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第4章 アレクの子供と日常

第425話 魔物の街に驚く一行と懐かしい再会と新たな出会い!

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「ドワーフと魔物が一緒に仕事をしているのね。それに、服まで着てるなんて凄いわ」

ヘルミーナは、馬車から街の光景を眺めながら興奮している。

「そうだよ。ちゃんと理性があって言葉も話せるから人間と変わらないよ。それに、人間より素直だし、物覚えもいいかもしれない」

「それもそうだけど、言葉まで話せるなんて凄いわ~!でも、アレクが頑張ったからこそよね。流石、私の旦那様だわ!大好きよ」

言葉まで話せると思っていなかったヘルミーナは、驚いた顔をする。そして、アレクのことを褒めながら愛の言葉を伝えるのだ。

「偶然だよ偶然!みんなが、順応しようと頑張ってくれたお陰だよ。でも、ヘルミーナに褒められるのは嬉しいな!俺も大好きだよ」

そうして、誰にも見られていないのをいいことに熱いキスを交わす。





馬車の中でアレクとヘルミーナが、楽しんでいる頃、外ではアサシンとナハスも驚きの表情を見せていた。

「あいつら言葉を交わしているぞ!ナハス、特殊個体でもない魔物が言葉を理解し、話すなどあり得るのか?」

アサシンが、天使なら何か知っているのではないかと聞く。

「有り得ないです!私も正直驚いていますよ。すれ違う魔物全てが会話をしていて服を着て、理性があるなんて考えられません。常識を逸脱しています」

天使であるはずのナハスでさえも、この魔物の街の異質さに驚きを隠せずにいる。

「天使ですらも、驚く状況なのか......パスク、人の往来が激しくなった時、魔物を襲うやつがいるかもしれないが、対策は考えているのか?」

アサシンは、すぐにその発想に行き着くあたり、流石だといっていいだろう。

「魔道具を使って前科があるか調べ、更にやましいことがある人間かを調べる魔道具も用意しています。該当する人間は、その場で追い返し、以後入領を拒否致します」

パスクが、対策に関して説明をする。それを聞いたアサシンは、どこでそんな高度な魔道具を仕入れてくるんだと思うのだ。

「それなら大丈夫そうだな!まぁ、俺の考えなどすでに対策済みだろう」

「いいえ、普通すぐにその考えに行き着きませんよ。また何か気になることがあればおっしゃってください。まだ発展途上の街ですから、意見は多いに越したことはありません」

パスクは、気を使ったわけではなく、心の底から必要だと思い、アサシンにお願いをする。

「そういうことなら気付いたら言わせてもらう」

アサシンも、サッとした返事で返すが、昔と違い必要とされていることが内心嬉しく感じている。





「ヘルミーナ、見えてきたよ!あれが、俺達が住む屋敷だよ」

アレクは、屋敷と呼んでいる実質は城が姿を現す。

「えっ!?アレク、あれどう見ても城よね?」

ヘルミーナは、どっからどう見ても立派なお城にしか見えないという。なんせ王城の倍近くの大きさがあるからだ。

「アハハ、屋敷だよね?」

アレクは、何故か頑として城とは認めない。

「アレク、城と認めたくないのね。でもあれはどう見ても城よ!素直に認めた方が逆に変に思われないわ」

城と認めてしまうと、独立いや離反した国家になるのではと思って頑として認めなかったのだ。

「ヘルミーナに言われるなら認めるしかないね。どういうわけか?ドワーフに任せたら立派な城が出来上がったんだよね」

とうとうアレクは、ヘルミーナに促されて城と認める。外では、ノックスやオドヘートや豪牙が出迎えてくれている。アレク達は、馬車から降りて出迎えてくれている人達の下へと向かう。

「ヘルミーナ、久しぶりだな!元気そうで何よりだ」

「ノックスさん、お久しぶりです!いつも旦那がお世話になっています。ノックスさんがいれば、心強いですわ」

ノックスとヘルミーナが握手を交わして再会を喜ぶ。

「私は、相談役を任されております。オドヘートと申します。奥様にお会い出来て光栄に思います。何かありましたらなんでもおっしゃってください」

オドヘートは、流石といった感じで貴族らしい礼節で挨拶をする。

「旦那様からオドヘート様のことは聞き及んでおります。こちらこそ、ご迷惑をお掛けするかもしれませんが、何卒よろしくお願い致します」

ヘルミーナも、昔と違い社交場で慣れたのか?なんなく返答をする。

「豪牙だ!森の長様の女と聞いた。何でも言うといい!もし、敵が来ようと必ず守ってやる」

豪牙は、相変わらずのように話しかける。

「あなたが豪牙さんですね。頼りにしております。旦那様をこれからもよろしくお願いします」

鬼人を前にしても臆することなく挨拶を交わすヘルミーナ。街中を見てきたお陰で魔物に対する偏見が薄れたのだろう。それに、豪牙は魔物というよりは魔族に分類されるので余計に話しやすいのかもしれない。

「じゃあ、挨拶も済ませたことだし、荷物をまとめてゆっくりしたら、街にでもいこうか」

アレクが、やっと家族や側近を連れてくることが出来て、安心して色々任せることが出来るなと感じるのだった。
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