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第3章 アレクを狙って

第603話 聖女救出と王城に現れた謎の男!

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アレクと薬学神は、地下牢へと下りていく。
すると、先程までとは違い、地下牢の中の瘴気や呪いは存在するものの、かなり薄いのだ。

「アレク、疑似神力薬は残っているか?早く聖女を助けた方が良さそうだ」

先程の戦いで、薬学神が神界から持ってきた疑似神力薬の材料は底を尽きてしまったので、アレクに残っているかを尋ねる。
そして、地下牢にも少しずつ瘴気や呪いが入ってきているということは、聖女がかなり危険な状態だということを意味する。なので、早急に治療した方がいいと言うのだ。

「あります!行きましょう」

アレクは、神力が微かに漏れている奥の牢屋へと向かう。
牢屋に着くと、真っ白な修道服を着た少女が倒れていたのだ。それを見たアレクと薬学神は、急いで牢屋をこじ開けて中へ入る。

「アレク、早く治療をしろ!」

「はい!」

アレクは、疑似神力薬を振りかけたあと、聖女を仰向けにする。そこには、人とは思えないほど肌が透き通った真っ白な可愛らしい12.3歳くらいの少女であった。

「聖女様、助けにきました!起きてください!聖女様!」

アレクは、何度も聖女に向かって呼びかけるが、一切目を覚ます気配がない。

「薬学神様、起きる気配がないのですが、どうしましょうか?」

「神力のお陰で、体内までは侵食されていない!とりあえず、聖王国から連れ出すぞ!抱えて連れてこい」

疑似神力薬を振りかけたことで、少し神力が回復したが、今の状態で放置するわけにもいかないので、一度聖王国の外に連れ出すことにした。
アレクは、薬学神に従って聖女を抱えて、あとを追うのだ。

「薬学神様、教会はどうしますか?まだ生き残った人がいるかもしれません」

アレクは、走りながら、まだ生き残っている人や一番の問題点である教会のことが気になって尋ねる。

「教会は、私が行くから安心しろ!それに、まだ王城は王がいるからな!それに、少々面倒な気配もある!まぁ、任せろ」

「わかりました!俺は、聖女様を見ていればいいですね?それより、面倒な気配とは?」

何が起きても動じない薬学神が、一瞬だけ嫌な顔をしたのを見逃さなかったアレクは、薬学神の面倒という発言が気になって問いかける。

「聖女が、起きたら薬を飲ませて、私が帰るまで待ってろ!面倒な気配については、アレクが知る必要がない......知ると確実に消されるからな!忘れろ」

アレクは、自分で言うのもおかしな話だが、薬学神の下で、かなりの実力をつけたと思っている。
それにも関わらず、あっさりと消されると発言した薬学神に、一瞬思うことはあったのだが、薬学神が適当な発言をするとは思っていないので、今はこれ以上は聞かないようにしようと思うのだ。

「薬学神様、今は聞きませんが、これが全て終わったら話を聞かせてください!何故か、気になるのです」

「あぁ、考えておく!今は、聖女の心配だけしておけ!私は、教会に行く」

薬学神は、アレクにはどうしても聞かせたくない話のようで、話を早々に切り上げて教会の方へ向かうのだ。
アレクは、小さい声で「はい」と返事をして薬学神を見送る。





薬学神が、教会の前へ着くと、正面から歩いてくる人物がいた。
薬学神は、身構える素振りすら見せずに、「フッ」と言って口角を少し上げる。

「まさか、薬学神だったとはな!とうとう神を辞める決断でもしたのか?」

薬学神の前に現れたのは、黒いスタイリッシュなスーツを身に纏い、銀色の髪と金色の瞳が目立つ人物であった。

「やっぱりお前か!う~ん?もしかしたら辞めるかもな!それより何故、ここにいる?共和国にいるはずだろ?」

薬学神の言葉から察するに、かなり見知った関係だと窺える。

「相変わらず女のくせに口が悪いな!それがなけりゃモテるだろ?ん!?あぁ、最近巨大な神力やら邪悪なオーラを感じるから気になって探ってたんだ!」

「うっせぇな!余計なお世話だ!それから、そっちには迷惑はかけないから安心してくれ!」

目の前の男に薬学神が言い返すと、男は「ハハハ」と笑う。

「なら良いが、もし共和国や弟子に何かあった場合、吹き飛ばすからな!それから、王国にはおもしろいやつらがいっぱいいるな!つい最近、脅した魔法使いも肝っ玉が据わってやがった」

男は、不穏な言葉を口にしたあと、王国にいる強者の存在のことも話し始める。

「はぁ~、お前が言うと本当に怖いぞ!とりあえず、私がいるから安心してくれ!それより、王国にも行ったのか......本当に、弟子のことになると行動が早いな」

薬学神は、いつもとは違い、少し歯切れの悪い様子で話す。

「薬学神のお前を信じるよ!共和国内も色々あるんだ!その問題も解決出来ていない状態で他国の問題も降り掛かってきたら面倒だからな!それより、そろそろ俺は共和国に戻る!またな」

男は、自分の言葉だけを伝えると、すぐにその場から消えていなくなる。

「はぁ~、頼むから大人しくしといてくれ!元地獄の王を相手するなんて、今のアレク達には、荷が重いからな」

薬学神は、天を仰ぎながら小さな声で呟くのだった。
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