上 下
524 / 730
第3章 アレクを狙って

第635話 あっさり海の旅とはいかないのがアレクらしい!

しおりを挟む
イカは、アレク達を気遣っているのか、適度なスピードで沖を目指して進んでいく。

「ナハス、これなら魔法を使わなくても大丈夫そうだね」

アレクは、振り下ろされるくらいのスピードで沖合いに向かうと思っていたので、意外にも優しいイカに驚いてしまう。

「はい!わかりました。解きますね」

「お!風が気持ちいいね」

ナハスが風よけの魔法を解いた瞬間、ブワァっと風が吹く。
アレク達に、適度な気持ちいい風が当たり、全員が目を瞑って全身で風を感じるのだ。

「ぷにぷにしてる~」

「ほんとだぁ!ぷにぷにして冷たくて気持ちいい」

ノアとカレンは、小さな両手でイカの背中を撫でたり押したりして、最終的には、ほっぺたをイカの背中にくっつけて気持ち良さそうに目を瞑るのだ。

「ママ~、僕もイカしゃん触りたいでしゅ」

「あ、コラ!大樹危ないでしょ!」

大樹は、ノアとカレンを見て、自分も触りたいと思って、抱っこするヘルミーナから、するりと抜け出して、うつ伏せ状態でイカの背中にダイブする。

「ヘルミーナ、大丈夫だよ。落ちそうになったらすぐに助けるからね」

アレクは、すぐにヘルミーナの方を向いて、心配させないように笑顔で話しかける。

「アレクのことを信じるからね。お願いよ」

ヘルミーナは、不安そうな顔をして答える。それを見たアレクは、ヘルミーナに近付いて軽く抱き寄せて安心させようとするのだ。

「アレク.......」

ヘルミーナは、アレクの肩に顔を乗せて目を瞑って安心した表情を浮かべる。
その間も、大樹はうつ伏せで大の字になって背中を堪能しているのだ。

「パパ~、気持ちいいでしゅ~ひんやりでしゅ~」

「気持ち良さそうだね。って、もう寝てるよ。アハハ」

アレクが、返事をすると大樹は疲れたのか、イカの背中でスヤスヤと眠りについているのだ。アレクは、そんな大樹を見て、今も大物だけど将来は今以上にとんでもない子に育つなと思うのである。

「イカさんは、クラーケンとは違うのかな?」

アレクは、前世の記憶からイカは、クラーケンではないのかと予想して聞いてみる。

「クラーケンは、別におります。私よりも、更に大きく力も強く結界も張れますので、出会ったら逃げるしかありませんけどね」

どうやら、このイカはクラーケンとは別のようで、クラーケンを恐れているようだ。

「そうなんだね。じゃあ、こうやって背中に乗せてもらってるけど大丈夫?怖かったりしない?」

「大丈夫です。クラーケンは、数が少ないので滅多に出会いません。もし出会ったら諦めて、この身を捧げます」

イカは、笑いながら冗談ぽく返事をする。すると、何故か光が遮られて、アレク達の周りだけが真っ暗になるのだ。

「ねぇ~?イカさん、あの馬鹿でかいのってクラーケンだったりする?」

アレクが、振り返るとイカの何倍もある更に巨大なイカが、こちらを見下ろしていた。

「そんな、なにをおっしゃっ......ギャァァァァァ」

イカさんは、振り返って見ると、お約束のコントのようなリアクションをして飛び跳ねるのだ。

「クラーケンみたいだね。ナハス、全員を守ってくれるかな?俺が相手をするから」

「はい!わかりました。ご武運を」

アレクは、上空へ飛び上がってクラーケンと目を合わせる。
ナハスは、アレクに言われた通りに、イカに結界を張って、被害がないように防御するのだ。

「クラーケンさん、俺達は遊んでただけなんだけど見逃してくれるかな?」

アレクは、無差別に殺めるつもりはないので、一度話し合いをすることにした。しかし、問答無用で先の尖った足で突き刺そうとしてくるのだ。

「そういうことなら、こっちも手加減しないよ!武功、魔装甲、身体強化」

アレクは、軽々躱すと薬学神から学んだ三つの融合を発動する。
アレクの体には、真っ赤な鎧と武功による蒸気が体から溢れ出すのだ。

「一瞬で決着をつけるからね」

アレクは、そういうと常人では反応しきれないスピードでクラーケンに近づく。クラーケンも、足を何本もアレクに向けて放つが無惨にも全て弾かれて、アレクがパンチを放つといとも簡単に防御結界を突き破り、クラーケンの胴体に風穴を開ける。
更に、威力はとどまるところを知らずに、地平線の果てまで海が真っ二つになるのだ。

「みんな、終わったよ」

アレクは、武功と魔装甲と身体強化を解いて、みんなの方へと振り返り笑顔で手を振る。
すると、イカは当たり前なのだが、あのナハスでさえも、アレクの常人離れした姿に目を丸くして驚いているのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。