上 下
161 / 730
第6章 帝国の侵略

第276話 救出と真実と卑劣な皇帝!

しおりを挟む
ルーヘン達は、ネックレスに示された部屋へと入る。部屋を歩き回ると一箇所だけ濃い赤に光る場所があったのだ。

「ここを引っ剥がすよ」

三人で、赤く示された床を剥がしていく。すると、一箇所だけ床の下に金属で補強された場所があったのだ。

「任せて下さい。巨大な腕」

部下の一人がスキルを発動して腕を巨大化し、金属の床を難なく引っ剥がすのだった。

「ありがとう。でも、服と鎧の一部がボロボロだよ。今はいいけど騎士団の鎧を着ている時はやめてね。経費がかさむからさ」

こんな時でも笑いながら冗談を言うルーヘン。

「あはは...すみません。気をつけます」

頭を掻きながら苦笑いをして謝る騎士団の部下。

「よし、入ろう」

そう言って、下へと続く階段を下りていく三人であった。
地下へと繋ぐ階段は石壁で囲まれており、一番下へ着くと木のドアがあった。ルーヘンは、施錠されている鍵を壊してドアを開ける。

「あぁ、面倒なのが一人いるね。兵士二人は任せたよ。あの厄介そうなのは俺が相手するから」

「わかりました」

ドアを開けると、兵士二人と全身真っ黒な服装の敵がいた。ルーヘンは、一瞬にしてこの敵が、かなり強いと察する。

「あの~そこにいるマルティル辺境伯様は、王国の貴族なので解放してくれないかな?」

「断ると言ったら?」

「戦うしかないね。でも、帝国軍は壊滅して切り札のデストロイも拘束されたけど続けるかい?」

それを聞いた帝国軍兵士二人は、驚きの声を出すが、黒装束の敵は狼狽えることはなかった。

「そうか...その表情からして事実なのだろう。そうだな...取引きといかないか?引き渡す代わりに俺のことは見逃してくれないか?」

なんと取引きを持ち出してきたのだ。
ルーヘンは、暫く考えたあと返事をする。

「いいよ。その代わり本物じゃなかったら一生追い続けるけどいい?」

ジキタリスから変身のスキルか魔道具を使うから気をつけるように言われていたのだ。

「そこまでわかっているのか!ここにいるのは本物だが、いいことを教えてやる」

黒装束の男は、色々語りだした。1つ目は、何ヶ月もマルティル辺境伯は幽閉されており、裏切っていたのは、変身した帝国の人間だということ。2つ目は、マルティル辺境伯に変身した人物が、デストロイの強さと帝国の恐ろしさを語り裏切った王国の貴族を扇動していたこと。3つ目は、今回の侵攻に負けた場合、マルティル辺境伯と家族を人質に王国と交渉をしようとしていたこと。この三つを暴露してくれたのだ。

「どうだ?貴重な情報だろ?あと家族は、帝国にいるらしいな。失敗しても奴隷にするかおもちゃにできると皇帝は考えたらしいぞ」

それを聞いたルーヘンは、なんと卑劣なやつなんだと思うと同時に今回の裏切りは仕組まれた罠だったと知るのだった。

「俺は有り難いけど、そんな情報を軽々しく語ってよかったのかい?」

「構わない。俺は他国に逃げるだけだからな。それに、部下が戻ってこないところをみると捕まったか殺されたかだろう。俺は、早く逃げるだけだ」

部下とは、暗殺部隊のルーヘン達によって殺されたやつらのことである。そして、この黒装束の男はリーダーなのだろう。

「あとは、好きにしていいよ。目撃者は俺達しかいないからね」

いつの間にか、帝国の兵士二人はルーヘンの部下二人によって殺されていたのだ。

「じゃあ、そうさせてもらおう。これが、牢の鍵だ。あとは、ご自由に...もう会うことはないだろう」

そう言った暗殺部隊のリーダーは、スッと消えるのだった。

「ふぅ~戦いにならなくてよかったよ。壁をすり抜けたのか?姿を消したのか?知らないけど、そんなスキルを使われたら勝てないからね」

周りは石壁に囲まれているにも関わらず、一瞬にして姿を消した暗殺部隊のリーダーと戦闘にならなくてよかったと思うルーヘンであった。
それからルーヘンは、貰った鍵で牢を開けて中にいるマルティル辺境伯に声をかける。

「マルティル辺境伯様、ご無事ですか?第3騎士団団長のルーヘンです」

「ルー...ヘン...団長...俺は助か...たのか?家族は...無事か?」

マルティル辺境伯は、やせ細りしゃがれた声でたどたどしく話し始める。

「家族については後程!今は貴方様を連れ出します」

そう言って、部下にマルティル辺境伯を背負わせて来た道を戻って屋敷に戻るのだった。

「これは面倒なことになったね...君は、ここで待っててよ。俺が行くからさ」

屋敷を出ようとすると帝国兵士の団体さんがこっちに向かってやってきたのだ。この危機を抜け出す為にルーヘン自ら動くのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。

ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」  そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。  長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。  アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。  しかしアリーチェが18歳の時。  アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。  それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。  父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。  そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。  そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。  ──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──  アリーチェは行動を起こした。  もうあなたたちに情はない。   ───── ◇これは『ざまぁ』の話です。 ◇テンプレ [妹贔屓母] ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。