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第3章 アレクを狙って

第641話 新たな事業で街を活性化させよう!

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漁師達は、それぞれ切ったクラーケンの刺し身を前にして、生唾をゴクリと飲む。
おいしいと思ってもみなかった物が、アレク達の表情や声色から、絶品なんだとわかり、自然とクラーケンの刺し身の綺麗な姿に、目を奪われてしまうのだ。

「早速頂かせてもらうとしよう」

ガンダは、少し畏まった口調で、醤油につけた刺し身を口に運んで一噛みする。
その瞬間、目をこれでもかと見開くのだ。

「う、うめぇ!漁師として今まで知らなかったのが悔しい......アレク様の言う通り、さっぱりしながらも濃厚な旨みと甘さが脳を突き抜けていくうまさ!こりゃ、止まんねぇな」

ガンダは、思っていた以上のおいしさに、素直に感動しながらも、海のプロフェッショナルとして知らなかったことに悔しがる。
そして、ガンダ以外の漁師達も、あまりのおいしさに手が止まらなくなり、あっという間にクラーケンの刺し身は、みんなの目の前から消えてしまうのだ。

「ほら!言った通りおいしいでしょ?」

「おう!こりゃ、たまげたわ!俺達が、気付きもしねぇ食べ方を思いつくとはよ。アレク様流石だぜ。ガハハハ」

ガンダは、参った参ったというような素振りをしながら大笑いする。

「あ!でも、生で食べたら駄目な魚と貝があるから気をつけてくださいね。それから、寄生虫......う~ん?小さな虫がついてる可能性があるから知識をつける必要があるかも」

アレクは、毒や寄生虫の存在をほのめかさないと、大量の死者を生み出しかねないと思って伝える。

「そりゃ、厄介だな!毒のあるやつはわかるが、虫ってなるとな......どうにかならねぇか?刺し身が、普及できたら更に活性化されると思うんだ」

ガンダは、慣れ親しんだ食べ方も大切だが、新たな食文化を生み出すことは、この街にとって大きなことになると考えて、是非とも普及したいと考えるのだ。

「う~ん!?魔道具か?魔法か?専門家か?どれもすぐには難しいかな......ちょっと待ってくださいね!おやっさん、聞こえますか?」

アレクは、通信の魔道具を使っておやっさんに連絡を取る。

「おう!坊主か!通信なんて珍しいのぅ。どうしたんじゃ?」

「おやっさん、試作でいいから不純物......毒とか小さな害のある虫を検知する魔道具を作れないですか?できれば、安く作れたら嬉しいのですが」

おやっさんとは、すぐに連絡が取れて、アレクは単刀直入に話をする。

「何に使うかわからんが、1日もあればできるじゃろう。出来上がり次第、電話すればよいかのぅ?」

おやっさんは、普通であれば数日や数週間はかかる魔道具の作成を、1日で作り上げると豪語するのだ。

「はい!お願いします。連絡待ってますね」

「任せい!それと坊主、早く帰ってくるんじゃぞ!十戒のやつらが、ノックスのシゴキに音を上げておるわい」

一から鍛え直すのと、今まで当たり前だと思っていた考え方を矯正するために、魔物の街に引き取った。
だが、ノックスの鬼教官振りに十戒は限界を迎えているようである。

「アハハハ、わかりました。家族とのバカンスが終わりましたら、ヘルミーナと大樹とナハスを連れて帰りますね」

「待っておるからのぅ」

そう言って、おやっさんとアレクの通信での会話が終わる。

「一応、皆さんにも聞こえるようにしていたのでわかると思いますが、出来上がり次第お持ちしますので、どうしていくか話し合いましょう」

「おぉ、助かるぞ!多くは払えねぇが、新しもの好きの店主に知り合いがいるからよ。協力を仰いでおくぜ」

ガンダの中でも、すでにある程度の構想が練り上がっているようで、知り合いを巻き込んでの一大イベントにするようだ。

「帰ったら父上にお伝えしときますね。じゃあ、他のクラーケンを使った料理を作っていきましょう」

アレクだけで、最後まで話をして決定することもできるのだが、一応ここの領主はヨゼフであるため、父親であったとして筋を通す必要がある。
以前のアレクであれば、勝手に決めていただろうが、貴族のことを勉強して少しは成長したのであった。
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