チート薬学で成り上がり！ 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました！

第6章 新たな仲間

第458話 筋肉筋肉筋肉！パワーこそ正義！

ノックスの前に、一角の角を持った熊が立ちはだかる。

「バグベアーか！ゼフ、しっかり見ておけよ！筋肉の素晴らしさを体感させてやる」

ノックスは、大剣を鞘に収めて、拳を握ってバグベアーを睨みつける。C級の凶暴なバグベアーに対して、素手で挑もうとするノックスに、オレールとパスク以外の全員が、驚いた顔をする。

「また始まりましたよ。昔から急に力比べをするんですよね」

オレールが、そう言っていると同時に、ノックスとバグベアーは、殴り合いを始める。ノックスが、バグベアーの顎に拳をぶつけると、バグベアーは一瞬フラッとするが、踏み止まって、お返しと云わんばかりに、ノックスの顔面を殴る。ノックスは、殴られた瞬間ニヤッとしてバグベアーを見据える。それからも、お互い殴り合いを続けて力比べをする。

「俺達は、何を見ているんだ？あの凶暴なバグベアーと殴り合うなんて、普通なら自殺行為だぞ」

リッドが、大きな目を見開いて驚きながらも、目の前のあり得ない光景を一挙手一投足見逃さないように見続ける。

「俺に、あれをやれって？無理だろ......」

ゼフは、筋肉を鍛えたところで、こんな殴り合いをできるわけがないと感じる。

「うぉぉぉ、スゲェ～よ！」

ランスは、目をキラキラさせながら興奮している。他の子供達も、言葉にはしないが目を輝かせている。

「おい！もう終わりか？」

ノックスは、フラフラしているバグベアーに対して、挑発する言葉を投げかける。すると、言葉は通じないが、馬鹿にされていることを感じ取ったバグベアーは、グォォォと雄叫びを上げて一直線にノックスへと体当たりをしてくる。

「そろそろ、遊びを終わらせるとするか」

両手を突き出して襲いかかってくるバクベアーに対して、ノックスは正面から受け止める。バグベアーの威力で数歩分後ろに下がるが、綺麗に受け止めて、ノックスはグッと全身に力を入れて持ち上げる。バグベアーは、何が起こっているのかわからないが、持ち上げられたことに慌てて体をバタバタさせる。しかし、ノックスは離すどころか、更に持ち上げて投げ飛ばすのである。

「あとは、魔力を拳に集中させて殴ると、こんな感じになる。覚えておくように」

ノックスは、投げ飛ばしたバグベアーに近づいて、拳を振りかざして胸に風穴を開ける。バグベアーが、死んだのを確認すると、首をゴキゴキと鳴らしてみんなの下に戻る。

「ゼフには、このくらいの力をつけてもらう！いいな」

あたかも当たり前のように言うノックスに対して、その場にいた全員が、心の中で無理だよ！と叫ぶ。

「俺が、こんなことできるのでしょうか？不安でしかありません」

目の前で起こったあり得ない現象に、ゼフは戸惑いを隠せずにいる。

「大丈夫だろ！ゴブリンジェネラルの攻撃を受け切る度胸があるなら、あとは力をつけるだけだからな！」

ノックスは、何も無理難題を突き付けているわけではなく、ゼフには一番必要な度胸が備わっているので、できると確信したのだ。

「あの力を身に着けることができたら......ノックス様がそう言うならやってみます」

まだ不安は残っているが、あれだけのことをやれる力がつけば、戦いにおいてみんなを守ることができると考えたゼフは、やる気を漲らせる。それから、ノックスはすぐに移動を開始して魔物の街へと向う。


◆


「皆様、おかえりなさい！森の長様からの伝言があります」

門番のミノタウロスが、伝言を伝える。内容としては、長旅で疲れただろうから夜までゆっくり休んでもらうようにということと、夜は歓迎会をするから広場に集まってほしいとの話であった。

「はい！伝言ありがとうございます！」

パスクが、ミノタウロスにお礼を言って、門を通過する。後ろでは、夜明けの雫と子供達が、驚いた顔をしている。魔物が当たり前かのように会話をして頭を下げているからだ。更に門を潜ると、多くの魔物やドワーフが普通に生活をして笑顔でやり取りをしている。その非現実的な光景を見て、また驚いてしまうのだった。