上 下
353 / 732
第1章 王国を脅かす敵

第467話 暗部からの報告と暗部辞めようかな?

しおりを挟む
十戒の隊長に殺気を放たれた暗部達は、いち早く偵察をやめてその場を離れた。そのまま1時間ほど走って、ある村の宿に入っていく。

「遠距離通信の魔道具の準備を頼む」

そう言うと、アイテムボックス持ちの暗部の一人が水晶のような丸い透明な石を取り出す。

「準備できました。いつでも王城へ繋ぐことが可能です」

「よし!今すぐ繋げてくれ」

リーダーらしき人物に命令されて、王城へと通信を繋げる。すると、通信器にはアントンが映し出される。

「偵察ご苦労様です。ご無事で何より......とはいかなかったご様子ですな」

アントンは、暗部全員の顔が曇っているのを見て、何か面倒なことが起きたのだろうと察する。

「宰相様、ご報告致します。すでに十戒は国境を越えました。あと数日で王都へ着くと思われます。我々は、一瞬にして見つかり、殺気を放たれたため離脱致しました」

リーダーが、報告と状況説明をする。

「そうですか。こちらもお出迎えの準備に入らなくてはいけませんね。にしても、あなた方が見つかるとは驚きなのですが......」

暗部の隠密は、普通であれば見つかることがないと思っている。しかし、殺気まで放たれており、居場所を特定されたことに驚くのだ。

「なんらかのスキルだと思います。かなりの距離を保ち、偵察していたのですが、一瞬で見つかりました。そして、殺気を放った人物なのですが、殺気の濃さから見てかなりの強者だと思います」

かなりの距離を保っていたにも関わらず、足が震えるほどの殺気を放たれたことに猛者だと判断する。

「それは色々と厄介ですな!なんにせよ、無事に離脱できてよかったです。あとは、こちらに任せてゆっくり帰還してください」

アントンは、すぐさま陛下へと報告をして、どのようにしていくかを相談しなくてはならないと考える。

「ハッ!了解致しました。それでは、失礼します」

そう言って通信切る。

「ふぅ~これにて任務終了とする!本当にお疲れ様」

暗部にしては珍しく、全員がその場でへたり込む。それほどに緊張していたのである。

「あの殺気を受けた瞬間、死んだと思いましたよ。俺は、王城に帰還したら辞表を提出するつもりです。故郷へ帰ろうと思っています」

「俺も同じことを考えていたよ。これ以上続けていたらいつか取り返しのつかないことになると......」

二人の部下が、それぞれ暗部を辞めると宣言する。それほどに先程の殺気は衝撃的なものとなったようだ。

「おいおい、お前ら二人共辞めるのか?お前らは、暗部でも指折りだぞ!辞められたら困るんだがな」

リーダーが、辞めると宣言した二人を止めようとする。このような危険な任務をこなせるのは、この二人しかいないと考えているから余計である。

「そのようにおっしゃって頂いて嬉しいのですが、最近手に負えない化け物ばかりが現れるようになり、限界を感じています。それならば、残り少ない人生を故郷で過ごしたいとなりました」

部下の一人がそう答えると、もう一人もそうだと言うように頷く。

「確かにそうだな。最近は、化け物ばかり現れるな!タカハシ辺境伯様が、もしいなければと考えると恐ろしく感じる!はぁ~、俺も辞めようかな......」

リーダーは、思わず自分も辞めようかと口にしてしまう。少なからず、思うところがあったようだ。

「これまで国に尽くしてきましたし、自由になっても文句はないでしょう。このまま全員で辞めて楽しく余生を暮らしませんか?」

「それもいいな!結婚して子供を授かって、のんびりというのも悪くない。ゆっくり余生とは今まで考えてもいなかったからな。まぁ、とりあえずは王都に戻るとするか」

暗部の三人は、それぞれのこれからのことを考えて思い思いにふけるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私って何者なの

根鳥 泰造
ファンタジー
記憶を無くし、魔物の森で倒れていたミラ。テレパシーで支援するセージと共に、冒険者となり、仲間を増やし、剣や魔法の修行をして、最強チームを作り上げる。 そして、国王に気に入られ、魔王討伐の任を受けるのだが、記憶が蘇って……。 とある異世界で語り継がれる美少女勇者ミラの物語。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。