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第3章 アレクを狙って

第567話 答えの見つからない話し合いとボロボロになったアントン!

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「もっと時間がかかると思っておったが、早かったのぅ。スベア卿、久々じゃな!元気にしておったかのぅ?」

会議室に案内されると、ヨゼフはいつもの優しい顔で挨拶を交わしてきた。

「はい!ヴェルトロ伯爵様、お久しぶりでございます!色々大変でしたが、充実した修行をすることができて、とても有意義な時間を過ごせて、元気でやっています」

「そうじゃったか!じゃから、前よりもいい顔になっておるんだのぅ!」

ヨゼフは、スベアの話を笑顔で頷きながら聞いている。
様子をうかがっていたロナンは、偉そうな様子を一切出さないヨゼフに対して感心するのだ。

「うむ!そちらは、前回もおったが、挨拶をしておらんかった!ワシは、ヨゼフ・フォン・ヴェルトロじゃ!よろしく頼むのぅ。ちなみに、ヨゼフでええぞい!」

ヨゼフ自らロナンに握手を求めてくる。ロナンは、その手を両手で包むように握手をする。

「こ、こちらこそ、よろしくお願い致します!ロナンと申します!」

ロナンは、緊張した様子で挨拶をする。何故かというと、ヨゼフを前にして、本物の風格と余裕を目の当たりにしてしまったからである。

「立ちっぱなしも辛いじゃろ!とりあえず、席に座ってくれんか?」

ヨゼフの一言で、全員が席につく。そして、ちょうどメイドさんがコーヒーを持ってきて、一人一人に注いでいく。

ロナンは、メイドさんが入れてくれることや高級な食器を見る機会がないので、終始緊張しているのだ。

「うまいのぅ!アレクが、勧めてくれてからは、紅茶よりもコーヒーになってしまったわい」

コーヒーが、おいしいのもあるのだが、愛してやまないアレクが勧めてくれた飲み物だからこそ、好き好んで飲んでいるのである。

「皆様凄いですね。私は、まだこの苦さに慣れなくてミルクをいれてしまいます」

スベアは、みんなの前なので、頑張ってブラックコーヒーを飲もうとしたのだが、やはり苦過ぎて飲めず、大量のミルクを入れる。

「自分にあった飲み方をすればええんじゃよ!一番おいしく飲むのが、一番じゃわい!オレール、そろそろ話を聞かせてくれんか?」

ヨゼフは、娘を見るような目でスベアのことを見つめる。

「どこから話せばいいのかわかりませんが、まずは今まで以上に、王国が一致団結する必要があると思います!それと、神力なしでは対抗できないのが、一番の悩みの種ですね」

ゼロの部下を全て倒した歴史上にも残るだろうという王国での大戦を終えたにも関わらず、ゼロは衰えるどころか、あの手この手を使って世界を我が物にしようとしている。

それを、止めるためには、個々の力ではなく、全員で力を合わせる必要があると考えているのだ。

「そうじゃな!今のままでは、いずれ王国然り、他の国も崩壊してしまうのぅ!陛下も、それを懸念しておるから、王国と魔ノ国と公国との連合を考えておるようじゃ!しかし、神力の方はどうしようもないのぅ......」

今は、王国と魔ノ国で手を取り合っているのだが、さらなる強化をするために、ゆくゆくは大連合を組む計画を立てているのだ。

「早々に、陛下へ頼んで計画を進めて頂く必要がありますね!神力を持った者を、各地へ配置するのは困難なので、犠牲は致し方ないと考えるしかないでしょうか?」

オレールは、本来であれば、各地に神力を持つ者が、待機するのが理想的と考えるが、オレール達以外使うことができないので、現実的に無理なのだ。

オレールも、答えを出すことができず、曖昧な答えかつ、頭を悩ませる。

トントントンとドアがノックされる。

「アントン様が、お見えです!」

「入ってもらいなさい!」

ヨゼフが、入室の許可を出すと、服がボロボロで、セバンに支えられたアントンが入ってきたのだった。
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