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第2章 魔物の街の視察

第408話 ドワーフの暴走を止めるのは酒だった!

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「飲め飲め!ほれほれ!飲んだら飲んだだけ楽しくなるぞ~」

ドワーフが、陛下とルーヘンとアントンに酒を勧める。

「待つのだ!そんな早く飲めぬわ!」

陛下が、飲んだら次々に注がれていくジョッキを見ながらやめるように言う。しかしドワーフは、一切手を止めようとしない。

「ブッハハハハ、陛下~ルーヘン殿~が、二人いや三人いますぞ~」

アントンは、顔を真っ赤にさせながらフラフラして話し出す。

「宰相様、大丈夫ですか!?」

ルーヘンが、アントンの背中を擦りながら問いかける。

「平気ですぞ~おぉ~全員が分身しています~これは魔法ですかな?」

アントンは、大笑いして頭を左右に揺らしながら答える。もう限界間近なようである。

「ドワーフ、こいつは限界だ!そろそろ解放してやれ」

流石に見兼ねて、豪牙が間に入って止めに入る。フラフラのアントンに対してもお構いなくドワーフ達は飲ませようとしているからだ。

「飲んでこそ強くなる!ここを乗り越えさせるんだ」

ドワーフは、意味のわからないことを口にする。豪牙は、無視してアントンを肩に担ぎ上げてその場を去る。





「森の長様、あのドワーフ達をどうにかしてくれ!無理矢理飲ませて人族がヘロヘロなっている!俺は、こいつを見ておく」

豪牙は、アレクに助けを求めて、アントンのために水を飲ませ介抱する。

「これはまずいね。おやっさん、ドワーフを止めるのを手伝ってくれませんか?」

アルコール中毒になりかけているアントンを見て、これは本当に危ないと判断したアレクは、おやっさんに助けを求める。

「またあいつらは!こないだも、魔物達を酔わせて大変だったんじゃ!坊主、一言酒は出さんと言ってやれ!それが一番効くじゃろう」

酒が命のドワーフにとって一番効果的な手段であり、なおかつアレクが酒を出さない限りは尽きてしまうので従うほかないと考えたのだ。

「わかりました!すぐに言いにいきましょう」

アレクは、席から立ち上がって陛下とドワーフがいる場所へと向かう。

「皆さん、これ以上陛下達に飲ませるようなら、今後一切お酒は出しませんよ」

ドワーフ達は、先ほどまでワイワイ騒いでいたのが嘘のようにシーンと静まりかえる。そして暫くシーンとした状況が続いた次の瞬間、発狂したのようにドワーフが阿鼻叫喚する。

「坊主、言った通りじゃろ?ドワーフにとって酒は命じゃ!次からこの手を使うといいわい」

おやっさんは笑いながら、ドワーフ達の阿鼻叫喚した姿を眺める。

「おやっさんの言った通りですね。これからこの手を使いますね」

「アレクよ、助かった!もう余もルーヘンも限界だったのだ。だが、ドワーフの弱点も酒だとはな!」

「アレクくん、助かったよ......一時はどうなるかと焦ったからね」

陛下もルーヘンも、疲れた表情でアレクに感謝の言葉を伝える。

「まさか、ドワーフがここまで酷いとは思わなかったですよ。あとは、私達に任せてレイリシア王妃様とエリーゼのところへ行ってあげてください」

流石に、これ以上陛下とルーヘンを付き合わせるわけにはいかないと思ったアレクは、二人の下に行かせようとする。

「アレクよ、この礼は必ずする!ルーヘン、ほら行くぞ」

「はい!行きましょう!」

陛下とルーヘンは、逃げ出すようにその場を離れる。

「おやっさん、このドワーフ達をどうしましょうか?」

「放っておくのが一番じゃ!じきに収まるわい。ほれ坊主、ワシらも行くぞい」

おやっさんは、ドワーフに一番効くいい方法を知っているのだ。そして、アレクの腕を掴んで去ろうとする。

「待ってくれ~俺達が悪かった。許してくれ~」

去ろうとしたおやっさんとアレクを見て、一人のドワーフが慌ててそう言うと、他のドワーフ達もすぐ様謝ってくる。

「おやっさん、どうしましょうか?」

「ブッハハハハ、許してやれい!だが、二度と同じ過ちを犯さないように言い聞かせるんじゃ!酒を出さんとな」

ドワーフは、おやっさんの酒を出さんという言葉に頭を抱えて跪くのだ。

「あの~すでに落ち込みようが凄いように感じるんだけど......」

「そうじゃな、ワシも思ったより効果的で驚いておるわい。暫く反省も込めてこのままにするのはどうじゃ?」

かなりのダメージを受けているドワーフ達を見て、同じドワーフであるおやっさんも、ここまでなるかと驚く。

「そうですね。アントンさんをあんなにしたんですからね」

アレクは、ニヤッと笑っておやっさんもそれにつられてニヤッと笑うのだった。
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