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第5章 大和ノ国へ出発

第252話 懐石料理と今後の予定を考える!

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部屋へ案内されて、女将さんが襖を閉めて出て行く。
部屋は、畳で座椅子とテーブルが置かれており、部屋の隅には掛け軸と壺が置かれている。本当に日本の料亭を思わせる造りである。

「見たことない造りの部屋ですが、なんだが落ち着きますね」

パスクが、キョロキョロ部屋の中を見ながら言う。

「本当ね。でも何故かしら?」

ヘルミーナも、落ち着く雰囲気を味わっているが、理由が見当たらないようだ。

「よくわからんが、眠くなってくるのぅ」

マンテ爺は、畳の上で寝そべりながら今にも寝落ちしそうになっている。

「前世の料亭...高級料理屋のままだよ。この素朴な感じと畳の匂いが落ち着くんだろうね」

アレクも、マンテ爺と同じように畳に寝そべって久々に畳の匂いを味わうのだった。
そうやって各々寛いでいると、襖が開いて仲居さんが入ってくる。

「お待たせ致しました。失礼致します」

仲居さんが、どんどん料理を運んでくるのだ。

「これは、懐石料理ですか?」

「よくご存知ですね。初代天皇様が考案された料理なのです。是非、その味を味わって頂けたらなと思います」

「そうさせて頂きます」

アレク自身、一度も味わったことのない懐石料理に胸が踊るのだった。

「では、ごゆっくりお楽しみ下さいませ」

そう言って仲居さんが、部屋から出ていく。

「これは、何から食べたらいいんだ?」

「わかりません。確か、作法があったような気がしますが、俺も初めてなんですよ。まぁ、わからないですし、好きな物から食べましょ」

「それもそうだな。作法なんか考えちゃ飯がまずくなる」

ノックスは、ガハハハと大笑いをして適当に食べ始めたのだ。しかし、箸とフォークとスプーンを全て用意してくれるとは気が利くなと思うのだった。

「あ!でも、その刺身...生魚は、醤油とわさびにつけて白米と一緒に食べて下さい。凄いおいしいですから」

「アレク坊が、そう言うなら...うまい!口の中でとろける魚とは驚いたぞ。それに、この白米もうまいな」

アレクは、生だと敬遠されるかと思ったのだが、ノックスはなんの躊躇もなく食べたのだ。

「アレク様、生と聞いて躊躇しましたが、食べるとおいしいですね。白米も噛めば噛むほど甘いです」

「本当ね。あなたと出会わなければ生で魚を食べる機会なんてなかったと思うわ」

「ワシも、生の方がええのぅ。川魚より濃厚なうまさと甘みがあってええわい。更に欲を言えば恐怖があれば最高じゃがな」

え?マンテ爺って味もしっかりわかるの?と初めて知ったアレクは驚くのだった。もしかしたら、一番の美食家かもしれないと。

「このすまし汁もおいしいですよ」

はもの入ったすまし汁にほっこりするアレク。

「あら?本当においしいわ。薄味かなと思ったけど、しっかり味があって優しい感じね」

鱧から出た旨味と出汁を味わいながら、ヘルミーナもほっこりするのだった。

「俺は、こいつが気に入った!まさか酒とな」

「それは、さっき食べた米から出来たお酒ですね。種類も色々ありますから、帰りに酒屋があれば行きますか?」

「おっ!違う種類もあるのか?絶対に行きたいぞ」

ノックスは、どうやら日本酒が気に入ったようだ。つまみ感覚で味わえる懐石料理があれば、日本酒も進むよなと思うアレクであった。

「私は、これが気に入りました。バターの風味と醤油の香ばしさとこの貝の味がなんとも言えません。それに、この日本酒が合うんですよ」

パスクは、あわびのバター醤油焼きをいたく気に入り虜になってしまったようだ。

「おいしいよね。生で食べてもおいしいよ。コリコリしていて独特の食感なんだよ」

「アレク様、是非食べたいので購入できる場所に行きましょう」

「わかったよ。前世と同じなら朝一番に漁港か市場が出るから聞いてみよう」

「是非お願いします」

パスクは、本当に気に入ったのだろう。目を輝かせて見てくるのであった。

「あなた、私と二人っきりの時間も作ってね」

ヘルミーナが、寄りかかってきて耳元で話しかけてくるのだった。

「大丈夫だよ。別行動を考えているから。デートしよう」

「フフッ、ちゃんと考えてくれていたのね。ありがとう」

デートと聞いてヘルミーナは、一気に上機嫌になる。
アレクは、充実した旅行になりそうだけど、行くところがいっぱい出来たので、計画を練り直さないとなと考えるのであった。
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