上 下
565 / 694
第3章 アレクを狙って

第637話 進化したイカさんとクラーケン祭り!

しおりを挟む
アレク達は、上空で警戒しながらイカの行く末を見守る。
そして、暫くすると水蒸気が晴れて行き、イカの全容があらわになり始めるのだ。

「ナハス、いつでも防御結界を張れるように警戒しといてくれ」

アレクは、もうすぐ晴れるであろう水蒸気を見つめながら、いつ襲われてもいいように警戒を強める。

「いつ攻撃されてもいいように準備はできています」

ナハスは、真剣な顔をして状況を見守る。
普通ならば、強い魔物が弱い魔物を食べることはあるが、逆は前代未聞であり、ナハスですらどうなるかわかっていないのだ。

「くるよ!」

アレクが、合図をすると水蒸気が晴れて、イカが姿を現す。
すると、元々はシロナガスクジラくらいのサイズだったのだが、イルカほどのサイズになっていたのだ。

「え!?かなり小さくなってない?ナハス、邪悪な感じはしないけど、どうだろう?」

「そうですね。私にも、邪悪なオーラを感じることはできません。多分、進化に成功したと思われます」

ルシファーや聖王国に現れた触手の魔物から発せられるようなオーラは感じられず、少なくとも悪い魔物ではないのだが、まだ本人であるイカは後ろを向いたままなので、どうなったのかわからない。

「イカさ~ん!無事進化できたのかな?」

アレクは、少し近付いて大声で声をかける。

「大変お待たせしました。アレク様のお陰で、無事に進化することができました。この溢れ出す力があればクラーケンにも負けることはないでしょう」

イカは、初めてアレクの名前を呼びながら、足を曲げて力こぶを見せる仕草をする。だが、当然イカなので筋肉はなく力こぶなどできないのだ。

「アハハ、イカさん、進化できてよかったね。前より小さくなったけど種族とかは何に進化したの?」

できるはずのない力こぶを頑張って作る仕草を可愛く感じて思わず笑ってしまう。

「わかりません。私と同じ姿をした者は見たことがありません。ですが、先程も言ったようにクラーケンより強い種族になったのは間違いありません」

イカは、どうやら新種のイカさんに進化したようである。

「天使である私も、見たことも聞いたこともない姿ですので、新種でしょう。多分ですが、力の差がある魔石を食したことによることかと思います。それに、鑑定にもエラーと表示されます」

「そうなのかぁ~。でも、これでイカさんが、クラーケンに襲われることもなくなるわけだしよかったよ。あ!お願いしてたクラーケンを運んでほしいんだけど大丈夫かな?」

イカが、どんな姿であろうと、無事に進化をしてクラーケンに対抗できる力を手に入れられたなら、それでいいと思うのだ。

「はい!すぐに運びますね」

イカは、器用にクラーケンに足を巻き付けて自分の何倍もあるクラーケンを易々と運び始める。
アレク達は、小さくなったイカに乗ることができないので、アレクとナハスがみんなを浜辺まで飛びながら運ぶのだ。

「イカさん、前よりもかなり早いね。もう浜辺に着いちゃうよ。イカさん、そろそろスピードを落としてくれないかな?俺達以外の人間がいたら怯えちゃうからさ」

「わかりました。ゆっくり行きますね」

イカさんは、言われる通りにスピードを緩める。そして、無事に浜辺に着いたのだが、人っ子一人おらずアレクの心配は杞憂に終わる。

「イカさん、浜辺に上げてもらえるかな?それと、クラーケンの料理をするから一緒に食べよう」

「私もいいのですか!?」

イカさんは、まさか魔物である自分がお呼ばれすると思っておらず驚いてしまう。

「イカさんは、もうれっきとした仲間だからね。一緒にクラーケン料理を楽しもう」

「うぅ~、なんて優しい人なんですか......」

イカさんは、目に大量の涙を浮かべて歓喜するのだ。

「泣かないでよ。大樹とノアとカレンはイカさんを慰めてあげてね。よし、調理器具とかを用意して、火起こしからスタートするぞ~」

子供達は、イカを抱き締めたり頭を撫でたりする。大樹は、相変わらずでプニプニした感触が気に入ったのか、指でツンツンしたりぺちぺち叩いたりする。
そして、アレクは調理器具を魔法鞄から取り出して、ヘルミーナとナハスに手伝いを頼むのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]病弱を言い訳に使う妹

みちこ
恋愛
病弱を言い訳にしてワガママ放題な妹にもう我慢出来ません 今日こそはざまぁしてみせます

とじこめラビリンス

トキワオレンジ
児童書・童話
【東宝×アルファポリス第10回絵本・児童書大賞 優秀賞受賞】 太郎、麻衣子、章純、希未の仲良し4人組。 いつものように公園で遊んでいたら、飼い犬のロロが逃げてしまった。 ロロが迷い込んだのは、使われなくなった古い美術館の建物。ロロを追って、半開きの搬入口から侵入したら、シャッターが締まり閉じ込められてしまった。 ここから外に出るためには、ゲームをクリアしなければならない――

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されたやり直し令嬢は立派な魔女を目指します!

古森きり
ファンタジー
幼くして隣国に嫁いだ侯爵令嬢、ディーヴィア・ルージェー。 24時間片時も一人きりにならない隣国の王家文化に疲れ果て、その挙句に「王家の財産を私情で使い果たした」と濡れ衣を賭けられ処刑されてしまった。 しかし処刑の直後、ディーヴィアにやり直す機会を与えるという魔女の声。 目を開けると隣国に嫁ぐ五年前――7歳の頃の姿に若返っていた。 あんな生活二度と嫌! 私は立派な魔女になります! カクヨム、小説家になろう、アルファポリス、ベリカフェに掲載しています。

〖完結〗二度目は決してあなたとは結婚しません。

藍川みいな
恋愛
15歳の時に結婚を申し込まれ、サミュエルと結婚したロディア。 ある日、サミュエルが見ず知らずの女とキスをしているところを見てしまう。 愛していた夫の口から、妻など愛してはいないと言われ、ロディアは離婚を決意する。 だが、夫はロディアを愛しているから離婚はしないとロディアに泣きつく。 その光景を見ていた愛人は、ロディアを殺してしまう...。 目を覚ましたロディアは、15歳の時に戻っていた。 毎日0時更新 全12話です。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと
恋愛
21.05.23完結 ーー 「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」 差し伸べられた手をするりとかわす。 これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。 決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。 彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。 だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。 地位も名誉も権力も。 武力も知力も財力も。 全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。 月並みに好きな自分が、ただただみっともない。 けれど、それでも。 一緒にいられるならば。 婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。 それだけで良かった。 少なくとも、その時は。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。