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第1章 王国を脅かす敵

第472話 十戒の控え室での様子とメンバー同士の争い!

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十戒のメンバーは、王城に入ると、控え室に案内された。そして、お茶を持ってきたメイドが出ていくのを確認すると、副隊長が話し始める。

「盗聴の魔道具がないかは、確認済みです。今から話すことを聞いても、声を出さず平静を保って下さい!もし、声を出したら気絶させますので頼みますよ」

副隊長は、先程王城へ向かう道すがら思い出したデストロイの話を切り出す。すると、半数のメンバーが声には出さないものの、表情には感情を出してしまう。

「クソ!本来であれば俺が気付かなきゃいけないことだ!何故、帝国が公国になった時に気付けなかったんだ!......申し訳ない。取り乱してしまいました。ウェンデル、よく気付いてくれましたね」

副隊長は、ウェンデルという名前らしい。隊長は、思わず口が悪くなるが、すぐに平静を取り戻して普段の口調に戻る。

「いえ、私も早く気付けたらよかったのですが......それで、隊長どうしましょうか?」

ウェンデルは、マーカスに今後の行動をどうするか尋ねる。

「どうしようもないでしょう。こちらが十戒だということも筒抜けですし、今下手に動いては国同士の争いになりますから、暫く王国の出方を待ちましょう」

マーカスは、出立する時とは違い、かなり慎重になっている。

「デストロイがどんなやつか知らねぇが、そんなビビるほどじゃねぇだろ?それに、神具を使えりゃどんなやつだろうと、俺達なら余裕じゃねぇの?」

シュナイツは、厄介なことになったと思うマーカスとウェンデルをよそに、いつも通りの余裕の表情を見せる。

「おい!シュナイツ!口が過ぎるぞ!この危機的状況が理解できないのか!」

ウェンデルは、シュナイツの発言に対して一喝する。しかし、マーカスが手で制してウェンデルを止める。

「ウェンデル、その辺にしてあげなさい。半数以上が、デストロイの脅威を知らない者たちなのですから。言っても仕方ないのです。シュナイツ、これだけは言っておきます!油断するなよ」

笑顔で話していたマーカスが、真顔でシュナイツに言う。その威圧は凄まじくシュナイツとデストロイを知らない半数のメンバーが苦い顔をする。

「わ~たよ!」

シュナイツは、不貞腐れたような返事を返す。しかし内心では、デストロイなんかゴミだろうと馬鹿にしている。

「ウェンデル、あとで話せる場所があれば二人だけで作戦会議をしましょう。よろしいですね」

マーカスは、ウェンデル以外には聞かれたくない話であるため、二人だけの場を設けたいと言う。

「畏まりました!王都観光ができないか尋ねてみましょう」

ウェンデルは、謁見の際に自由な時間をもらうことができないかお願いするようだ。

十戒が話していると、トントントンと誰がノックをして訪ねてくる。

「バトラーでございます。謁見の準備が整いましたのでお迎えに上がらせて頂きました。よろしいでしょうか?」

「はい!いつでも大丈夫です」

マーカスが、そう言って立ち上がると十戒の他のメンバーも続けて立ち上がる。

「ウェンデルは、ここで待っていて下さい!ぞろぞろと大勢で行っても迷惑になりますからね」

それを聞いた十戒のメンバーは、すんなりと椅子に座り直す。正直堅苦しいのが苦手な者ばかりなのだろう。

「バトラーさん、案内をよろしくお願いします」

「畏まりました」

マーカスは、バトラーにお願いをする。そして、マーカスとウェンデルが部屋から出ていくのだ。

「隊長と副隊長弱気過ぎねぇか?あんなのが十戒の隊長と副隊長でいいのかよ?」

シュナイツは、二人がいないのをいいことに、これみよがしに悪態をつく。

「おい!シュナイツ!言っていいことと悪いことがあるぞ」

シュナイツに諌めようとしたのは、マーカスと同じ初期メンバーの一人だった。

「俺より下のやつが俺に盾突いてんじゃねぇぞ!殺すぞ」

シュナイツは、神具である剣を抜いて、剣先を突きつける。

「もう、すぐカッとなって。十戒同士の争いは禁止よ!まぁ、私も隊長と副隊長は臆病とは思うけどね」

水色のロングヘアの女性が話す。

「チッ!めんどくせぇな!俺が隊長になりゃもっとうまくまとめられるのによ!」

シュナイツは、悪態をつきながらも剣を収める。

「貴方が、隊長になればすぐ崩壊してしまうでしょうね。あと私の方が上なので命令しますが、その臭い口を閉じてもらえますか?」

見るからにザ・女騎士といった金髪の女性が、シュナイツに厳しいことを平気で言い放つ。

「クソ女が!殺す!」

シュナイツは、剣を抜くことはないが、本気で殴りかかる。しかし、金髪の女性は難なく躱して、腕を取り締め上げる。

「クソ女離しやがれぇぇぇ」

シュナイツは、更に悪態をつきながらジタバタと暴れる。しかし、次の瞬間、グギッと痛々しい音が鳴り響く。

「ぐぁぁぁぁ、何しやがるクソおん......」

金髪の女性は、シュナイツの腕を折ったあと、首に手刀を入れて気絶させたのだ。

「このうるさいゴミを寝かせておいて下さい。皆さん、隊長と副隊長の帰りを静かに待ちましょう」

その容赦のなさを見て、全員が首を縦に振り、大人しく席に座るのだった。
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