チート薬学で成り上がり！ 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました！

第3章 アレクを狙って

第537話 アレクの死という哀傷を味わった者達！

ゼロとの壮絶な戦いから数日が経ち、王城から派遣された兵士と魔物の街から来た魔物達によって、ストレンの街は戦災復興に取り掛かっていた。初めのうちは、魔物が大勢やってきたことにストレンの住民は悲鳴を上げたり、武器を構えて警戒をする姿勢を見せたが、真面目に瓦礫の撤去や戦災復興をする姿を見て、ストレンの住民は魔物に心を開くようになっていった。まだ数日しか経っていないのだが、ストレンの住民と会話する魔物や冒険者と狩りにいく魔物や子供達と遊ぶ魔物の姿が当たり前になりつつあるのだ。

「この光景をアレクに見せたかったわね......」

ヘルミーナは、ヨゼフとカリーネの好意に甘えて、大樹とともにアレクの実家である屋敷に来ている。

「奥様、私がついていながら、本当に申し訳ございませんでした......」

ナハスは、ヘルミーナの護衛としてやってきているのだが、アレクを見殺しにしてしまったと、ずっと悔やんでおり、意気消沈してしまっている。

「何度も言っているけど、貴女のせいじゃないわ。それに、アレクがいない今、私についてくることはないのよ」

ヘルミーナは、知らせを聞いた時は、泣き崩れて寝込んでしまったが、2日後には部屋から出てきて普段通りの表情で接していた。だが、これは気丈に振る舞っているだけで、本当は今にも精神が崩壊しそうなのだ。

「私は、主様から奥様と大樹様を守るよう言い使っております！それに、奥様も大樹様も私にとってかけがえない存在です！どうか、この命が尽きるまで、お側に居させてください」

人間に対して、頭を下げるような真似は絶対にしない天使なのだが、アレクと過ごす間に、少しずつ感情に変化があったのか、ヘルミーナに対して片膝を突いて頭を下げたのだ。

「フフッ、ナハスちゃんありがとうね！ナハスちゃん、私これからどうしたらいいのかしら......」

ヘルミーナは、みんながいる前で、絶対に泣き顔を見せないでおこうと決めていたのだが、自然と涙が溢れてしまう。ナハスは、そんなヘルミーナを見て、自らも涙を流してしまうのだった。


◆


「バカ野郎が！なんで俺達を連れていかなかったんだ！」

ノックスは、森の中で怒りの矛先をどこに向けていいのかわからず木を殴り続けている。

「クソクソクソくそがぁぁぁ！」

ノックスは、殴るのをやめて、そのまま膝から崩れ落ちる。

「そろそろ戻りましょう！もう三日もここにいるじゃないですか」

アレクが死んだという知らせを受けてから、ノックスは無言のまま魔物の街を出て行き、森の中に籠もっていた。そして、心配するオレールが様子を見に来たのである。

「なんでお前は、そんな平気な顔をしていられるんだ！アレク坊は、仲間だったんじゃないのかよ」

ノックスは、木に向かって両膝を突きながら、涙ながらに語る。

「悲しいに決まっていますよ！悲しくないわけがないじゃないですか！ですが、私はまだアレクくんは生きているんじゃないかと信じているんです」

死んでいる可能性の方が高いのだが、オレールは生きていると無理矢理信じようとして、複雑な表情を浮かべてしまう。

「怒鳴ってすまなかった！お前も、平気なわけがないよな......ちょ、ちょっと、待て！オレール！今、ナハスとマンテ爺はどこにいるんだ？」

ノックスは、急に立ち上がってオレールの両肩を掴み、揺さぶりながら尋ねる。

「急にどうしたのですか！？」

オレールは、いきなりのことだったので、ノックスの発言を理解できない。

「ナハスとマンテ爺に、アレクとの繋がりがあるかどうか聞けば生きてるかどうかわかるんじゃないか？」

ノックスは、従魔である二人と契約がまだ続いているのなら、アレクは生きている証拠になると気づいたのだ。

「あ！？確かに、そうですね！何故今まで気付かなかったのでしょうか！マンテ爺ならパスクくんといるはずです！行きましょう」

ノックスとオレールは、もしかしたらアレクが生きているかもしれない希望を抱きながら、マンテ爺の下に向かうのだった。