チート薬学で成り上がり！ 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました！

第1章 森の長による開拓

第403話 豪牙の思いと打開策！戦うしかないでしょ！

ノックスと豪牙は、あれからもお互いの力を試すかのように応戦し合っている。

「豪牙、やるな！更に上げていくぞ！身体強化」

豪牙が、身体強化を使う中、今までスキルや魔法を使わず己の力のみで戦っていたノックスは、とうとう身体強化を使うのだ。すると、踏み込みからダッシュまでのスピードが先程までとは比べ物にならないくらい早く気付いたら豪牙の目の前まで来ている。

「クッ！まずい！」

豪牙は、目の前に来たノックスの尋常ではない殺気と圧に体が思うように動かず、避けるのが一歩遅れてしまう。何とか両腕をクロスして大剣をガードしようとする。しかし、大剣が当たった直後、吹き飛ばされて壁へと激突する。ノックスが、加減をしたのか？防御結界を突き破ることはなかった。

「やり過ぎたか？豪牙生きてるか？」

そう話しかけてから少しして、壁の瓦礫がパラパラと崩れる。そして暫くすると、豪牙が姿を現す。

「イテテテ、腕が使い物にならなくなったぞ。悔しいが、俺の負けだ」

腫れた両腕をブラブラとさせながら、負けを宣言する豪牙。

「アレク坊、ポーションを頼む」

ノックスが、観客席にいるアレクに対して呼びかける。アレクは、観客席からすぐに下りて豪牙の下へと向かう。

「豪牙！大丈夫？これを飲んで」

アレクは、エクストラポーションを渡す。豪牙は、すぐに飲み干す。すると、腫れていた腕は元通りに戻っていくのだ。

「お～元通りになったぞ！森の長様、ありがとう」

豪牙は、腕をブンブン振り回したりグーパーしながら動きを確かめる。

「豪牙、強かったよ！オリハルコンを受け切るとは思わなかった」

アレクは、豪牙に対して称賛を送る。しかし豪牙は、全然納得がいっていないようである。

「森の長様、俺はまだまだだ。遊ばれているようにしか見えない」

ノックスが、全然本気を出していないことを悟って、少し落ち込むような仕草をする。

「ん～豪牙は、自分が弱いと思う？」

アレクは、意外な質問を豪牙に投げかける。

「俺は、強いと自負していた。レッドドラゴン様には勝てなくても、他には勝てると......だが、最近自信をなくしてきている。オレールにもノックスにもパスクにも勝てない。人間に負けるなど考えもしなかった」

オーガとして長きに渡り、色んな魔物達と戦って相手を倒して長になり、オーガの王として君臨していた豪牙には、受け入れがたい事実なのだろう。

「努力しているのは、豪牙だけじゃない！人間のオレールさんだって師匠だってパスクだって努力しているんだ。まずは、人間だから弱いという概念をなくそう」

アレク的には、自分より弱い種族を見下して足元をすくわれないようにという意図がある。

「ここへ来て人間にも強き者がいると知った。侮れないと。でも、何故ここまで差があるのか......わからない！俺も怠けていたわけではない。幾度と死線をくぐり抜けてきた。なのに......」

ノックス達との戦いで、人間を認めてはきたものの、次元が違う強さに納得がいかない様子なのだ。

「よし！一回死の淵を味わってみようか！オレールとラヴァーナ様に頼めば、師匠の本気に耐えきれる防御結界を頼めるかもしれない。師匠、豪牙を殺す覚悟で攻撃できますか？」

アレクは、急に恐ろしいことを口にする。しかも、その意図を話さず進めていくのだ。

「本当に殺してしまうかもしれないが、いいのか？」

「なるべく瀕死くらいにしてほしいですが、もし死んだら、今回だけある薬を使います！豪牙の今後のために！」

ある薬とは、死者蘇生薬である。本当は、理を曲げてしまうので使うのを躊躇っているのだが、豪牙の将来を潰すくらいなら使ってしまおうと考える。

「あれを使うのか？そこまでする真意はなんだ？」

ノックスも、アレクの意図が読めずにいるので、直接尋ねる。

「あえて真意は言いません！豪牙が、その瞬間気付かないと意味がないからです。まぁ、気付くかは賭けですけどね」

アレクは、この場で言ってしまうと意味がないので、真意を隠すのだ。

「なるほどな！なんとなくだが読めてきた。しかし、そううまくいくかわからんぞ」

ノックスは、瞬時にアレクの少ない言葉から真意をなんとなくだが読み取る。

「まぁその時は、別の方法を試しますよ！豪牙、5日後本気の師匠と戦ってほしい！できるかな？」

「願ってもない！ノックスよろしく頼む！俺も全力を出させてもらう」

さっきとは違い豪牙は、やる気に満ちた顔をする。

「あぁ～俺を殺す覚悟でこい！じゃなきゃ、一瞬で終わらせる！」

ノックスは、恐ろしいことを口にするが、豪牙は「わかった」と静かに答えてから、闘技場をあとにするのだった。