上 下
128 / 761
第5章 大和ノ国へ出発

第243話 陛下からアレクに悲しいお知らせとジンの鱗の加工が始まる!

しおりを挟む
「戦争に備えて大量のポーションを作っては貰えぬか?」

てっきり帝国に行けと言われると思っていたアレクは、少し拍子抜けするが、あの復興時に作った地獄の日々を思い出してガクッと項垂れるのであった。

「陛下、失礼を承知でお伝えします。またですか...結構しんどいのですよ」

陛下に対して、絶対に口にしてはいけないことだが、あのひたすら続くポーション作製の苦しみを思い出すと自然と出てしまったのだ。

「すまぬなアレク...だが、王国の為なのだ。前回の倍の依頼料を払う。だから頼めないか?」

金ではないんだけどなと思うアレクだったが、この国は好きだし、死んでいく兵士も見たくないと思うのであった。

「わかりました。期限はいつまでですか?近々、大和ノ国にも行こうと思っていまして」

もう日本食がどうしても食べたいんだよと思うアレクは、絶対に大和ノ国に行くと決意しているのだ。

「早ければ早い程助かるが、大和ノ国へ行くのであるか?」

早ければ早いっていつまでだよと思うが、敢えて口にはしない。とりあえず馬車馬のように働けと言われていることは伝わったので、頑張ろうと思うのであった。

「わかりました。今日から作り始めてなるべく早く納品します。納品先は、王城で構いませんか?」

「王城で大丈夫だ。門番には、アレクをいつでも通すように伝えておく。それよりも大和ノ国の話だ。何をしにいくのだ?」

ただの趣味と日本食を求めてなんだけどなと思いながらも、それを口にすることは出来ず、どうしたものかと思うアレク。

「他の国も見てみたいなと、それに聞く話では珍しい様式や服装やらと楽しめそうなので、ヘルミーナを連れて新婚旅行がてら行けたらと思いまして」

ヘルミーナと新婚旅行に行くのは決めていたので、決して嘘をついたわけではないのだ。

「新婚旅行とはなんなのだ?」

アレクは、新婚旅行すらないのかと驚く。確かに、結婚して旅行をする貴族や平民を見たことがないなと思うのだった。

「言葉の通り結婚した夫婦が旅行をすることですよ。護衛としてノックス達を連れて行くので、二人っきりで仲良くとは行きませんが、楽しんでこようかなと」

地球より危ないこの世界では何があるかわからないので、護衛は必須なのである。

「新婚旅行良いではないか!余も久々に夫婦水入らずと...」

「陛下、お言葉ですが、今そのような余裕はございません。国の一大事なのですから」

ウズベル王も、旅行に行くぞと決心したのだが、見事に計画は崩れ去るのであった。

「アントン、余も休暇がほしいぞ!」

「休暇がほしいなら現状が片付いてからにして下さい。私も休暇を頂きますので」

「はぁ~わかったのである。早く安寧の時を迎えられるように努力せねばな」

帝国に対して放っておいてくれないかと思いながらも、未来の王国の為にも動き続けなければいけないなと考えるのであった。

「では、そろそろ帰りたいのですが、よろしいですか?」

ヘルミーナを待たせていることもあるが、王都に来たら寄りたい場所もあったのだ。

「お、おう。そうであるな。新婚である二人を邪魔してすまなかった。帰ってよいぞ。ポーションは、すまぬが頼んだぞ」

「はい!わかりました」

アレクは、そう言ってその場から転移するのだった。

「転移便利だな。余も練習してみようかな?」

「陛下、無理ですので諦めて下さい」

「な、なにを言っておる!余にも才が...」

「ないですから仕事して下さい」

ズバッと切るアントンに陛下は、悲しい顔をして拗ねたように執務室に向かうのだった。これが普段のアントンとウズベル王との日常なのである。





「おやっさんいる~?」

・・・・・

「おやっさ~ん?」

ドタドタドタと奥から走ってくる音が聞こえる。

「なんじゃ!うるさい...って坊主じゃったか。なんのようじゃ?」

変わらないおやっさんにホッとしながら、アレクはジンからもらった鱗を取り出しておやっさんに見せる。

「これを加工して防具を作ってくれませんか?」

おやっさんは、鱗を見るなり目を輝かせる。

「なんじゃなんじゃ。凄いものを持ち込んできよってからに。腕が鳴るわい」

「おやっさん!なるべく早く仕上げて貰えませんか?」

アレクは、帝国の進攻を視野に入れて早く手に入れておいて損はないと思いながらお願いをする。

「うむ。何かあるんじゃな?任せるんじゃ。出来るだけ早く最高の防具に仕上げてやるわい。早速ワシは奥に籠もるのでな。3週間後に取りに来るんじゃぞ」

おやっさんの腕を持ってしても3週間かかるのかと思うアレク。実際、3週間で仕上げられるいや...硬すぎて加工すら困難なのである。3週間とは、おやっさんだからこそ成し得られることなのだ。

「はい!お願いします」

そう言って、アレクは自分の屋敷に転移して帰るのであった。
しおりを挟む
感想 2,139

あなたにおすすめの小説

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜

三月べに
ファンタジー
 令嬢に転生してよかった〜!!!  素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。  少女漫画や小説大好き人間だった前世。  転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。  そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが? 【連載再開しました! 二章 冒険編。】

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。