チート薬学で成り上がり！ 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました！

第3章 アレクを狙って

第568話 アントンの身に起きた出来事とは！？

時は、少し遡る。
いつものように、王城で仕事をしていたアントンは、大量に溜まった書類を片付けていた。
そこに、普通は来るはずのない暗部の一人が現れたのだ。

「宰相様、陛下の指示でやって参りました。私が、連れ出しますので、今すぐついてきてください」

黒い布で顔を隠しているのだが、少し荒い呼吸音や暗部らしからぬ慌てた様子から、異常事態が起こっているのは明確だと感じる。

「どういうことですか？説明をしてください」

アントンは、一大事だとは理解しているが、王城で何が起こっているのかを知る必要があると思い問いかける。

「宰相の部屋は、この先だ！逆らうやつは殺して構わん！」

ドドドッと廊下を走る音とともに、指示を出す大きな声とそれに返事をする者の声が聞こえた。

「宰相様、説明はあとです！時間がありませんので、ついてきてください」

「わ、わかりました！行きましょう」

アントンは、一大事ではあると思っていたが、廊下から聞こえてくる声に、思っていた以上のことが起こっていると気付いて、暗部に従って行動をする。

(これは、大変なことが起こっていますね！陛下は、ご無事でしょうか......)


◆


官職についている重要人物の部屋には、隠し通路があり、アントンも隠し通路から王城の裏手へと出た。

「暗部の者が、逃げ道を確保しておりますので、先を急ぎましょう」

「はい！わかりました。それより陛下は、ご無事なのですか？」

安全な道を進みながら、陛下の安否を尋ねる。

「第一王子が、反旗を翻し、陛下は人質に取られています！事前に何かあった場合、陛下から宰相様を逃がすよう命令を受けておりました。そして、ストレンの街に行くようにと厳命を授かっております」

陛下は、度重なる襲撃に対して、いつか自分の身に何か起こるのではと考えた。
その時に、一番信用できるアントンに全てを託そうとしていたのだ。

「なんと！？まさか！第一王子様が......」

アントンは、第一王子が反旗を翻したことに、陛下は居た堪れない心境だろうと感じるとともに、第一王子がこのような計画を立てられるはずがないので、裏で手を引いている人物がいるなと瞬時に思うのであった。

「宰相様！止まってください！どうやら、ここでお別れのようです！私が、引き付けている隙に、この場所へ向かってください」

暗部は、何かの気配を察して立ち止まるように言ったあと、アントンに地図を渡して、印のついた場所に向かうように言う。
そして、アントン達の前に、剣を持った人物が5人現れた。

「そいつを渡してもらおうか？誰一人として逃がすなと命令を受けているんでな」

青龍刀のようなゴツゴツしい剣を2本持った人物が話しかけてきた。

「断る！陛下のご命令なんだ！それよりも、じきに俺の仲間達がやってくるぞ！逃げるなら、今のうちだと思うけどな」

「あ～、お前と身なりがそっくりなやつがいたな！全員首を跳ねたが、誰一人命乞いをしなかった！それに、なかなか強かったな」

暗部を殺したことを思い出しながら、ニヤリと笑う。
それを聞いた瞬間、暗部はナイフを取り出す。
(全員やられるとは、覚悟を決めるしかないか！)

「宰相様、逃げてと言ったら走ってください！無事に、目的地につけるよう祈っております」

小さな声で、アントンに伝えて臨戦態勢を取る。それを、聞いたアントンは、「わかりました」と小さな声で答える。

「お前は、あのジジイを捕まえろ！多少痛めつけても構わん」

青龍刀のような刀を持ったやつが、仲間にアントンを捕まるよう命令する。

「土牢屋アースプリズン宰相様、逃げてください」

暗部は、土牢屋アースプリズンで敵を囲って逃げられなくして、アントンに逃げるように言う。
アントンは、その言葉を聞いた瞬間、茂みへと走り出す。だが、足止めするはずの土の壁は一瞬で破壊され、敵が猛スピードでアントンに迫る。

「ジジイ、逃げられると思ったのか？」

アントンは、必死に逃げるが、追い付かれて背中へと剣が振り下ろされる。
アントンが、もう駄目だと思った瞬間、目の前に誰かが現れて、振り下ろされた剣を蹴り飛ばす。

「グッ！誰だ！？」

敵は、腕を押さえながら、後ろに飛び退いて距離を取る。

「第三騎士団副団長のヘリオスです！私も、この戦いに混ぜてください！」

なんと、危機一髪のところで現れたのは、ヘリオスであった。

「ジル！ジジイは、放っておけ！こいつは......厄介なのが来たみたいだ！お前らは、暗部を殺せ！こいつは、俺が相手をする」

「はい！わかりました」

青龍刀のような刀を持った人物が、敵のリーダーだったようで、リーダーは瞬時に、ヘリオスの力量を把握して、部下を無駄死にさせないように止めるのだった。