チート薬学で成り上がり！ 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました！

第3章 アレクを狙って

第618話 本来迎えるはずだった運命！

いきなり姿を現した創造神に対して、全員が驚いた表情のまま黙ってしまう。

「アレクよ、ワシも座ってよいかのぅ？」

沈黙を切り裂くかのように、創造神が話し始める。

「は、はい！好きな席に座ってください」

アレクは、内心何を言われるんだとビクビクしながらも逆らうことはできないので、創造神に席へ座るよう案内する。

「では、ここへ座ろうかのぅ......薬学神は、今どこにおるんじゃ？」

創造神は、開口一番に鋭い目でアレクを見ながら薬学神の居場所を尋ねる。
その言葉がこだますと、会議場はシーンとした空間に包まれるのだ。

「え、えっと、わかりません！詳しい場所も定かではありませんし、転移を試みましたが、阻害されて転移もまともにできません」

「......」

アレクの言葉を聞いた創造神は、鋭い目つきでアレクを睨みつける。アレクは、緊張のあまりに一筋の汗を流しながらゴクリと唾を飲み込む。

「どうやら嘘はついておらんようじゃな！しかし、薬学神と一緒に逃げておったのは同罪じゃしのぅ！どうしたもんかのぅ」

創造神は、腕を組んでアレクの罪について考える。

「薬学神様は、神様です！半神の私が逆うことはできません！それに、死ぬところを助けて頂いた恩もあるので無下にはできませんよ！」

アレクは、創造神を逆撫でしないような言い方で弁解を試みる。
本心では、いつも任せるだけ任せて、干渉できないからと黙って見ているだけの創造神よりも薬学神の方が慕うのは当たり前だと思うのだ。

「それも一理あるのぅ！それに、本心で思っておることももっともじゃ！一旦不問とし、アレクが死んでから罪を考えるとしようかのぅ」

創造神は、アレクの本音をわかっても一切怒ることはなく、逆に理解まで示してくれた。
初めから創造神は、怒っているわけではなく、アレクの心情や神が何の助けもしていない現状も理解した上で、形式的に会いにきただけなのである。

「死んでからですか......神界の罰の重さを知っているので、恐怖しかないのですが......できるだけ軽い罪でお願いします」

「どうしようかのぅ？どんな罰がいいかのぅ？ホッホッホッ、冗談じゃよ安心せい！悪いようにはせんわい！それよりも、聖女の存在が消えておるが無事なんじゃな？」

創造神は、意地悪な顔をしてアレクを怖がらせようとする。

「はい！薬学神様が、神力を成長させようと特訓していますね！やはり聖女様は、重要人物なのですか？」

「ほぅ......薬学神は頑張ってくれておるのぅ！神界のルールも見直さねばならんかのぅ！うむ、聖女は、ルシファーを倒す切り札になるじゃろう！運命は変わってきておるということじゃ！薬学神が下界に降りた時からのぅ」

創造神は、薬学神の頑張りを聞いて、神々のルールを変える必要があると思い始める。
しかし、好き勝手に降臨できてしまえば、秩序が崩壊する恐れもあるので、どうしたものかと悩んでいるのだ。

「切り札......それに、運命が変わる？創造神様は、この世界の行く末が見えていたのですか？」

アレクは、創造神の言葉が気になって仕方なくなる。

「うむ！元々の運命は、ここにおる全員が犠牲となり、ルシファーを無力化する定めじゃった！しかし、薬学神が下界に降りたことによって運命が変わったのじゃ！本来、聖女はいないはずじゃった！それに、今頃は完全復活したルシファーとの戦闘が起こっているはずじゃったわい」

創造神の本来起こるはずだった事を聞いて、全員が驚きの表情を浮かべる。
薬学神が降臨したことで、全ての運命が変わってしまったのだ。

「ということは、創造神様は、もうどのような運命が待ち受けているかわからないということですか？」

「そうじゃな！もう来るはずのない運命じゃから話すが、ルシファーを倒した功績としてここにおる全員を転生させて新たな生を与えるつもりじゃった！それが、本来くるはずの未来じゃよ！」

創造神は、自らを犠牲にしながらもルシファーを倒したアレク達に新たな生を与えて、平和な世界に生まれ変わらそうとしていた。
しかし、新たな世界線が生まれたことで、創造神にも、今後の行く末は未知なのである。

「素直に驚いてますよ！まさか、そんな未来だったなんて......でも、一人一人この世界には大切な人がいますから、その運命にならなくてよかったと感じています」

アレクは、今いる仲間やヘルミーナや大樹のことを考えると転生して、全てを失う未来よりは、全員が生き残る可能性のある未来が生まれたことを嬉しく思うのだった。