上 下
226 / 694
第7章 新たな出会いと仲間

第302話 大歓迎を受けるアレク辺境伯!

しおりを挟む
ある屋敷にある執務室へ駆け込む人物がいた。

「メルビン様!よろしいでしょうか?」

「そんな慌ててどうした?ポール、はしたないぞ」

メルビンが、執事のポールに言う。

「メルビン様、申し訳ございません。しかし、タカハシ伯爵様から手紙が届いております」

「タカハシ伯爵様からだって!」

タカハシ伯爵からと聞いて引ったくるように奪い取り手紙を開けて読む。読み進めるうちにメルビンは、真剣な顔から段々と驚き歓喜し始める。

「今すぐタカハシ伯爵様に手紙を書くから届けてくれ」

書かれていた内容は、孤児院出の冒険者と出会い、父親が病気であることを聞いたこと。そして、父親を治すことが出来る可能性があることが記されていたのだ。

「はい!畏まりました」

執事のポールが、笑顔で答える。
しかし、メルビンが何故ここまでアレクに対して好意的であり、手紙が来たことだけでも喜ぶのかというと、以前のスタンピードで領地を救ってもらったからなのだ。だが、父親が病気であること、王都までの距離が遠いことから一度もお礼に行くことが出来ずにいたのであった。





それから数日が経ち、アレクの下に手紙の返事が届き、是非お会いしたいという内容を受け取ったのだ。それを読んだアレクは、夜明けの雫に誰が治したか言わないことを記した誓約書を結ばせた。

「リッド、準備はいい?」

「はい!大丈夫です」

メルビンに会いに行く為に転移で向かおうとしているのだが、リッドがどうしても行きたいと行ったので、これも貴族になる上でいい経験になるだろうと連れて行くことにしたのだ。

「じゃあ、行くよ。転移」

王都の屋敷の庭から転移し、一瞬にして目的地に着くのだった。目的地の場所は、ハーライルという領地であり、前領主であるオドヘート・フォン・ペッカラ子爵が栄えさせた領地なのである。

「え?もう着いてる...」

リッドが、目を開けると見慣れた門があったのだ。当然、行き交う人はいきなり姿を現したアレク達に驚くのである。

「転移だから当然だよ。それより、早く領内に入ろう。オドヘートさんを救わないとね」

「は、はい!」

アレクが、先に向かおうと歩き出した後をリッドが追うのだった。
そして、門の前に着き、門番に貴族証を出して見せるアレク。門番は、その貴族証を見て大慌てするのだ。

「え、英雄タカハシ伯爵...いや辺境伯様でしたか!ペッカラ子爵様からお話は伺っております。すぐに知らせて参りますので、暫くお待ち下さい」

そう言うと、門番の一人が走り出して、屋敷へとアレクが来たことを知らせに行くのだった。暫く待っていると少し豪華な馬車がやってくるのだ。そして、アレクとリッドの前で止まり、中から30代前半くらいの優男風の男性が下りてくる。

「タカハシ辺境伯様、初めまして現領主のメルビン・フォン・ペッカラと申します。お会いできて嬉しく思います」

門番からタカハシ伯爵ではなく、辺境伯だと言うことを聞いたメルビンは伯爵とは言わず辺境伯と口にする。そして、やっと会えたことに歓喜するのだ。

「初めまして、アレク・フォン・タカハシと申します。こちらこそお会いできて嬉しく思います。にしても、わざわざ来られるとは思いもしませんでした」

領主自ら迎えに来るとは思わず驚くのだ。

「タカハシ辺境伯様、私のような者に畏まった言葉はお辞めください。それから、タカハシ辺境伯様がお越しになられるにも関わらず屋敷にいるわけにはいけませんので。さぁ、馬車にお乗りください。屋敷に向かいましょう」

「ならお言葉に甘えて普通に話すね。そうだね。乗せてもらおうかな。リッドも行くよ」

「はい!アレク様」

それから、馬車の中では他愛のない話とリッドの紹介を済ませながら屋敷へと向かうのだった。そして、屋敷に着くと使用人一同による盛大なお出迎えを受けるのである。

「旦那様、お帰りなさいませ!そして、タカハシ伯爵様、ようこそお越し下さいました」

どうやら慌てて出てきたメルビンは、使用人へは辺境伯であることを告げていなかったようである。

「タカハシ辺境伯様、申し訳ございません。辺境伯に陞爵されたことを伝えておりませんでした...」

「構わないよ。まだ正式に通達があったわけではないからね。それより、こんな歓迎されるとむず痒くなっちゃうよ」

アレクは笑いながら頬を掻くのだった。

「タカハシ辺境伯様が、お越し頂いたのです。これでも足りないくらいです。さぁ、こちらにお越し下さい」

そう言うとメルビンは、応接室に案内するのだ。その間、リッドはアレクに対する歓迎に圧倒されるのである。その様子を見ていたアレクは、これから貴族になるならいい勉強になるだろうと黙って見ているのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]病弱を言い訳に使う妹

みちこ
恋愛
病弱を言い訳にしてワガママ放題な妹にもう我慢出来ません 今日こそはざまぁしてみせます

とじこめラビリンス

トキワオレンジ
児童書・童話
【東宝×アルファポリス第10回絵本・児童書大賞 優秀賞受賞】 太郎、麻衣子、章純、希未の仲良し4人組。 いつものように公園で遊んでいたら、飼い犬のロロが逃げてしまった。 ロロが迷い込んだのは、使われなくなった古い美術館の建物。ロロを追って、半開きの搬入口から侵入したら、シャッターが締まり閉じ込められてしまった。 ここから外に出るためには、ゲームをクリアしなければならない――

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されたやり直し令嬢は立派な魔女を目指します!

古森きり
ファンタジー
幼くして隣国に嫁いだ侯爵令嬢、ディーヴィア・ルージェー。 24時間片時も一人きりにならない隣国の王家文化に疲れ果て、その挙句に「王家の財産を私情で使い果たした」と濡れ衣を賭けられ処刑されてしまった。 しかし処刑の直後、ディーヴィアにやり直す機会を与えるという魔女の声。 目を開けると隣国に嫁ぐ五年前――7歳の頃の姿に若返っていた。 あんな生活二度と嫌! 私は立派な魔女になります! カクヨム、小説家になろう、アルファポリス、ベリカフェに掲載しています。

〖完結〗二度目は決してあなたとは結婚しません。

藍川みいな
恋愛
15歳の時に結婚を申し込まれ、サミュエルと結婚したロディア。 ある日、サミュエルが見ず知らずの女とキスをしているところを見てしまう。 愛していた夫の口から、妻など愛してはいないと言われ、ロディアは離婚を決意する。 だが、夫はロディアを愛しているから離婚はしないとロディアに泣きつく。 その光景を見ていた愛人は、ロディアを殺してしまう...。 目を覚ましたロディアは、15歳の時に戻っていた。 毎日0時更新 全12話です。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと
恋愛
21.05.23完結 ーー 「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」 差し伸べられた手をするりとかわす。 これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。 決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。 彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。 だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。 地位も名誉も権力も。 武力も知力も財力も。 全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。 月並みに好きな自分が、ただただみっともない。 けれど、それでも。 一緒にいられるならば。 婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。 それだけで良かった。 少なくとも、その時は。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。