上 下
394 / 694
第1章 王国を脅かす敵

第469話 20年前の陛下勅命部隊での一幕!

しおりを挟む
20年以上前、まだヨゼフも陛下もセバスも、30代と50代とまだ元気な時の話である。 

「今回は、少し骨の折れる仕事になるであろう。アントンよ、説明を頼む」 

王城にある一部の人間しか知らない会議室で、陛下勅命部隊のヨゼフとセバスが集められていた。すでに何度も仕事を熟している仲間なので、お互いのことを認め合えるようになっていた。 

「はい! 畏まりました。今回の目標は貴族派の貴族3名と王族派の貴族3名と裏組織になります。罪状は、暴行・傷害・拉致監禁・強姦・殺人・帝国への情報流出です」

「またスゲェ罪状のやつだな」 

セバスは、陛下と宰相の前だというのに、平然と汚い言葉遣いをする。

「続けます。うまく証拠を隠しているのか?証拠を見つけることが出来ません。そこで、陛下勅命部隊の貴方方をお呼びした訳です」

「そこまでの罪を犯して証拠が出ないとは、上級貴族でしょうね。今回は、骨が折れそうです」

ヨゼフは、面倒なことになるだろうと、まだ話し始めたばかりにも関わらず思ってしまう。

「確かに、上級貴族になります。まずはヴェルトロ子爵に真実の目を使って貰い、罪状と一致するのか確認を取って貰います。そして、確認が取れ次第、実働部隊のセバスが動き、必ずや息の根を止め証拠を残さないよう処理をお願い致します」

ヨゼフとセバスは、アントンを見ながら頷く。

「では、早速資料をお渡しします。いつも同様、読み終わりましたら、燃やすようお願い致します」

そこには、貴族の名前や住んでいる場所や家族構成などが書かれていた。一通り目を通した者は、資料を燃やして部屋を後にする。 

「ヴェルトロ子爵、今回の件、うまくことは運べそうか?」 

陛下が、最後まで残っていたヨゼフに問いかける。 

「どうでしょうか?いつも以上に人数が多いですからね。正直骨が折れそうです。早速明日、王族派貴族主催のパーティーに潜入しようと思っております」 

当日は、事前に潜入させていた者の手引きで中に入ることが出来るようになっている。そして、宰相は念には念をとパーティーの招待状の偽造も行い、先程の資料と一緒にヨゼフへ渡しているのだ。 

「ヴェルトロ子爵、頼んだぞ」 


◆ 


そして、パーティー当日を迎え、死刑執行人セバスを護衛という名目で連れて行く。 馬車でパーティーが行われる屋敷に向かっているところだ。 

「セバス、いつものように何かあったら頼む。護衛料は払うからな」 

まだ若いヨゼフは、爺さん言葉ではない。 

「任せときな。依頼ということなら全力で守ってやるからよ。それにしてもよ、ヨゼフの旦那は今回大儲けじゃね~か?」 

セバスも、まだ裏稼業に精を出していた時期でもあり、言葉遣いが悪いのである。 

「セバスと同じで金貨100枚だ。どれだけ、仕事が増えようが一緒らしいな」 

「なんだそりゃ~俺が王様にガツンと言ってやるよ。今回の仕事量と報酬は見合ってねぇ」 

セバスは男気があり、曲がったことやおかしいことは許せない人間だったのだ。ヨゼフは、そんなセバスを見て笑うのであった。 

「ふっははは、セバスは、優しい心の持ち主なんだな。他人の為でも動けるのは立派だぞ」 

「恥ずかしいことを平気で言うなよな。もう知らねぇ~。もし、見合わない報酬の仕事が来ても言ってやんねぇからな」 

褒め慣れていないセバスは、恥ずかしそうに顔を赤くしながら、悪態をつくのであった。 

「おっと…… もう少しセバスの恥ずかしがる様子を見ていたかったが、屋敷に着くようだ。気を引き締めて行こう」 

ヨゼフが、馬車の窓から外を見やると、今回の標的の1人であるトランブル侯爵の屋敷に着いたようだ。 

「言われなくてもわかってる。今回は、実働部隊の方も骨が折れそうな相手がいそうだからな。自然と気が引き締まる」 

実働部隊に渡された資料に、セバスも手こずる相手がいたようだ。だが、これまでの仕事ぶりを間近で見ているヨゼフは心配をしていない。 

「ヴェルトロ子爵様、到着致しました」 

御者が、馬車の扉を開けて到着したことを告げる。そして、セバスが降りると、周りに危険がないか確認して、ヨゼフに馬車から降りてもらう。 

そして、アントンから聞いていた潜入している者をヨゼフは探す。 

「ヴェルトロ子爵様でしょうか?」 

後ろから急に声を掛けられる。 

「ん?私は、ヴェルトロですが、どちら様でしょうか?」 

「私は、ペストでございます。屋敷の中までご案内させて致します」 

ベストとは、事前に聞いていた合言葉になる名前である。どうやら、この人物が潜入中の協力者であるようだ。 

「ではベスト殿、案内を頼む」 

「私のことは、ベストをお呼び下さい。殿付けは不要です。それと、これを胸元にお付け下さい。招待客にお渡ししている物になります」 

ヨゼフとセバスは、言われた通りに花の形をしたブローチを胸辺りに付ける。 

「ご武運を願っております。では、私はこれで失礼致します」 

そう言ってベストは、来客の案内に戻るのであった。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]病弱を言い訳に使う妹

みちこ
恋愛
病弱を言い訳にしてワガママ放題な妹にもう我慢出来ません 今日こそはざまぁしてみせます

とじこめラビリンス

トキワオレンジ
児童書・童話
【東宝×アルファポリス第10回絵本・児童書大賞 優秀賞受賞】 太郎、麻衣子、章純、希未の仲良し4人組。 いつものように公園で遊んでいたら、飼い犬のロロが逃げてしまった。 ロロが迷い込んだのは、使われなくなった古い美術館の建物。ロロを追って、半開きの搬入口から侵入したら、シャッターが締まり閉じ込められてしまった。 ここから外に出るためには、ゲームをクリアしなければならない――

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されたやり直し令嬢は立派な魔女を目指します!

古森きり
ファンタジー
幼くして隣国に嫁いだ侯爵令嬢、ディーヴィア・ルージェー。 24時間片時も一人きりにならない隣国の王家文化に疲れ果て、その挙句に「王家の財産を私情で使い果たした」と濡れ衣を賭けられ処刑されてしまった。 しかし処刑の直後、ディーヴィアにやり直す機会を与えるという魔女の声。 目を開けると隣国に嫁ぐ五年前――7歳の頃の姿に若返っていた。 あんな生活二度と嫌! 私は立派な魔女になります! カクヨム、小説家になろう、アルファポリス、ベリカフェに掲載しています。

〖完結〗二度目は決してあなたとは結婚しません。

藍川みいな
恋愛
15歳の時に結婚を申し込まれ、サミュエルと結婚したロディア。 ある日、サミュエルが見ず知らずの女とキスをしているところを見てしまう。 愛していた夫の口から、妻など愛してはいないと言われ、ロディアは離婚を決意する。 だが、夫はロディアを愛しているから離婚はしないとロディアに泣きつく。 その光景を見ていた愛人は、ロディアを殺してしまう...。 目を覚ましたロディアは、15歳の時に戻っていた。 毎日0時更新 全12話です。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと
恋愛
21.05.23完結 ーー 「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」 差し伸べられた手をするりとかわす。 これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。 決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。 彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。 だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。 地位も名誉も権力も。 武力も知力も財力も。 全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。 月並みに好きな自分が、ただただみっともない。 けれど、それでも。 一緒にいられるならば。 婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。 それだけで良かった。 少なくとも、その時は。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。