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第1章 森の長による開拓

第368話 平穏な一幕と黙っていたら鬼が来た!

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食事を終えて、カリーネとナタリーとヘルミーナとナハスは四人で話すと言うことでヘルミーナの部屋へと消えていった。ちなみに、ノアとカレンは疲れて寝てしまっている。
残されたアレクとヨゼフとセバスはというと、あのことについてアレクが話そうと口を開く。

「この度、また学園を休学することになっちゃいました~」

ちょっと戯けながら言うアレクに、二人は「えっ?」と言葉を発して、内心また何かしでかしたなと思うのだ。

「何をやらかしおったんじゃ?まさか、喧嘩でも......違うか!それくらいならうまく処理するじゃろうしな。何をしたんじゃ?」

大抵のことなら対処してしまうだろうと考えているヨゼフに対してアレクは、そんな風に思われていたのと衝撃を受ける。

「喧嘩はしないよ!もし喧嘩になっても、すぐ制圧しちゃうから!それに、風紀委員だから学校の風紀を守る大事な役割りをしてるんだよ」

アレクは、自分で言いながら、簡単に対処しているなと実感してしまう。

「風紀委員じゃと!頑張っとるんじゃな!父として嬉しい限りじゃのぅ。それで、原因はなんじゃ?」

ヨゼフは、学園生活を謳歌しているアレクを嬉しく思い自然と笑みが溢れる。

「実は......」

課外授業中に、ドラゴンの肉が食べたくなって、レッドドラゴンを倒したら森の長になったことや、陛下と会談をして魔物の街を作ることが決まって、その為休学することになったことを伝える。ヨゼフとセバスは、初めから目を見開き驚いて、最終的には頭を抱えてしまっていた。

「はぁぁぁ......なんということじゃ。予想を遥かに超えとるわい。セバスも、そう思うじゃろ?」

「そうですね。魔物の街とは想像が付きません。ですがそれより、アレク様......レッドドラゴンは美味しかったのですか?」

セバスは、魔物の街に対して驚きはしたが、それよりも、レッドドラゴンを食したことが気になるようなのだ。

「あり得ないくらいの美味さだったよ。ちなみに、少しだけ残ってるんだよね。食べる?」

アレクは、魔法鞄から皮と鱗を剥いだレッドドラゴンの尻尾を取り出す。

「まだあったのですか!これが、レッドドラゴンのお肉なんですね。綺麗ですね」

「まさか、レッドドラゴンの肉を見られる時が来るとはのぅ」

アレクは、セバスに頼んだら軽くドラゴンを狩ってくるのではと思う。しかし、どうやらそういうお願いやセバス自身もドラゴンを狩ったことがないようだ。

「焼いて食べますか?」

「そりゃええのぅ」

「私も是非食べてみたいです」

二人は、ノリノリでアレクの後をついていくのだ。





食事の時間ではないので、キッチンには誰もおらず、アレクが調理の準備をする。課外授業でやったのと同じように焼き肉サイズに切り落として焼いていく。段々といい匂いが辺りに充満していくのだ。

「こりゃ堪らん匂いじゃのぅ」

「そうですね。食べる前から楽しみで仕方ありません」

アレクは、その言葉を聞いて魔法鞄からある物を取り出す。

「エールでも飲んで待っていて」

小分けにされた樽からグラスに注いで、二人に渡す。

「こりゃまた準備がええわい!って冷たい!なんじゃなんじゃ?エールを冷やすとこんなに美味いのか!」

「私も驚きました。エールとはぬるいのが当たり前でしたからね。これは、止まりませんね」

そんな話しをしている二人の前に、アレク特製焼き肉のタレと焼き上がった焼き肉を出す。

「そのタレにつけて食べてみて。おいしいから」

「ホッホッホ!アレクには驚かされてばかりじゃわい!では、早速......ん!こりゃ凄いわい!肉の旨味と脂の甘さが口いっぱいに広がるんじゃ!それに、このタレが更に旨さを引き立てとるわい」

ヨゼフは、堪らんといった顔をしている。

「本当ですね。ミノタウロスやオークとは、別物ですね。口の中が幸せになります。それに、このエールを飲んでみて下さい!格別です」

ドラゴンの焼き肉を食べながら、セバスはエールをゴクゴクと飲み干す。そして、あまりの美味さになんとも言えない顔をする。

「ほ~こりゃええのぅ。冷えたエールとドラゴンの肉とは!昼間から贅沢じゃわい」

ヨゼフもセバスも、大満足といった様子でエールとドラゴンの焼き肉を食べている。すると、後ろから不穏な空気を感じるのだ。

「あ・な・た」

「ア・レ・ク」

「ご主人様ぁぁぁ」

「セバス様ぁぁぁ」

ヨゼフとアレクとセバスが後ろを振り向くと、腕を組んでドス黒いオーラを発した女性陣がいたのである。

「これは......」

アレクは思わず吃ってしまう。

「アレク!酷いわ!私達に声くらいかけてくれてもいいんじゃない?」

「そうですよ!ご主人様!私も食べたいです」

ヘルミーナとナハスは、ドラゴンの焼き肉を食べたかったようで、アレクを責める。

「あなた!セバス!私達のもちゃんとあるのよね?」

カリーネが、ヨゼフとセバスの前で仁王立ちになりながら尋ねる。後ろでは、ナタリーがそうですそうですと言いたげな様子で頷いている。

「ア、アレク?どうなんじゃ?まだあるのかのぅ?」

ヨゼフは、アレクの方をすぐさま見て助けを求める。アレクは、こっちも大変だから助けを求めないでと思うのだが、このままでは収集がつかなくなると思って、すぐに行動する。

「ありますよ。今すぐ焼きますね。ヘルミーナは、駄目だけどエールもすぐ用意するから!ヘルミーナは、果実水を飲んでいてね」

アレクは、大急ぎで残った肉を焼いてエールと果実水を用意するのだった。
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