チート薬学で成り上がり！ 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました！

第1章 森の長による開拓

第372話 ドワーフは恐ろしかった！早速怯えるレッドドラゴン！

アレク達は、アントンに別れを告げて、ドワーフの一団が待つおやっさんの店に転移する。

「おっと......これは、凄いですね」

転移した店の前には、ドワーフがいっぱいいる。思わずぶつかりそうになる。

「うぷっ......こりゃ、夜が大変だぞ」

ノックスは、大量のドワーフを見て吐き気を催す。オレールも同じくである。アレクは、風魔法を応用した拡声器の魔法を使っておやっさんを呼ぶ。

「おやっさ～ん！アレクです。いたら出てきて下さい」

呼んでから暫くすると、おやっさんがドワーフを掻き分けてやってくる。

「お～やっときよったか！みんな待っておったぞい！準備は出来とるわい」

おやっさんや他のドワーフ達も、荷馬車や大きな背負子を背負って準備万端といった感じだ。

「じゃあ、一斉に転移しますので、集まって下さい」

アレクが、拡声器の魔法を使って呼ぶが、ドワーフはガヤガヤ騒いで一切集まる気配がない。

「坊主！ワシが話してやるから、その魔法を使えるようにするんじゃ」

アレクは、言われた通り、おやっさんの口元に拡声器の魔法を出す。

「話してみて下さい！」

「お前ら！話を聞くんじゃ。ここにいるアレクの坊主こそが、雇い主であり、あのうまい酒を用意した酒の神様じゃ！話を聞かんやつは帰るんじゃな」

それを聞いたドワーフ達は、一斉にアレクの方を見る。アレクは、誰が酒の神様じゃぁぁと思うのだ。

「お主が、あの酒を持っとるんか？はよ出さんか！」

「あれの味が忘れられんのじゃ！」

「神様、頼むくれ！頼む」

アレクの周りに目をギラつかせた酒の亡者と化したドワーフが群がってくる。

「師匠～オレールさ～んパスク～助けて～」

アレクは、ドワーフの一団に飲み込まれて、その場から姿を消す。

「ノックスさん、どうしましょうか？」

パスクが、ノックスに助けを求めるが、そっぽを向かれる。そして、オレールの方向を見るが、同じくそっぽを向かれるのだ。二人は、どうしても関わりたくないらしい。

「おやっさん......アレク様大丈夫でしょうか？」

「どうじゃろうな！あぁ～なったドワーフは、どうしようもないからのぅ」

おやっさんは、まだ真面目な方で、分別を弁えてはいる方である。

「うるさ～い！そんなことするなら酒はあげないし、連れて行きませんからね！大人しくして下さい！」

アレクは、ドワーフの一団から抜け出して、空高く飛び、拡声器の魔法で全員に聞こえるように叫ぶ。そして、酒が貰えないと聞いたドワーフ達は、叫びながら阿鼻叫喚する。しかし、次の瞬間誰が言ったかはわからないが、「整列」と言った声を皮切りに、無秩序だったドワーフ達が綺麗に並ぶ。

「今からおりますけど、大人しくして下さいね。向こうに着いたら酒樽を渡しますから」

それを聞いたドワーフは、「わぁぁぁ」と大声援を上げる。ノックスやオレールが言っていたことは、本当だったんだなと思う。

「転移しますね。転移」

次に目を開けると、そこは森の中であった。ドワーフ達は、転移を経験するのが初めてなのだろう。騒ぎまくっている。

「森の長様ぁぁぁぁ」

アレクの魔力を感じて、飛んでやってくるレッドドラゴン。あまりの大きさと迫力に、さっきまで騒いでいたドワーフが黙ってしまう。

「久々だね。森に変化はなかった？」

アレクは、レッドドラゴンの首筋を撫でながら話す。もちろん身長差があるので、飛びながらだ。

「変わりありません！はにゃぁぁ、気持ちいいです～」

目をトロンとさせるレッドドラゴンに、猫かと思い思わず笑ってしまうアレク。

「それならよかった！強者を3人連れてきたから、後で手合わせしてみて」

アレクは、ノックスとオレールとパスクの方を向き直って紹介する。

「森の長様......あの方からただならぬオーラを感じるのですが」

ノックスは、既にやる気満々で、オーラを全開に出している。

「俺は、ノックスだ。模擬戦楽しみにしているからな」

ノックスは、足にバシ～ンと平手打ちをして挨拶をする。レッドドラゴンは、叩かれた衝撃でバランスを崩して尻もちをつく。

「痛いぃぃぃ」

レッドドラゴンが、悲痛な叫びを上げる。どんな威力で叩いたんだと思うアレク。

「師匠、威力の調節をして下さいよ。不意打ちでもレッドドラゴンが痛がるってどういうことですか」

「すまんすまん！挨拶代わりだったんだが、思いのほか強く叩いてしまった」

挨拶が攻撃になるってどんだけだよと思う。

「森の長様......怖いです......」

あれだけ最初は、粋がっていたレッドドラゴンも、挨拶であの一撃を食らい、凄まじいオーラを出すノックスに怯えているのだ。

「よしよし！これでも飲んで元気だして。人化出来るよね？」

アレクは、リラックス効果のある回復薬を取り出して渡す。人化したレッドドラゴンは、何の躊躇いもなく、ゴクゴクと飲む。

「ぷはぁ～森の長様、なんだか元気が出てきました！今ならなんでも出来そうです」

「なら俺と模擬戦......」

「ひぇぇ～森の長様～」

ノックスが大剣を構えると、さっきまでとは打って変わりレッドドラゴンは、怯えてアレクの後ろに隠れるのだった。