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第2章 魔ノ国の調査隊

第217話 宰相と陛下の驚きとアレクの功績は前代未聞!?

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アレク達は、一瞬にして王国の王城前に転移してきたのだ。ちょうど、城門前だったこともあって兵士と目が合う。その瞬間、兵士が槍を向けてくるが、アレクのことを覚えていたみたいで、すぐに槍を下ろす。

「タ、タカハシ伯爵様ですか!?」

兵士は、急に現れたアレク達に驚く。

「魔ノ国から転移してきました。宰相のアントン様を呼んで頂くことは可能ですか?」

「はい!タカハシ伯爵様が訪ねてきた際は、すぐにお通しするように言われております。先触れを送りますのでお入り下さい」

そして、兵士長らしき人が一人の兵士にアントンへと伝えてくるように言っていた。その兵士は、大急ぎで城内に入っていくのであった。

「すぐにアントン様が来られると思いますので、こちらでお待ち下さい」

アレク達は、城内に入ってすぐのところで待っている。そして、暫く待っているとアントンがやってくるのだった。

「タカハシ伯爵、ご無事でなによりです。他の方々もお元気そうで何よりです。タカハシ伯爵は、陛下の下へお願いします。他の方々は、部屋を用意しましたので英気を養って下さい」

「あ!はい。わかりました」

一番爵位が高い者が呼ばれるのは分かっていたが、今は少しゆっくりしたいなと思うアレクだった。





それから、アレクはアントンに連れられて陛下の下に向かう。それ以外の者は、執事が部屋に案内をするのだった。

「こんな早く戻られるとは思ってもみませんでした。正直、報告を聞くのが怖いですね」

あまりにも早く帰ってきたことと、転移で戻ってきたことから逃げてきたのではないかと思ってしまうアントン。

「色々ありましたからね。報告内容が膨大過ぎて陛下の頭が混乱しないかと思っています」

「そこまでですか...私も気合いを入れて聞く必要がありそうですね」

アントンは、気合いを入れ直してどんな報告が来ようと受け止めると心に誓うのだった。

「それより、報告書もまとめていませんが大丈夫でしょうか?」

アレクは、激動の毎日であった為に、報告書を一切書いていなかったのだ。

「構いません。書記が出来る人物を用意してあります。それでは、部屋に着きましたのでお入り下さい」

トントントン

「タカハシ伯爵をお連れ致しました」

「入りなさい」

中から返事がしたので、アントンが開けてアレクが中に入る。すると、陛下と女性がおり、女性は頭を下げる。

「タカハシ伯爵、よくぞ無事に帰ってきた。まずは、座ってくれ!」

言われた通りソファーに座るアレク。だが、大事なことを思い出す。ラヴァーナからの親書を渡し忘れるところだったのだ。

「陛下、まずはこちらをご拝読下さい」

「うむ!わかった」

陛下は親書を開けて中身を読む。そして、読むにつれて驚きの顔になり最終的には大笑いするのであった。

「フッハハハハ、これは偉業であるな...タカハシ伯爵、よくやってくれた。アントンも読むがよい」

アントンも渡された親書を読む。すると先程の陛下のように驚きの顔をしてから微笑むのだった。

「これは素晴らしいですね。まさか、ここまでのことをやってくれるとは...前代未聞です」

親書に書かれた内容を要約すると、アレクのことを大変気に入ったこと、アレク個人と繋がりを持ちたいこと。それと王国でパスク達、魔ノ国の者が世話になったこと。そして最後に、王国の民でもないパスクに爵位を与える寛容さに興味を持ったラヴァーナがウズベル王に会いたいという内容だった。

「タカハシ伯爵、よくやってくれた!出発前に話した約束以外にも褒美を渡したいが検討させてくれ。前代未聞過ぎて話し合いが必要である!それに、早速親書をこちらも書かなくてはいかんからな」

出発前の約束事とは、来年の3年次復学を希望することと、当分の間は法衣貴族のままでいるということだ。だが、それ以外にも褒美を与えようとしているらしい。

「陛下、その前に向こうで何があったのか話をお聞きしませんか?親書をしたためるのは、その後でも遅くはないかと」

「そうであるな。余もアレクが魔ノ国で何をしでかして来たのか気になるのでな。聞かせてはくれぬか?」

タカハシ伯爵からアレクに呼び名を変えたことにより、もう公式の場ではなくなったことを意味する。

「はい!まずは、ドリガン子爵の屋敷...」

話した内容は、ドリガン子爵のところでマクガリアスという四天王とノックスが戦ったこと、そして向こうに着くと魔王の子供達が病気であった為アレクが治したこと、それから四天王と親善試合を行ったこと、更には戦争のきっかけであったパスクの兄を炙り出すことに成功して見事解決したこと、そのことから魔王や四天王やドリガン子爵といった多くの人と友好関係を結べたことを話した。ちなみに、転生者との話はしていない。これだけは、まだ秘密にする必要があると感じているのだ。

「フッハハハハ、もう驚かんと思っておったが、一つ一つの内容が濃すぎて驚きと笑いしか出んぞ。改めてタカハシ伯爵、今回はご苦労であった。そして、王国を救ってくれたこと感謝する」

陛下は、アレクに対して頭を下げる。陛下が頭を下げることなど前代未聞であり、アレクは驚くしかない。

「へ、陛下、頭をお上げ下さい。陛下が簡単に頭を下げてはいけません」

「余が頭を下げたのは父上と母上以来である。それ程に、今回の件は重要であったということだ。この件でアレクを公爵にしてもよいと余は考えておるくらいだ」

アレクは、陛下に褒められたのは嬉しいが、まさかの公爵という言葉に驚くほかなかった。

「陛下、タカハシ伯爵が言葉を失っております。タカハシ伯爵も、長旅でお疲れでしょう。今日は、このくらいにして続きは後日でよろしいかと」

アントンが助け船を出す。アレクも、そろそろ休みたいと考えていたので有り難い申し出であった。

「おぉ、確かにそうであるな。アレクご苦労であった。下がってよいぞ」

そう言われたアレクは、アントンと共に部屋を出るのだった。

「ふぅ~」

やっと終わったと無意識で息を吐いたアレク。

「タカハシ伯爵、本当にお疲れ様でした。湯浴みを用意してありますので、本日は城でごゆっくりしていって下さい」

アントンが、微笑みながらアレクに語りかける。それを聞いたアレクは、改めて使節団として無事に成し遂げられたのだと感じて安堵するのだった。
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