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第3章 アレクを狙って

第656話 エルフの性格とマンテ爺の真価が問われる!

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「ご主人様、そろそろエルフの国へ向かってもよろしいですか?」

レッドドラゴンは、戦ってもいないのに疲弊しているアレクを見て心配しているのと同時に、そこまでの相手がいる共和国から早く離れたいと考えている。

「ごめんね。エルフの国に向かってくれるかな?」

レッドドラゴンは、ご主人様に対して返事もそこそこにエルフの国に向けて飛び始める。それだけ、脅威だと感じてしまったのだ。

「アレク様、気付くことが出来ず申し訳ございません。あの者はいったい何者なのでしょう?」

「静かに!今もずっとこっちを見てるから、共和国を抜けたら話そう」

何故だがわからないが、見られていることはアレクにしかわからない。
しかも、第六感で絶対に逆らうような素振りをしてはいけないとアレクの中の何かが訴えかけてくるのだ。

「わかりました。無意味かもしれませんが、警戒をしておきます」

パスクは、周りを見渡しながら警戒を強めて、オレールとナハスは防御結界を張ったまま警戒をするのだった。





「ふぅ~、もう大丈夫みたいだよ。オレールの言ってたことは本当だったみたいだね。神様に匹敵する力を持ってる感じだったし、何か違った力も感じたからね」

アレクは、大きく息を吐いて気持ちを落ち着かせる。そして、他のみんなも緊張の糸が切れたのか座り込むのだ。

「私も、背後を取られた際に感じたのですが、ラヴァーナ様のスキルで現れた門番に近い力でした。ですが、門番の比ではない力です」

オレールは、出会ってからずっと力の源が何なのかを探っていて、今回再度目の前に現れた際に、現魔王ラヴァーナが使うスキルの門番に近い力を感じたのだ。

「確かに、オレールの言う通りかもしれない!でも謎が深まるばかりだね。一度、創造神様に聞いてみるしかないかも」

「そ、創造神様に会える?ジアも会わせて?精霊神様に会いたいの」

アレクの一言でまたジアが暴走し始める。先程までのシリアスな展開が嘘のように慌ただしくなるのだ。

「オレールから話は聞いてたけど、今のジアさんを神様に会わせる気はないよ」

アレクは、バッサリとジアの会いたい思いをぶった切るのだ。

「なんで?会わせてよ!ずっと会いたかったの!こんな機会二度とないのお願い」

ジアは、アレクにすがりながら自分の思いをこれでもかとぶつける。

「今のジアさんには誰も会いたくないと思うよ。俺も、エルフの国の件がなければ今すぐにでも離れたいしね。自分の胸に手を当ててよく考えてみて。パスク、悪いけどジアさんを引き剥がしてくれないかな?」

アレクにしては珍しく引き離すような行動を示す。
エルフと人は違った考え方を持っているのは理解できるのだが、人の社会や人であるアレク達と行動を共にしている時は、相手を尊重したり敬う言動をしてほしいと考えるのだ。

「アレク様!畏まりました!ジア様、こちらに来てください。そうですか......オレール様、申し訳ございませんが、檻に閉じ込めて頂けないでしょうか?」

ジアは、パスクの言う事を聞かずに離れないので、オレールに頼むことにした。
すると、オレールはすぐに土の檻を作ってジアを閉じ込めたのである。

「なんでこんなことするの?今すぐ出して」

ジアは、駄々をこねる子供のように檻の中で暴れて地団駄を踏む。

「オレール、悪いけど雑音も消してくれたら助かる。ちょっと、エルフの対策も考えたいしね」

「フフッ、お任せください」

アレクは、ジアの様子を見る限りエルフとの会話は一筋縄では行かないと思って、パスクとオレールを混じえて対策を練らなくてはと考えた。
そして、オレールはアレクに言われた通り、一切外に音が漏れないよう防音の魔法をかけるのだった。





「マンティコアよ、力がほしいか?」

マンテ爺は、珍しく眠りについていた。アレクの見送りの際も一歩引いて見ているだけで話しかけることもなく、ずっと様子がおかしかったのだ。

「マンティコアよ、聞こえているのであろう?ここは、お主と我を繋ぐ精神世界である。主人に対して負い目を抱いていることも知っておる。素直に解き放つのだ」

マンテ爺は、聞こえていながらも夢の中の雑音だと思い無視を決め込んでいた。
しかし、声の主は更に話かけてきて、マンテ爺の心を突き刺すような発言をしてくる。

「なんじゃ!ワシになんか用かのぅ?隠れてこそこそせんと、目の前にきてハッキリ言わんか!」

図星を突かれたマンテ爺は、焦った様子を隠しながら虚勢を張ったような強い口調で言い返す。

「お主の本心を口にするまで、このままだ!固く閉ざした胸の内をあらわにした時、さらなる成長が待っているであろう」

声の主は、その言葉だけを告げて気配を消す。マンテ爺は、暗闇の中、精神世界に閉じ込められるのであった。
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