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第6章 帝国の侵略

第263話 暗殺者vsセバス!人の心ほど弱いものはない

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セバスが、連れてきた馬に屋形を繋げて馬車にし、若い門番が御者となり王城へ向かっている。門を抜ける際に、こんな夜更けに領主様が出て行くということで怪しまれたが、そこはキンベルがうまく説明して通ることが出来たのである。

「・・・・・・」

街を抜けて街道を進んでいても、キンベルは沈黙し続けている。沈黙したまま、下を向きある一点を見つめているのだ。

それから、暫く時間が過ぎた時、キンベル子爵が重い口を開く。

「もし、家族や身近な者が死ぬとしたら君ならどうするかね?」

「命に変えても、元凶を排除しますね。それにしても、今回の帝国との取り引きの裏には、色々ありそうですね」

「そうか!排除するか...だが、じきにわかるだろう。帝国の恐ろしさが...」

それ以降また沈黙を続けるキンベル子爵であった。それから、暫く街道を進む。すると、爆発音が聞こえて馬車が少し揺れるのだ。
セバスは、何事かと警戒しながら外に出る。そこには、真っ黒い服に見を包んだ人物が立っていたのだ。

「結界か...厄介なものを...」

暗殺者は、馬車に放った攻撃のあとを見て呟く。何故そう呟いたかというと、魔ノ国から購入した結界魔道具を展開していたので、馬車や馬などには被害がなかったのだ。

「いきなりですね。貴方は誰でしょうか?」

セバスが、馬車から降りて、暗殺者に尋ねるが、一瞬で姿を消してセバスの目の前にやってくる。

「知る必要はない」

暗殺者は、セバスの頸動脈目掛けて斬りつけてきたのだ。しかし、セバスはいとも簡単に躱して殴り飛ばすのであった。殴られた暗殺者は、吹き飛ばされる最中、空中で回転し威力を減衰させて着地する。

「チッ!屋敷から見ていたが、面倒な野郎だ」

本来であれば、屋敷でキンベル子爵を殺す予定だったのだが、セバスの大立ち回りの所為でなかなか機会がなく、やっと人気のない街道に辿り着いたので暗殺を決行したのである。

「引いて頂くことは出来ませんか?私も無駄な争いは好みませんので」

「はぁぁ、こっちも任務があるんだ。それに、ここで逃したら殺されちまうからな。始末させてもらう。フォグ

あたり一面に濃い霧が立ち込めて視界が0になる。暗殺者のスキルでだろう。

「グハァッ...」

霧から突如現れたら暗殺者にセバスは、反応が遅れて腹に剣を刺されてしまうのだ。そして、暗殺者はまた霧の中に消える。

「グハァッ」

またしても肩を刺され、その方向を殴り飛ばすが、暗殺者は姿を消す。その後も、弄ばれるようにセバスは何も出来ず斬られていくのだ。

「はぁはぁはぁはぁ...そろそろ見えて来ましたが、ですが、思ったより傷が深いですね」

セバスの服は真っ赤に染まっており、立っているのがおかしいくらいである。

「その胆力に敬意を評して一撃で殺してやる」

暗殺者は、セバスの後ろから心臓目掛けて刺されてきたのである。

黒放電ブラックスパーク

疾風迅雷改ニューライトニングストームの素早さで攻撃を躱して、暗殺者の首を掴み、黒放電ブラックスパークを放ったのだ。黒放電之宴ブラックスパークフェスティバルとの違いは、手から黒い雷を放つ単一魔法なのだ。しかも、威力を濃縮している分、相手に当たった場合、即死は免れないのである。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ」

真っ黒な雷が暗殺者の体を突き抜け、丸焦げにするのであった。

「このような者が送り込まれているとは、オレールさん達は大丈夫でしょうかね。グハァッ。おっと...まずは自分の心配をしなくてはいけませんね」

アレクから貰っていたハイポーションを飲んで傷を癒やす。

「大丈夫ですか?」

隠れて一部始終を見ていた門番が、心配で走って駆け寄る。

「危なかったですが、なんとか倒しましたよ。服を着替えたら先を進みましょう」

「いやいやいや!とりあえず、ここで少し休みましょうよ。見ているだけでも疲れましたよ」

本来であれば、まだ刺客がいると考えて早く移動するのがセオリーなのだが、キンベル子爵もメイドも門番も疲労している様子なので仕方なく休憩を取ることにした。

「そうですね。少し休憩にしましょう。私は、着替えたらこの者の手がかりを探りますので」

そう言うと、セバスはいつもの執事服に着替える。そして、暗殺者の服に手を入れて漁り始めるのだった。

「助けてもらい感謝する。だが、あのような輩が蔓延る帝国の恐ろしさがわかっただろう?」

「あの程度であれば、どうにか出来るでしょう。キンベル子爵、こうなる前に陛下に助けを求めるべきだったのですよ。そうすれば、助力頂けたはずです」

この程度であれば、アレクやノックスやパスクならば何人来ようとも瞬殺できるだろうと思うセバスであった。

「くっ!そんなことはわかっている。だが、強大な帝国に敵うはずがない!」

苦虫を噛み潰したような顔で大声を出す。

「だからと言って国を支える者が国を売るのは間違っていますよ。家族が大事なのはわかりますが、屈してはいけません」

「クソっ!」

そう言ってキンベル子爵は、馬車の方に戻るのだった。

「心ではわかっていても難しいものですね。二度とこのようなことが起きないよう帝国が攻めてきたら徹底的に潰さなくては...」

キンベル子爵の気持ちもわかるセバスは、二度と同じ悲劇が起きないようにしなくてはと固く誓うのであった。
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