上 下
302 / 732
第3章 豪牙の新たな力

第417話 鬼人の王の出現と小僧呼ばわりされるノックス!

しおりを挟む
「俺は、負けたのか?」

豪牙は、ノックスから胸に感じたことのない攻撃を受けたことは覚えており、負けてしまったのかと思う。そして、今横になった状態で暗闇を漂っているのだ。意識は、ハッキリしているのだが、体が思うように動かない。

「鬼人として情けない!我が王であった時は、人族に負けるような鬼人は誰一人としていなかったぞ!久々に鬼人が現れたと喜んでいたが、このような情けない鬼人とはな」

暗闇から声がするのだが、豪牙は動けず見ることが出来ないので誰なのかわからない。

「動けず、声も出せないとはな!鬼人の恥さらしがぁぁぁぁ」

暗闇から話す人物に、罵倒される。

「さっきから好き勝手いいやがって!お前は誰なんだ!ここは、どこだ?」

豪牙は、横たわったまま大声をあげて言い返す。

「フッハハハハ、威勢だけはいいな!どこまでいっても情けなくて笑けてくるぞ!だが、特別に答えてやろう。我は、鬼人の王だ。そして、ここは我が作った空間である」

豪牙を馬鹿にしたように笑う鬼人の王。そして、この空間は鬼人の王が作ったというのだ。

「鬼人の王!?この世に鬼人は、俺だけじゃないのか?」

アレクから鬼人は、もう存在すらしていない種族の可能性があると聞かされていたので、王が存在することに疑問を感じる。

「700年前に鬼人は滅びた!疫病でな!我は、ただの精神体にすぎん!またこの世に鬼人が現れた時、この空間へ来るようデュアルに頼んで、ある魔道具を作ってもらったのだ」

なんと初代魔王との繋がりがあり、疫病による死を悟った鬼人の王は、デュアルに頼んで精神を封印し、新たなる鬼人が現れた時に発動する魔道具を作って貰っていたのだ。

「本当に鬼人の王なのか?」

豪牙は、突拍子もないことに半信半疑となり尋ねる。

「信じられんと言うのか!ならば、その体を貸せ!ゆっくり我と貴様の違いを見ておくといい」

その瞬間、豪牙の中に黒い何かが入り込んでくる。そして、意識が途絶えるのだ。





ノックスが、ただならぬ雰囲気を察して、飛び退いて距離を取る。豪牙は、ヌルっと立ち上がり、下を向いたままなのだが、一切の隙がないのである。しかも、角が倍の太さになり、顔や体には見たこともない黒い紋様が浮かんでいる。

「豪牙、目を覚ませ!しかと、我の戦いを見ておくのだ」

鬼人の王が、大声で叫ぶと意識を失っていたはずの豪牙が目を覚ます。しかし、体の自由もなく声すらも発することが出来ず、第三者の目線で見ているような感覚になる。

「人間、鬼人があのような情けないものだと思うなよ!これが、本当の鬼人の力よ」

豪牙に乗り移った鬼人の王が発する威圧とオーラは、凄まじくノックスも身構えて冷や汗を流すほどであった。

「おい!お前は誰だ?豪牙じゃないだろ?」

ノックスも、押し返すように威圧とオーラを出して対抗する。対抗してくるとは思っていなかった鬼人の王は、思わず笑ってしまう。

「フッハハハハ、人族にこのような力を持った者が存在するとはな!愉快愉快!我は、豪牙ではない!鬼人の王である!」

「鬼人の王のお出ましとはな!相手にとって不足はないな」

ノックスも、久々に感じる強者を前に武者震いと高揚感を感じる。

「生意気な小僧だ!早くその腕を治せ!我が手傷を負った者を負かしたとあっては、皆に笑われてしまうわ!」

鬼人の王は、ノックスを小僧呼ばわりする。700歳を越えた鬼人の王と30代のノックスでは小僧呼ばわりされても仕方ないのだ。そして、傷を治して万全な状態で戦うように言う。

「小僧なんて久しぶりに言われたな!鬼人の王、本当に回復していいのか?」

ノックスは、子供の時以来の小僧呼ばわりに思わず笑ってしまう。

「くどいぞ!なんならあらゆる手段を使ってかかってくるといい!我の本気と小僧の本気とでは力量差があり過ぎるからな」

「チッ!言い返せないのが悔しいが、確かに差があるな!なんでもいいと言ったな!アレク坊、強化薬と向上薬と狂化強靭薬、それと全ての薬を出してくれ!あと回復薬も頼む」

普段であれば己の力で、どうにかするノックスだが、鬼人の王の強さは、今のノックスを超えていることが明白であり、悔しさはあるのだが、薬の力を借りて戦うことを決めたのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした

せんせい
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ―――

貧乏男爵家の四男に転生したが、奴隷として売られてしまった

竹桜
ファンタジー
 林業に従事していた主人公は倒木に押し潰されて死んでしまった。  死んだ筈の主人公は異世界に転生したのだ。  貧乏男爵四男に。  転生したのは良いが、奴隷商に売れてしまう。  そんな主人公は何気ない斧を持ち、異世界を生き抜く。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。

黒ハット
ファンタジー
 前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。