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第1章 森の長による開拓

第393話 招待状を届けに行くアレクに待ち受けていたエリーゼ!

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陛下に招待状を届けに来たアレクは、珍しく城門前に転移する。だが、急に現れたアレクに驚いた門番が剣を抜いて身構えるのだ。

「誰だ!?ってタ、タカハシ辺境伯様でしたか!急に目の前に現れないでください。思わず斬りかかるところでしたよ」

門番は、アレクとわかり安心した顔をする。しかし、普通ならば斬られていてもおかしくない状況だ。

「ごめんなさい。城内に転移は駄目って言われたから門にしたんだけど、うっかりしてたよ」

転移に関しては、どこか抜けているところがある。

「次からは、少し離れたところに転移してきてください。私達でなければ斬りかかっていたかもしれません。よろしくお願いします」

門番達も諦めているのか?入領の許可を取るように言わず、見えない位置で転移するように言う。

「次からは、離れた位置で転移するよ。入っても大丈夫かな?」

「はい!じきに宰相様がお見えになると思いますので、暫くお待ち下さい」

すると、城内から門番と一緒にアントンがやってくる。別の門番が、呼びに行ってくれたようだ。

「アレク様、直接転移してこないとは珍しいですね。陛下と王妃様とエリーゼ様は、すでにお待ちですので参りましょう」

「え?王妃様とエリーゼも?」

アレクは、何故王妃とエリーゼもいるのかと疑問に思う。

「その話も含めて中でお話致しましょう。一つだけお伝えしておきますが、エリーゼ様はかなりのご立腹ですので、対応には十分お気を付けください」

「え?」

アレクは、何故エリーゼが怒っているのか見当がつかないでいる。しかし、アントンが事前に忠告してくる程なので、よっぽどのことだと思うのである。

「さぁ~参りましょう!」

アントンは、気に止める様子もなくアレクの背中を押しながら城内に誘導する。アレクは、「え?」と何度も言いながら城に入っていくのだった。





「あの~エリーゼは、そんなに怒っているのですか?」

応接室に案内される間、アレクは気になってアントンに尋ねる。

「はい!陛下もたじろぐ程に怒っておりました。陛下とは和解をされましたが、アレク様への怒りは治まっておりません」

「何故、怒っているのですか?理由が見当たらないのですが......」

アレクは、本当にさっぱり理由が分からないといった表情でアントンを見る。

「そうですか......わかりませんか。理由は、エリーゼ様だけが魔物の街に行けないことにあります」

「え?でも、それは陛下が断ったのが原因ですよね?俺は、連れていきたいと言いましたよ」

アレクは、必死な顔で否定する。

「陛下は、それについてエリーゼ様に話しておりません。ですので、アレク様が悪いと思っております」

「え?えぇぇぇ~そんなぁぁぁ~あんまりだぁぁぁ」

アレクは、思わず大声で叫んでしまう。すると、アントンが「お静かにお願いします」と言うのだ。だがアレクは、そんなことは耳に入っておらずどうしようかと思う。

「アレク様?アレク様?応接室に着きましたよ!」

アレクが、焦っている間に、どうやら応接室に着いてしまったようだ。

「あっ!え?申し訳ございません。考え事をしておりました。もう着いたのですね」

「はい!皆様中でお待ちです。ご準備はよろしいでしょうか?」

準備も何も今から怒られる前提だとわかっているアレクは、何も考えられないままいるのである。

「は、はい!準備は出来ておりませんが、よろしくお願いします」

アントンは、笑みを浮かべたままドアをノックする。すると、中から「入ってよいぞ」と聞こえる。その返事を聞いたアントンは、ドアを開ける。

「タカハシ辺境伯をお連れ致しました」

「アレク久しいな。息災であったか?」

陛下は、他愛もないお決まりの挨拶をしてくる。しかし、アレクはそれどころではない。エリーゼを見ると、笑顔なのだが目が一切笑っていないのだ。

「陛下、ご無沙汰しております。陛下もお元気そうで何よりです。しかし、陛下に苦言を呈したいと思うのですが、よろしいでしょうか?」

アレクは、主導権を握られる前に、こちらから仕掛ける。

「アレクにしては、珍しいな。申してみよ」

陛下は、あのことを言われるとはつゆ知らず、普通に聞き返す。アレクだから許されることだが、本来なら陛下に意見するなど許されることではないのだ。

「エリーゼを、連れて行きたいと言ったのに断ったのは陛下ですよね?」

「な、何を急に申しておるのだ!」

陛下は、まさか暴露されると思っておらず、大いに慌てる。

「お父様ぁぁぁぁ!」

エリーゼは、凄い形相で陛下を見る。

「エリーゼ、違うのだ!話を聞いてくれ!」

「これは、詳しく聞かなくてはいけませんね。ア・ナ・タ」

「そうですね!お母様」

レイリシアとエリーゼが、怖い笑顔で陛下に詰め寄る。陛下は、またまたたじろぐのであった。
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