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第3章 アレクを狙って

第632話 ナハスのイルカショーと情報過多!

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アレク達は、あれから初めての海を堪能したり、砂の城を作ったりと、海水浴を堪能していた。

「では、私が用意していた魔法をお披露目したいと思います」

砂の城や砂山などが完成に近付こうとしていた頃、急にナハスが魔法を披露したいと言う。

「おっ!楽しみにしてたやつだ。どんなものが見れるんだろ」

ナハスは、波打ち際まで行って暫く無言で立ち尽くす。
アレク達は、何が起こるのかと息を呑んで真剣な顔でナハスを見るのだ。

「行きますね!楽しんでくれたら嬉しいです」

ナハスが、言い終えると沖から何かが大量にやってきたのか?波打つ現象が起こる。
そして、なんだろうと全員が目を凝らした瞬間、アレクが前世に見たことのある物が、水中から飛び上がるのだ。

「え!?ナハス、もしかしてイルカ?」

アレクの目には、懐かしのイルカショーのように水魔法で作ったイルカ達が、優雅に泳いで飛び跳ねる姿が、そこにはあったのだ。

「はい!この世界にもいるのですが、臆病な性格なので人前に出ることは、まずないと言われています。私が、過去に一度だけ見たイルカの神秘的だった思い出を再現しています」

こちらの世界のイルカは、臆病かつ海の魔物に襲われて数も少ないので、あまり姿を見せることがないのだ。

「わぁぁ、凄い綺麗だし、心が落ち着くよ!それに、昔小さい頃に見たイルカショーを思い出せて懐かしい気持ちにもなるね」

アレクは、単純に懐かしんでいた。そして、横を見るとヘルミーナも目を輝かせてイルカ達を見ている。子供達に至っては、大はしゃぎをしてキャッキャキャッキャと盛り上がっているのだ。

「最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。いつか本物を見てもらいたいと思います」

ナハスが、綺麗な所作で礼をすると、後ろで一斉にイルカが飛び跳ねて上空でシャボン玉が弾けるようにパンと音を立てて消えた。
そのさまは、ナハスの綺麗な所作と相まって、サーカスのショーの終わりを見ているよう気分になったのだ。

「終わりまで完璧とか、お金を取っても見に来たくなるレベルのショーだったよ!こんな凄い物を用意してくれてありがとうね」

「勿体ないお言葉です。せっかくなので、喜んでもらいたいと思いまして......」

アレクは、拍手をして大賛辞を送る。
ヘルミーナや子供達も、拍手をして「楽しかった」「凄かった」などと大歓迎を上げる。
その歓声を聞いたナハスは、感動で目を潤ませているが、すぐ拭って気付かれないように振る舞うのだ。

「アレク、ナハスちゃんもすっかり家族の一員ね。あんな顔をするようになってよかったわ」

「そうだね。これから、もっと人の温かみを知って家族以外にも、あの表情ができるようになったらいいけど、まだまだ先の話かな。アハハ」

ナハスは、誤魔化したつもりでも、アレクとヘルミーナには誤魔化しきれていなかったようだ。だが、アレクもヘルミーナも、ナハスの感情の変化や表情の変化を嬉しく思うのだ。

「パパ~、あれなんでしゅか?」

「ん!?って、なんだこりゃ~」

大樹の指差した方を見ると、巨大なイカなの化け物が足をくねくね動かしながら姿を現したのだ。

「獲物どこへやった?早く出せ」

イカの化け物は、いきなり流暢に話し出す。どうやら、アレク達がイカの化け物が狙っていた獲物を奪ったと勘違いしているようだ。

「獲物ってどういうこと?俺達は、ここで遊んでただけだよ」

「今ここに俺の大好物のイルカがいただろ?どこへやった」

全員が、その言葉を聞いて、どういうことか納得をする。

「イルカは、魔法で作り出した偽物だから本物はいないよ。勘違いさせてごめんね」

「くぅぅぅ、俺を弄んだな!許さない」

大好物のイルカのことになると目の前が見えなくなってしまうイカの化け物は、顔を真っ赤にしてイカなのに茹でダコのようになる。

「パパ~、僕が、遊んでくるでしゅ」

「え!?ちょ、ちょっと大樹!危ない!待って」

何故か、大樹が空を飛んでイカの化け物に突っ込んでいった。アレクもヘルミーナもナハスも、イカの化け物が出てくるわ、イカの化け物が話すわ、大樹が飛ぶわで情報が渋滞してわけがわからなくなるのだった。
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