上 下
582 / 694
第3章 アレクを狙って

第654話 エルフの国の秘密と毛生え薬広まる!

しおりを挟む
「ジアさん、エルフの国ってどんなとこなの?人間の国と変わらない感じかな?」

エルフの国の生活様式やエルフだけで成り立っている状態が気になったのである。

「う~ん?どうなのかな?15年前と同じだったら人間の国と変わらない。でも、新緑が綺麗」

ジアは、15年間エルフの国に帰っていないので、現在がどうなっているか確証は持てない。

「え!?15年?ジアさんて、ちなみに年齢はいくつなの?」

アレクから見ても、10代にしか見えないジアが大半を人の世界で暮らしているわけはないと思って実年齢が気になってしまったのだ。

「90歳」

「90歳なの!?全然見えない。やっぱり長命種って凄いな」

前世の知識でエルフが長命であることは予想していたのだが、目の前で真実を告げられると驚いてしまう。

「人は短命だもんね。でも、エルフの90歳はまだまだ子供。最長老様は、1300歳以上だったはず」

ジアの口からまたしても驚きの発言が出てくる。90歳で子供というのも驚きだが、まさかの最長老という人物が存在して、初代魔王のデュアル以上に生きているのだ。

「ジアさんの言ってること全部が驚きの連続だよ。特に1300歳......凄いね。それと、さっき新緑が綺麗って言ってたけど、基本は木々に覆われた場所なのかな?」

ログハウスやツリーハウスが森の中にあってエルフ達が生活をしているイメージをアレクは持っている。

「違う。人間の国と一緒で建物があって緑があって自然豊かな場所。でも、何重もの結界と精霊の幻影で隠してるの」

「結界に幻影......そうやって他種族の侵入を防いでいたんだね。ジアさん、色々教えてくれてありがとう」

ジアと話していくうちに、エルフの国がどうやって存続してきたのかやエルフの情報が少ない理由がわかってきたのだ。

「いいよ。でも、国のことをこんなに話したの初めて!アレク達しか知らない」

エルフの掟というか暗黙の決まりとして、他種族に情報を漏洩してはいけないと定めており、ジアがここまで話したのは奇跡的なことなのだ。

「秘密を話してくれてありがとうね。絶対に誰にも話さないって誓うから」

排他的なエルフが、他人を信用して秘密を打ち明けてくれたことを嬉しく思い、絶対に裏切ってはいけないなと思うのである。
ジアが、何故秘密を打ち明けたかというと、先日アレクから言われた言葉が胸に刺さって信頼を取り戻さないといけないなと感じたからだ。

「アレク様、おやっさんに頼んでいた魔道具については、商業ギルド経由で輸送をお願いしております」

「ありがとう。色々重なって手が回らなかったから助かるよ。あ!?毛生え薬の追加もお願いできたかな?」

毒や寄生虫を判別する魔道具のサンプルを届ける時間がなかったので、転移の魔道具がある商業ギルドに任せたのだ。

「はい!お預かりした毛生え薬は納品済みです。あと、商業ギルドよりご要望がございまして、倍いや3倍の量を卸してもらいたいそうです。どうやら噂を聞きつけた各国の富豪や貴族が密かに訪れており、供給が追いついていないとか」

毛生え薬の噂がどこから広まったのかは知らないが、薄毛に悩む人は後を絶たないようで、裏では薄毛ネットワークなるものが生まれて他国にまで広まっているようだ。

「え!?毎回3000本納品だよ。それを更に1億本近く納品ておかしすぎない?しかも、いつの間にか他国にまで......俺達、毛生え薬だけでやっていける気がするんだけど。隠居していいかな?」

アレクは、あり得ない本数に目が飛び出すほど驚き、それほどまでに需要があるなら面倒な仕事は全て断って毛生え薬ビジネスだけで生きていけばいいのではと考える。

「アレク様、お気持ちはわかりますが、隠居は世界が平和になってからお考えください。それに、毛生え薬だけを精製するアレク様を見たくありません」

ルシファーを倒せる可能性があるのはアレクだけであり、隠居されては困ると思うのと同時に、尊敬するアレクが毛生え薬だけ作っている姿をパスクは見たくないのだ。

「わかってるよ。それに、毛生え薬と同様に需要がある薬はもっとあるはずだから、暇になったらそういうのも考える予定だよ。だから、隠居しないし安心して」

アレク的にも、せっかく人々を救える力を手に入れたのだから、もっと人々が笑って幸せに暮らせるような物を生み出さなくてはと思うのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]病弱を言い訳に使う妹

みちこ
恋愛
病弱を言い訳にしてワガママ放題な妹にもう我慢出来ません 今日こそはざまぁしてみせます

とじこめラビリンス

トキワオレンジ
児童書・童話
【東宝×アルファポリス第10回絵本・児童書大賞 優秀賞受賞】 太郎、麻衣子、章純、希未の仲良し4人組。 いつものように公園で遊んでいたら、飼い犬のロロが逃げてしまった。 ロロが迷い込んだのは、使われなくなった古い美術館の建物。ロロを追って、半開きの搬入口から侵入したら、シャッターが締まり閉じ込められてしまった。 ここから外に出るためには、ゲームをクリアしなければならない――

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されたやり直し令嬢は立派な魔女を目指します!

古森きり
ファンタジー
幼くして隣国に嫁いだ侯爵令嬢、ディーヴィア・ルージェー。 24時間片時も一人きりにならない隣国の王家文化に疲れ果て、その挙句に「王家の財産を私情で使い果たした」と濡れ衣を賭けられ処刑されてしまった。 しかし処刑の直後、ディーヴィアにやり直す機会を与えるという魔女の声。 目を開けると隣国に嫁ぐ五年前――7歳の頃の姿に若返っていた。 あんな生活二度と嫌! 私は立派な魔女になります! カクヨム、小説家になろう、アルファポリス、ベリカフェに掲載しています。

〖完結〗二度目は決してあなたとは結婚しません。

藍川みいな
恋愛
15歳の時に結婚を申し込まれ、サミュエルと結婚したロディア。 ある日、サミュエルが見ず知らずの女とキスをしているところを見てしまう。 愛していた夫の口から、妻など愛してはいないと言われ、ロディアは離婚を決意する。 だが、夫はロディアを愛しているから離婚はしないとロディアに泣きつく。 その光景を見ていた愛人は、ロディアを殺してしまう...。 目を覚ましたロディアは、15歳の時に戻っていた。 毎日0時更新 全12話です。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと
恋愛
21.05.23完結 ーー 「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」 差し伸べられた手をするりとかわす。 これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。 決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。 彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。 だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。 地位も名誉も権力も。 武力も知力も財力も。 全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。 月並みに好きな自分が、ただただみっともない。 けれど、それでも。 一緒にいられるならば。 婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。 それだけで良かった。 少なくとも、その時は。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。