上 下
314 / 756
第4章 アレクの子供と日常

第429話 オークの肝っ玉母さんは強し!

しおりを挟む
アレクの愛妻家と親馬鹿がわかってから、「そんなことないのにな」と言いながらアレクは、食堂へと入る。そんなアレクを、ヘルミーナは微笑みながら見ているのだ。

「おっ!森の長様じゃないかい!好きなとこにってあんたら席を空けな!森の長様と奥様の登場だよ」

オークの肝っ玉母さんが、経営している食堂に訪れたアレク達。そして、肝っ玉母さんの大きな声が店中に響き渡って、食べ終わってゆっくりしていた魔物やドワーフ達は、恐れをなして店からそそくさと出ていく。

「待たせたねぇ!ほら、好きなところに座りなね」

「は、はぁ、ありがとうございます」

アレクは、肝っ玉母さんのあまりの勢いに驚いてしまい、うまいこと返答が出来ないでいた。だがノックスと豪牙は、よく店にくるのか?慣れているようで空いた席にすぐに座り、アレク達を手招きして呼ぶ。

「もう食べるものは決まっているのかい?森の長様、すまないねぇ!ちょっと待っとくれ。あんた達うるさいよ!森の長様の注文が先さね!あんた達は大人しく待ってな」

ツルハシを肩に担いでやってきているので、鉱山の仕事をしていると思われる一団が、店に入ってくるなりすぐに注文をするのだが、肝っ玉母さんに怒られる。しかし、言い返すことはせず、頭を掻きながら申し訳ないといった感じで大人しく席に座るのだ。アレクは、どんだけオークの肝っ玉母さんは強いんだと思ってしまう。

「俺は、ご飯大盛りの生姜焼き定食を頼む」

「じゃあ、俺もご飯大盛りの唐揚げ定食で」

ノックスと豪牙は、慣れた感じで、すぐに注文をする。何故、日本特有の料理があるかというとアレクが作り方を教えたからだ。そして、米は大和ノ国から仕入れている。

「じゃあ、チキン南蛮定食をお願いします。ヘルミーナとアサシンはどうする?」

アレクは、大好物のチキン南蛮定食を頼む。

「どうしようかしら?色々あって悩むわ」

「俺も同感だ!悩む」

ヘルミーナとアサシンも、定食の多さにどれにしようか悩んでしまう。

「それなら、最近大和ノ国から入ってきた秋刀魚定とエビなんてどうだい?どっちもうまいよ!」

悩む二人に肝っ玉母さんが、アドバイスをしてくれる。何故、秋刀魚とエビがこうも簡単に手に入るようになったかと言うと、転移魔道具を魔ノ国から購入して、大和ノ国の商業ギルドと魔物の街の商業ギルドを繋げたからだ。ちゃっかりラヴァーナも話に乗ってきて、魔ノ国の商業ギルドと大和ノ国の商業ギルドとも転移出来るように繋いだのである。このお陰で、一気に物流の流れが加速したのだ。

「では、秋刀魚定食をお願いします」

「じゃあ、俺はエビフライ定食を頼む」

ヘルミーナとアサシンは、言われるがままに注文をする。

「はいよ!すぐに作るから待っときな!あんた、ご飯大盛りの生姜焼き定食、ご飯大盛りの唐揚げ定食、チキン南蛮定食、秋刀魚定食、エビフライ定食入ったよ!森の長様御一行の注文さね!気合い入れて作るんだよ」

「はいよ!俺の腕が試されるってわけだな!オークの底力を見せてやるぜ」

肝っ玉母さんが、注文を伝えると、厨房から店主の気合いの入った声が聞こえる。それを聞いた店にいる魔物やドワーフから「オークの力見せてやれ」とか「おやじ、俺達にも気合い入れて作れ」など様々な声が飛び交う。アレクは、そのような活気ある声を聞いて、魔物の街が段々と街らしくなって魔物同士も争いなく平和でいいなと思うのであった。

「いい街よね!改めて魔物って怖いものって印象が薄れてきたわ!こんないい場所に住めるのが幸せだわ」

ヘルミーナが、この街を見てきてイメージがガラリと変わったことを伝えてくる。

「俺も、魔物がこんな風に生活出来ると思ってもいなかった。それに、ここの空気は居心地がいい!人間のように裏がある者がいないからな」

アサシンは、元々あまりいい環境での生活を送ってこなかったので、相手の表裏を見極める力が自然についてしまっているようなのだ。そして魔物からは、その裏が全く感じられないらしい。

「そうだね!澄んだ空気がいつも流れているような印象だよ。二人共、街を褒めてくれてありがとう。みんなが、頑張ってきたのが報われた気がするよ」

アレクは、本当に心の底から嬉しい気持ちと認めてもらえたことに泣きそうになってしまうのだった。
しおりを挟む
感想 2,129

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。 異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。