チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
上 下
138 / 807
第5章 大和ノ国へ出発

第253話 大和ノ国の朝市!まさかあの鍋が食えるのか!?

しおりを挟む
老永は、別館で温泉旅館も経営しているらしく、アレク達は懐石料理を楽しんだ後、泊まることにしたのだ。

「マンテ爺、もう寝ちゃったみたいだよ」

真ん丸の月を眺めていたマンテ爺は、いつもの間にかコテンと寝転がって寝てしまったのである。

「1日で色々あったから疲れちゃったのよ。ふわぁぁ...私も疲れたわ」

そう言うヘルミーナも、大きなあくびをしている。どうやら疲れたようだ。

「そろそろ寝ようか?明日は、朝からパスクと出かけてくるからゆっくり寝ててね」

「朝市に行くって言ってたわね。私が、マンテ爺を見ておくから楽しんできて」

「ありがとう。最終日は、ちゃんとヘルミーナの為に時間を空けているから安心して」

そう言うとヘルミーナは、抱きついてきてアレクにキスをしてきたのであった。

「あなた、大好き」

「俺も愛してるよ」

そう言って二人は仲良く寝るのであった。





あれから、5時間くらいが経ち、アレクはヘルミーナとマンテ爺を起こさないように旅館のロビーへと向かう。すると、ロビーではパスクがすでに待っていたのだ。

「おはようございます。アレク様」

「パスク、おはよう。早いね」

「楽しみにしていましたから。まだまだ未知の魚や貝に出会えると思うとワクワクして寝れませんでした」

寝ないで朝を迎えるくらい海鮮に魅了されてしまったのかと思うアレク。

「確かに、海の幸はおいしいからね。それに、王国では出回っていない物が多いもん」

そんな話をしながら、老永のロビーから外に出ると、まだ外は暗くひんやりした空気が流れていた。だが、そのなんとも言えないひんやりした空気が好きなアレク。

「朝はやはり冷え込みますね」

「そうだね。でもこの感じ嫌いではないんだ。普段あまり感じられない所為なのか分からないけど。あ!これを飲むと温かくなるよ」

アレクは、ポーションの瓶に入ったある物を取り出す。パスクは、いつも通りなんの躊躇もせず、ゴクゴクと飲むのであった。

「うわぁ!飲んだ瞬間からポカポカします。なんですか?これ」

「体ほっこりポカポカくんて名前の薬だって。副作用はないらしいよ」

またしても異界の人間が開発したネーミングセンスの欠片もない薬である。しかし、効果は絶大なのだ。

「副作用がないのはありがたいですね。アレク様が出される薬は効果は抜群ですが、副作用が怖いので...全身バキバキになったり...足が痒くなったり...と」

パスクは、あの時の苦しみを思い出して顔を青くするのであった。

「あはは...いやごめん...」

空笑いを浮かべながら申し訳無さそうにするアレク。

「出来れば、もう少しお優しい副作用にして頂けると嬉しいのですが...」

「副作用は、俺が決めているわけではないからね。まぁ、危機的状況以外は、なるべく副作用のない薬を作るようにするよ」

「何卒よろしくお願い致します」

そこまで言う程、嫌だったのかと改めてわかったアレクは、申し訳ないことをしたなと反省するのであった。

そんな話をしていると、朝市の広場に着いたようで、活気ある声が響いていた。魚介類だけではなく、新鮮な野菜なども売られているみたいだ。

「凄い活気だね」

「そうですね。こんなに人が集まっているとは思いませんでした」

外が少し明るくなって来たくらいの時間にも関わらず、朝市は大盛況なのである。

「あと国によって朝市がこんなに違うとは驚いたよ。まずは、パスクのお目当ての食材を買いに行こう」

「はい!」

それから、少し歩いていると魚介類を売っている場所があった。

「お兄さん達、新鮮な魚や貝はいかがかね?」

おじいさんと40歳くらいの女性がこちらに気づいて話しかけてきたのだ。

「見せてもらいますね。へぇ~アジや鯛やヒラメなんかもあるんですね」

そこに並んでいたのは、日本で見た魚ばかりであり、魚の目の色からして新鮮だろうと窺わせるものばかりであった。

「坊っちゃんは、詳しいねぇ~!カレイとサバなんてどうだい?滅多にない大きさだよ」

日本でも滅多に見ない大きさのカレイとサバであり、確かにおすすめしてくる理由がわかる程であった。

「パスク、カレイは煮付け、サバは塩焼きにしてもおいしいけど買ってみる?」

「はい!是非食べてみたいです」

「じゃあ、カレイとサバとアジを貰えますか?」

「あいよ!毎度あり。他にほしいものはあるかい?」

あっさり売れたことに上機嫌なおばちゃんである。

「これってフグですよね?捌くことができるんですか?」

日本では、免許が必須な魚であるフグが普通に売られていて思わず尋ねたのだ。

「うちの爺ちゃんが捌けるから安心しとくれ!よかったら買ってかい?」

まだ買うと言っていないにも関わらずおじいさんは、My包丁を手に取り重い腰を上げているのだ。

「じゃあ、お願いします」

「爺ちゃん、フグ頼んだよ」

「うむ。少し待っとくれ!すぐ捌いてやるからのぅ」

おじいさんは、待ってましたと言わんばかりに、先程とは打って変わりキビキビした動きで準備を始める。
そして、おじいさんがフグを捌き始めたのだが、魅入ってしまうほどに洗礼された動きかつ華麗な包丁捌きなのだ。

「これは...凄い...」

「本当ですね。素人目からしても、凄い技術ですよ」

二人が、魅入っているとあっという間にフグが捌き終わり、てっさとてっちりと白子に分けられていたのだ。

「白子は、タダでいいわい」

おじいさんは、ポツリと呟く。まさか、こんな大きな白子をサービスしてくれると思っていなかったアレクは驚く。

「流石に、この大きさの白子をタダとは...いや、ありがたく頂きます。その代わりに、貝や他の魚も買っていきます。おすすめがあったら教えて下さい」

そう言うとムスッとしていたおじいさんの口角が少し上がって、また椅子に座るのだった。

「毎度あり」

アレクは、おじいさんの優しさを断らなくて正解だったなと思うのと、ある程度の食材をここで買い揃えようと思うのだった。
しおりを挟む
感想 2,181

あなたにおすすめの小説

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。