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第3章 アレクを狙って

第640話 クラーケンの刺し身は、絶品でした!

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アレクは、ガンダが来るのを待っていると、暫くして10人の漁師がやってきた。

「アレク様、遅くなってわりぃな。クラーケンを捌けるやつらを連れてきたぜ!それと、さっきは気付かなかったが、そこの子供と遊んでるのは従魔か?」

イカの魔物にしては、かなり小さいことと、子供達と遊んでいることから従魔なのかと思ったのだ。

「わざわざありがとうございます。それから、このイカさんは従魔ではないですよ。ちょっと、縁があって仲良くなりました。無闇に、襲いはしませんので仲良くしてあげてください」

「私は、悪いイカではないですよ。是非仲良くしてください」

アレクが、軽く紹介すると、どこがで聞いたようなセリフを言いながら、イカは足を漁師に差し出して握手を求める。

「よろしくな!俺は、魔物だろうが人間だろうが、悪人じゃなけりゃ差別はしねぇ。仲良くやろうぜ」

ガンダは、イカと硬い握手を交わす。
他の漁師も、はじめは魔物ということで、警戒していたが、ノアとカレンと大樹を抱っこしている姿を見て警戒が薄れたのか、イカと笑顔で握手を交わしていた。

「よっしゃぁぁぁ!おめぇら、一世一代の大仕事だ!アレク様をガッカリさせんじゃねぇぞ」

ガンダが、マイ包丁を取り出して高らかと上げると、他の漁師達も「お~!」と拳や包丁を高らかに上げて呼応するのだ。

「みなさん、よろしくお願いします」

アレクが、頭を下げてお願いをする。
すると、漁師達はクラーケンを取り囲んで、ガンダが慣れたように指示を出して捌き始める。

「一切無駄なく解体されていくよ。凄いな」

「本当に凄いわね。真似しようと思ってもできないわ」

アレクとヘルミーナは、漁師達の無駄のない仕事を眺めながらプロの技に感嘆してしまう。
子供達も、イカに抱っこされながら、まじまじと解体ショーを眺めているのだ。

「アレク様、魔石がねぇんだが、もう回収済みか?あと、どんな感じで食うだ?焼くのか?」

ある程度、解体に目処がたったところで、アレクにどんな料理をするのかを尋ねてくる。

「魔石は回収済みだから大丈夫ですよ。う~ん、最初は刺し身......生で食べたいんだけど、こんな感じに切ってもらうことはできますか?」

アレクは、木の棒を掴んで、砂浜に切った時の図を描いていく。
それを見たガンダは、すぐに頷いて包丁を握るのだ。

「薄皮を剥がして、これくらいに切りゃアレク様の要望通りにならねぇか?にしても、生で食って平気なのか?」

アレクは、皮を剥がすことを伝えていなかったが、ガンダの長年の経験から自然と薄皮を剥がした。
そして、やはり大和ノ国以外では漁師でも魚などを生で食す文化はないようである。

「うわぁぁぁ!綺麗。完璧です!生で食べても平気ですよ。大和ノ国では、一般的な刺し身って料理で提供されていますから」

アレクは、魔法鞄から大和ノ国で仕入れた醤油を取り出して小皿に醤油を入れてる。

「本当に、生でいくのか?」

ガンダは、淡々と刺し身で食べる準備を進めるアレクを見て不安そうな顔をする。

「はい!食べますよ。この醤油につけて食べたら絶品なんですよ。みんな食べるからおいで!ガンダさん達も、一緒にいかがですか?」

「いや、俺達は一旦遠慮しておく......」

ガンダは、漁師全員と目を合わせると、他の漁師達も生に対して拒絶反応するように首を横に振る。
アレクは、「そうですか......」と残念そうな顔をしながら、刺し身を手に取り醤油をつけて口に運ぶ。ヘルミーナとナハスと子供達も、なんの躊躇もなく口へ運ぶのだ。

「.......う、うまぁぁぁぁぁい!何!?この甘さと濃厚な味と口溶けのよさは!?今まで食べたイカが偽物に感じるよ」

アレクは、一噛みした瞬間、天に登るのではないかといった顔をしてクラーケンの刺し身に心を奪われてしまう。

「ん!?おいしいぃぃ!こんなにおいしいなんて驚きだわ」

「わぁ!?ご主人様、美味し過ぎてほっぺが落ちそうです。甘々、もちもちで幸せです」

ヘルミーナとナハスも、クラーケンの刺し身が気に入ったようで、頬に手を当てながら堪能している。
子供達も、「おいしい」と言って次々に食べていくのだ。

「ママ~、僕もお腹空いたでしゅ」

「大樹、ごめんなさい。すぐにあげますからね。アレク、ちょっと離れるわね」

大樹は、赤ちゃんなので母乳しか飲むことが出来ず、みんながおいしそうに食べる姿を見てお腹を空かせたようだ。
ヘルミーナは、大樹を抱きかかえて、すぐに着替えた場所へ行って母乳をあげに行くのだ。

「アレク様、すまねぇ......俺達も食っていいか?」

「当たり前ですよ!醤油を用意しますから、一緒に食べましょう」

ガンダ達は、みんなのおいしく食べる姿を見て、どれほどまでにうまい物なのかと気になってしまい、我慢できなくなったようだ。

「よし!おめぇら、自分の食う分だけ切れ!アレク様のご厚意を無駄にするようなことはすんじゃねぇぞ」

漁師達は、「お~」と言って刺し身をどんどん作っていくのだ。
その頃、イカも子供達と一緒にクラーケンの刺し身をいっぱい食べているのであった。
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