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第7章 新たな出会いと仲間

第291話 情けをかけるアレクと逃げる冒険者!

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決闘開始の合図と共にジャロが動き出す!さすがA級に近いB級といったところで、スピードもあり、隙も少ない感じである。

「オラァァァァ死ねぇぇぇ」

だが、バカはバカである。大声を出して襲いかかってきて感情的になっているのである。

「そんな攻撃じゃ死なないよ」

アレクは、おやっさんから貰った服型の防具を着ているので、片腕で受け止める。しかも、受け止めた拍子に相手の剣は見事に折れたのだ。

「あ?えっ?」

折れたことに驚きと有り得ないといった表情になるジャロ。

「これは受け止めきれますか?」

身体強化と武功を使って肉体を強化して、驚いているジャロの脇腹目掛けて蹴りを入れたのだ。ジャロは、咄嗟に腕でガードするが、吹き飛ばされてしまう。それにしても、本気ではないにしろ咄嗟にガードされたことにアレクは少し驚くのだった。

「くそ!いてぇ~」

ジャロは、すぐに起き上がるも折れた右腕の痛みで顔を歪ませる。

「ちょっ、おい!どうなってるだ?あのジャロが圧倒されてるぞ」

観客がざわつき始める。

「あの子に勝ってほしいとは思ったが、これ程とは...剣を折ったことに驚いたよ」

「坊主、スゲェーぞ。もっとやれ~」

観客席は、驚く人と騒ぐ人の2つに分かれる。

「ジャロは、大丈夫かしら?」

「まずいかもね。喧嘩を売る相手を間違えたかな」

「まさかミスリルと鉄の混合剣を折るなんて思わないわよ」

ジャロの仲間も口々に驚きの声を上げてジャロが負けるのではと思い始める。

「再生」

ジャロが、そう言うと腕の傷と体に負ったダメージを回復させる。どうやらジャロのスキルは再生のようである。だが、完全なる再生には時間がかかるようだ。

「さっきは油断したが、次はねぇ~よ!炎牢獄フレイムプリズン

アレクに向けてそう叫ぶと、アレクの周りに炎の檻が出来てアレクは閉じ込められる。

「次こそ、終わりだぁぁぁあ!超炎槍ハイパーフレイムランス

実力自体はあるようで、無詠唱で魔法を放つジャロ。しかも、炎槍フレイムランスより威力の高い魔法を放ってくるのだ。
そして、アレクへと直撃する。

「はぁはぁはぁ...クソが!ざまぁ見やがれ」

魔力をほとんど使い果たしたジャロは、息を切らせながらアレクに勝ったと思い込んでいるようだ。

「ジャロ、本気出し過ぎよ...」

「これで決着がついたとは思うけど、死体を見るのが嫌だな...」

ジャロの仲間が、その光景を見て話し始める。

「え?」

「嘘だろ?」

しかし、次の瞬間燃え盛る炎は一瞬にして消え去り、元気そうなアレクが姿を現す。ジャロの仲間は、それを見て驚くのであった。

「これで終わりなら、時間が勿体ないので終わらせますね。火牢獄ファイアプリズン

ジャロの真似をして火で炎と同等威力の檻を作ったのだ。

「このままだと殺してしまいますが、構いませんか?出来れば降参してほしいのですが」

「はぁはぁはぁ、クソ!お前はなんなんだぁぁぁぁ!チクショ~」

ジャロは、全く歯が立たないアレクに対してこんなはずではなかったと言いたげな顔をする。アレクの降参を促す声も一切届いていないようだ。

「はぁぁ、もういいです。水弾ウォーターバレット

水の弾丸がジャロ目掛けて放たれる。火牢獄ファイアプリズンを貫通して見事にジャロへと直撃するのだ。ジャロは、そのまま後ろに倒れてピクリとも動かなくなったのである。

「殺してはいませんから安心してください。ですが、重症に変わりないので早く治療することをおすすめします」

そう言って火牢獄ファイアプリズンを消すのであった。受付嬢は、すぐにジャロのもとへ向かい続行可能かを確認する。

「決闘の勝者は、アレクくん」

受付嬢が、そう宣言すると、観客席は「わぁぁぁ」と盛り上がるのだった。

「ジャロさんを運んで下さい。あとポーションもお願いします」

事前にギルド職員を数名呼んでいたのだろう。ギルド職員達が、ジャロを担ぎ上げて運んで行く。

「アレクくん、勝利おめでとうございます。決闘前に交わされたジャロさんの剥奪の件はこちらでしっかり処理をしておきます」

受付嬢は、慣れたように淡々と話を進める。

「あ!はい!よろしくお願いします。あと、これから討伐依頼を受けに行きたいので受理してくれますか?」

「はい!では、すぐに上に参りましょう。手続きを致します」

そう言ってアレクと受付嬢は、上の階に戻ろうとする。その時、ジャロの仲間が話しかけてくるのだった。

「ちょっと待ってくれないか?殺さなかったことには感謝する。あと出来れば冒険者証剥奪の件をなかったことにしてくれないだろうか?」

アレクは、この時なんて自分勝手なんだと思ってしまう。喧嘩を売ってきたのは、そっちではないかと。

「無理ですよ。そうだ!剥奪か不敬罪かどちらがいいですか?これでも一応貴族ですから」

アレクは、面倒なのでさっさと終わらせる為に貴族を名乗るのだった。

「お貴族様!」

「貴族...」

「ちなみに、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

ジャロの仲間が驚く中、受付嬢が名前を聞いてくる。

「アレク・フォン・タカハシです」

「伯爵様でありましたか!今までのご無礼の数々申し訳ございませんでした」

受付嬢は、何故かアレクが伯爵であることを知っていたのだ。あと、僕と言ったり適当な言葉遣いをしたことを反省しているようだ。アレクは、辺境伯になっているが、一々指摘する気もないので、そのままにしている。

「知らなかったのですから謝らないで下さい。それより、剥奪の件は許す気はないのでお引取り下さい。あと二度と絡んで来ないで下さいね」

ギルドに来るごとに絡まれるのは、懲り懲りなので念を押して言う。

「は、はい~申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁ」

ジャロの仲間達は、貴族と聞いて逃げるように去っていくのであった。

「はぁぁ、これで少しは落ち着くかな。すいませんが、手続きをお願いします」

「そうでしたね。すぐに手続きを致しますので、受付までお越し下さい」

やっとアレクは、久々の冒険者活動ができるようになったのである。
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