテ爺専用の寝床として作られた大きな平屋に裸で眠る白髪の程よく引き締まった筋肉が目立つダンディーな男がいた。

「なんじゃ、夢か。恥ずかしい夢じゃ......ん?ん?なんじゃこりゃぁぁぁぁ」

マンテ爺は、いつものように体を起こすも目線の高さが全く違った。おかしいと感じたマンテ爺は、目線を自分の体にやると、そこには人と同じ手足があったのだ。

「どういうことじゃ......あれは夢じゃなかったということか!?朧げではあるが、獣神様が最後に新たな種へと進化とか言っておったわい。まさか、人に進化したということか?」

少しずつ現状を理解し始めたマンテ爺は、考察をしていくが、まだまだ謎に包まれた部分は多く、確信は持てないでいる。

「とりあえず、どれほど強くなったか確かめる必要があるのぅ。ノックスなら喜んで相手になってくれるじゃろう」

マンテ爺は、素っ裸のまま家を出て、ノックス達がいるだろう闘技場に向かうのだった。
しおりを挟む
感想 2,172

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。

ゆとりある生活を異世界で

コロ
ファンタジー
とある世界の皇国 公爵家の長男坊は 少しばかりの異能を持っていて、それを不思議に思いながらも健やかに成長していた… それなりに頑張って生きていた俺は48歳 なかなか楽しい人生だと満喫していたら 交通事故でアッサリ逝ってもた…orz そんな俺を何気に興味を持って見ていた神様の一柱が 『楽しませてくれた礼をあげるよ』 とボーナスとして異世界でもう一つの人生を歩ませてくれる事に… それもチートまでくれて♪ ありがたやありがたや チート?強力なのがあります→使うとは言ってない   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 身体の状態(主に目)と相談しながら書くので遅筆になると思います 宜しくお付き合い下さい

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。