上 下
529 / 730
第3章 アレクを狙って

第640話 クラーケンの刺し身は、絶品でした!

しおりを挟む
アレクは、ガンダが来るのを待っていると、暫くして10人の漁師がやってきた。

「アレク様、遅くなってわりぃな。クラーケンを捌けるやつらを連れてきたぜ!それと、さっきは気付かなかったが、そこの子供と遊んでるのは従魔か?」

イカの魔物にしては、かなり小さいことと、子供達と遊んでいることから従魔なのかと思ったのだ。

「わざわざありがとうございます。それから、このイカさんは従魔ではないですよ。ちょっと、縁があって仲良くなりました。無闇に、襲いはしませんので仲良くしてあげてください」

「私は、悪いイカではないですよ。是非仲良くしてください」

アレクが、軽く紹介すると、どこがで聞いたようなセリフを言いながら、イカは足を漁師に差し出して握手を求める。

「よろしくな!俺は、魔物だろうが人間だろうが、悪人じゃなけりゃ差別はしねぇ。仲良くやろうぜ」

ガンダは、イカと硬い握手を交わす。
他の漁師も、はじめは魔物ということで、警戒していたが、ノアとカレンと大樹を抱っこしている姿を見て警戒が薄れたのか、イカと笑顔で握手を交わしていた。

「よっしゃぁぁぁ!おめぇら、一世一代の大仕事だ!アレク様をガッカリさせんじゃねぇぞ」

ガンダが、マイ包丁を取り出して高らかと上げると、他の漁師達も「お~!」と拳や包丁を高らかに上げて呼応するのだ。

「みなさん、よろしくお願いします」

アレクが、頭を下げてお願いをする。
すると、漁師達はクラーケンを取り囲んで、ガンダが慣れたように指示を出して捌き始める。

「一切無駄なく解体されていくよ。凄いな」

「本当に凄いわね。真似しようと思ってもできないわ」

アレクとヘルミーナは、漁師達の無駄のない仕事を眺めながらプロの技に感嘆してしまう。
子供達も、イカに抱っこされながら、まじまじと解体ショーを眺めているのだ。

「アレク様、魔石がねぇんだが、もう回収済みか?あと、どんな感じで食うだ?焼くのか?」

ある程度、解体に目処がたったところで、アレクにどんな料理をするのかを尋ねてくる。

「魔石は回収済みだから大丈夫ですよ。う~ん、最初は刺し身......生で食べたいんだけど、こんな感じに切ってもらうことはできますか?」

アレクは、木の棒を掴んで、砂浜に切った時の図を描いていく。
それを見たガンダは、すぐに頷いて包丁を握るのだ。

「薄皮を剥がして、これくらいに切りゃアレク様の要望通りにならねぇか?にしても、生で食って平気なのか?」

アレクは、皮を剥がすことを伝えていなかったが、ガンダの長年の経験から自然と薄皮を剥がした。
そして、やはり大和ノ国以外では漁師でも魚などを生で食す文化はないようである。

「うわぁぁぁ!綺麗。完璧です!生で食べても平気ですよ。大和ノ国では、一般的な刺し身って料理で提供されていますから」

アレクは、魔法鞄から大和ノ国で仕入れた醤油を取り出して小皿に醤油を入れてる。

「本当に、生でいくのか?」

ガンダは、淡々と刺し身で食べる準備を進めるアレクを見て不安そうな顔をする。

「はい!食べますよ。この醤油につけて食べたら絶品なんですよ。みんな食べるからおいで!ガンダさん達も、一緒にいかがですか?」

「いや、俺達は一旦遠慮しておく......」

ガンダは、漁師全員と目を合わせると、他の漁師達も生に対して拒絶反応するように首を横に振る。
アレクは、「そうですか......」と残念そうな顔をしながら、刺し身を手に取り醤油をつけて口に運ぶ。ヘルミーナとナハスと子供達も、なんの躊躇もなく口へ運ぶのだ。

「.......う、うまぁぁぁぁぁい!何!?この甘さと濃厚な味と口溶けのよさは!?今まで食べたイカが偽物に感じるよ」

アレクは、一噛みした瞬間、天に登るのではないかといった顔をしてクラーケンの刺し身に心を奪われてしまう。

「ん!?おいしいぃぃ!こんなにおいしいなんて驚きだわ」

「わぁ!?ご主人様、美味し過ぎてほっぺが落ちそうです。甘々、もちもちで幸せです」

ヘルミーナとナハスも、クラーケンの刺し身が気に入ったようで、頬に手を当てながら堪能している。
子供達も、「おいしい」と言って次々に食べていくのだ。

「ママ~、僕もお腹空いたでしゅ」

「大樹、ごめんなさい。すぐにあげますからね。アレク、ちょっと離れるわね」

大樹は、赤ちゃんなので母乳しか飲むことが出来ず、みんながおいしそうに食べる姿を見てお腹を空かせたようだ。
ヘルミーナは、大樹を抱きかかえて、すぐに着替えた場所へ行って母乳をあげに行くのだ。

「アレク様、すまねぇ......俺達も食っていいか?」

「当たり前ですよ!醤油を用意しますから、一緒に食べましょう」

ガンダ達は、みんなのおいしく食べる姿を見て、どれほどまでにうまい物なのかと気になってしまい、我慢できなくなったようだ。

「よし!おめぇら、自分の食う分だけ切れ!アレク様のご厚意を無駄にするようなことはすんじゃねぇぞ」

漁師達は、「お~」と言って刺し身をどんどん作っていくのだ。
その頃、イカも子供達と一緒にクラーケンの刺し身をいっぱい食べているのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。