上 下
439 / 756
第3章 アレクを狙って

第552話 優男オレールと悲劇のロナン!

しおりを挟む
「そのローブをお借りしてもよろしいですか?」

オレールは、魔法使いに対して唐突に尋ねる。魔法使いは、どういうことなのかわからないが、言われた通りにする。

「どのようなことをするのか尋ねても......」

魔法使いは、恐る恐るオレールの顔をうかがいながら、何をしようとしているのかを聞く。

「私と貴方で、屋敷に行き、この格好で男爵の下へと行きます!あとは、私が解決しますので見守っていてください」

オレールは、正面から門番などを蹴散らしていくのもいいと思ったが、それでは男爵に逃げられる可能性があるので、魔法使いのもう1人という設定で行こうとしている。

「隠し金庫の在り処を教えるので、見逃してもらえませんか?」

魔法使いは、ここで交渉を持ちかけない限り、もうチャンスはないだろうと感じて、怖いながらもお願いをする。

「う~ん!?隠し金庫ですか......催眠状態にして、貴方のことを尋ねますが、よろしいですか?その結果次第で判断したいと思います」

「は、はい!それだけでいいのなら従います」

やましいことがない魔法使いは、真実が伝わるならとオレールのすることを受け入れる。

「そうですか!なら目を閉じてください!」

魔法使いは、言われるがままに目を閉じると、フワッとした状態になり、意識を失った感覚に陥る。

「貴方は、トンデモ男爵の悪行に加担しましたか?」

「俺は、護衛として雇われただけだ!加担はしていない」

魔法使いは、虚ろな目でぼぉーっと立ち尽くしながらオレールの言葉を否定する。

「なら、何故今回の村人襲撃に加担したのですか?」

「仕方なく......これ以上歯向かうなら契約を切ると言われたから......病気の妹のために金が必要で契約を切られるわけにはいかなかった......」

魔法使いは、これまでにも本来の契約に反する内容の仕事をさせられそうになったが、その都度断っていた。しかし、それに腹を立てたトンデモ男爵が契約を打ち切ると強行に出た。どうしても、金が必要だった魔法使いは、断ることができず、仕方なく従ったのである。

「最後に、他領からの拉致や村人への仕打ちなどには加担していないのですね」

「そうだ!今回もいやいやだが、妹のために仕方なく参加した」

オレールは、その言葉を聞いて催眠の魔法を解く。すると、魔法使いは自我を取り戻したのか、真っ直ぐ見据えた目に戻る。

「色々聞かせてもらいました。解決したら私のいる場所に、妹さんと二人で移住してきませんか?働いてくれるなら衣食住は保証しますよ」

魔法使いは、意外な言葉に面食らった表情をして驚く。そして、オレールは貴族証を魔法使いに見せたのだ。

「まさか伯爵様だったとは......今までのご無礼、大変申し訳ございませんでした!ほ、本当に妹と一緒に移住してもよろしいのですか?」

魔法使いは、片膝を突いてオレールに頭を下げる。

「頭を上げてください!今回の件で、力を貸して頂けるのなら是非来てください」

オレールは、アレクが戻ってくるなら妹の病気も治せるだろうと思ったのと、この魔法使いの真っ直ぐさを見て助けてあげたいと感じたのだ。

「伯爵様、本当に感謝致します!私は、ロナンと申します!これから、よろしくお願い致します」

「ロナンさん、よろしくお願いします。私は、オレールと申します!」

オレールは、ロナンに握手を求めて、ロナンはすぐさまオレールの手を握って笑顔で応えるのだった。
しおりを挟む
感想 2,129

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています

ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら 目の前に神様がいて、 剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに! 魔法のチート能力をもらったものの、 いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、 魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ! そんなピンチを救ってくれたのは イケメン冒険者3人組。 その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに! 日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。