上 下
118 / 771
第3章 日常に戻ったアレク達

第233話 マクガリアスvsバトラー!試合開始と決着!

しおりを挟む
チュータから試合開始の合図が出される。
いつもなら、開始直後マクガリアスが先制打を与えに相手へ向かっていくのだが、今回は動く気配はなく、棍棒を構えて相手を見据えているのだ。

「それでよい。マクガリアス!向かって行くだけが戦いではないのだからな」

ラヴァーナが、観客席から周りにいる子供達に聞こえるか聞こえないかの声で言う。

「お母様、何か言いましたか?それにしても、お互い動きませんね」

リリスが、動こうとしないバトラーとマクガリアスを不思議そうな顔で見ながら言う。

「戦いとは、がすべてではないの。があるからこそ動が生きるのよ」

ラヴァーナは、いつものような口調ではなく、子供達に話す口調で伝える。

「・・・・よくわかりません」

「僕もわかりません。相手に有効打を与えないと勝てないと思います」

リリスもウァラクも、どういうことなのと頭の中が?でいっぱいになる。

「フフッ、いずれわかるわ。それより、そろそろ動くわよ」

ラヴァーナは、笑みを浮かべながらいずれ理解する時が来るとほのめかすのであった。





「事前に聞いていた話と違いますね。無鉄砲に攻撃してくると思っていましたが、慎重に見据えておられる。こちらから行くしかないようですね」

バトラーが、そう言うと両手合わせて合計8つのナイフを指と指の間に挟んで、マクガリアス目掛けて素早く投げる。

「こんな軽い攻撃俺には効かん...ぐっ...なに!?」

棍棒で弾き返したはずのナイフは、軌道は変わったもののスピードは衰えることなくマクガリアスの腕と足に刺さる。

「おかしいですね?棍棒を貫通するように投げたのですが。見誤りましたか...」

「ぐっ...痛ぇな。魔力を凝縮させて放ったのか!無闇に突っ込まなくて正解だったぜ」

ミスリルナイフに極限まで魔力を込めて、スピードと威力を最大まで上げたナイフだったようだが、マクガリアスの力と棍棒の強度と肉体強度は、バトラーが思っている以上にあり、予想に反したのだ。

「では、これならどうですか」

「遅い!」

バトラーが、ナイフを投げようとした瞬間、マクガリアスが目の前におり、棍棒で殴ぐってきたのだ。バトラーは、まともに攻撃を受けてぶっ飛び地面に打ちつけられる。

「・・・おっと~急に攻防が始まった為、実況を忘れてしまいました。バトラー選手が優勢に見えましたが、ここでマクガリアス選手が起死回生の一打です!バトラー選手立ち上がれるのかぁぁぁ」

チュータは、実況を忘れて見入ってしまっていたようだ。それくらい動かない時間が長く、動き出してからはあっという間の出来事だったのだ。

「おい!早く起き上がってこい」

マクガリアスが、急に寝転がるバトラーに目掛けて叫びだす。

「ふぅ~もう少し休憩させて下さいよ。あの衝撃を受けて少し痛かったのですから」

何もなかったのように平然と立ち上がり、服の埃を払うバトラー。

「チッ、まともに食らわせたはずが、殴った感触がしなかったぜ。どういうことだ?」

「別に教えても構いませんよ。私のスキル、スライム化です。逆に問いますが、あの一瞬にして目の前に来たのはどのような仕組みなのですか?」

バトラーは、スライム化することで衝撃を緩和してダメージを負わないようにしたのである。

「めんどくさいスキルだな。ん?あれか...俺のスキル、瞬動ってやつだ。普段は、あまり使わないが、あのままだと間合いに入れそうになかったからな」

「驚きましたよ。反応できない速さとは厄介ですね。どうしたものか...」

そして、またしてもお互い動きを止めるのであった。お互いのスキルを警戒して動くに動けない状態なのである。

だが、マクガリアスが痺れを切らして瞬動で間合いに入る。そして、炎を直撃させるのだ。

業炎滅却ファイアフレイムイクステンション

巨大な炎がバトラーを包み込む。

「これは決まったかぁぁぁ!凄まじい炎がバトラー選手に襲いかかったぁぁぁ!」

しかし、マクガリアスの後ろから声がしたのだ。

「それは、スライム分身ですよ」

そして、マクガリアスがその声に反応して振り向くか振り向かない辺りで、ナイフをマクガリアスの体に刺す。

「ぐはぁ...次は毒かよ...だが、捕まえたぜ」

バトラーは、魔力を通したナイフではなく、猛毒が塗られたナイフをマクガリアスに刺したのだ。普通ならそこで死んでいるはずなのだが、なぜが耐えたマクガリアスがバトラーの腕を掴む。

業炎滅却ファイアフレイムイクステンション

「これは、私の負けですね」

今度こそまともにバトラーへ直撃するのだった。

「・・・・言葉になりません。両者一歩も引かない素晴らしい試合です。しかし、今度こそ決着がついたでしょう」

マクガリアスは、猛毒の影響で片膝を突く。
そして、炎が消えてバトラーが姿を現すが、丸焦げになって横たわっている。

「決着が着きましたぁぁぁ...お待ち下さい!これは!!」

完全にマクガリアスの勝利だと思われたのだったが、マクガリアスは片膝を突いたまま動かないのだ?それに、両者の腕輪が砕け散っているのである。

「なんとマクガリアス選手の勝利だと思われましたが、引き分けです。マクガリアス選手も致命傷を負っていた模様です」

そして、二人は身代わりの腕輪の効果で元の姿に戻るのだった。

「ぐはぁ...また負けたのか?」

「はぁはぁはぁ、これが死ですか...二度と経験したくありませんね」

マクガリアスは、尻餅をついて嘆く。バトラーは、死の恐怖を体験して息を切らすのだった。

「よろしいでしょうか?マクガリアス様、バトラー様、両者引き分けでございます」

「なに~引き分けかよ」

マクガリアスは、そのまま後ろに倒れて仰向けになるのだった。

「引き分けですか...これは恥ずかしいところをセバスさんに見られてしまいましたね。鍛え直さないと怒られてしまいますよ」

バトラーは、執事らしく姿勢良く立ち発言をする。

そして、観客席からは盛大な拍手と歓声が起こるのであった。
しおりを挟む
感想 2,151

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

愛人がいらっしゃるようですし、私は故郷へ帰ります。

hana
恋愛
結婚三年目。 庭の木の下では、旦那と愛人が逢瀬を繰り広げていた。 私は二階の窓からそれを眺め、愛が冷めていくのを感じていた……

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。