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第2章 魔ノ国の調査隊

第211話 マンテ爺には温泉の匂いは、厳しいようです!

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料理を堪能したアレクは、馬車に乗って温泉に向かっている。なんでか料理長も付いてきているのだ。

「料理長、店は大丈夫なんですか?」

アレクが心配をして尋ねる。

「大丈夫だ。営業は夜からだからな。その前に、英気を養おうと思ってな」

「それならいいんですが。ちなみに前職は何をされていたか聞いてもいいですか?」

「鉱山の責任者だな。採掘のスキルとチームワークを高めるスキルを持っていることからあいつに頼まれてやっていた感じだ」

そんなスキルもあるんだなと思うのと、転生者なのに俺最強のようなスキルがないことに驚くのであった。

「そうなんですね。そこからの料理長ってガラッと変わりましたね」

本当は、前世で採掘スキルに関わる仕事をしていたのかとか日本での話とかをしたかったのだが、ヤトもいるので当たり障りのないことを言うアレク。

「まぁ、元々は食う専門だったんだがな。大和料理に魅了されてしまって自分で作るようになったらどっぷりハマってしまったんだ」

日本食を食べたいが為に、探し回って見つけたのが、大和料理だったのだ。そして、毎日食べたいが為に料理を始めたのがきっかけで料理というものに魅了されたのである。

「そうだったのですね。それと、料理長の料理を食べて、より一層大和料理を食べたくなりましたよ。王国に戻って落ち着いたら大和ノ国に行ってみようと思います」

「おう!うまい飯屋は調査済みだからな。行く前に俺のところにこいよ」

「はい!その際はよろしくお願いします」

どうやら料理長は、いい料理屋を教えてくれるそうだ。

「お二人共、話し込んでいるところ申し訳ございません。そろそろ温泉に付きますよ」

「やっと温泉に入れるんですね。楽しみだなぁ」

アレクが、ウキウキ温泉のことを考えていると、マンテ爺がアレクの顔をペチペチと叩いてくる。

「鼻が鼻がひん曲がりそうじゃわい!なんじゃこの匂いは!?」

アレクが、それを聞いてクンクンと嗅いでみると懐かしい温泉の匂いがしてきたのだ。所謂、硫黄の匂いだ。

「マンテ爺には、この匂いはキツイのか!ちょっと待っててね。全知全能薬学」

全知全能薬学で、消臭や匂いに関する物を探す。いくつか探していると、鼻香消薬という物があったので調べてみると、鼻から入る匂いを2時間遮断するというものであった。

すぐに必要な素材を薬素材創造で作り出して調合する。

「マンテ爺、これを飲んでみて」

器ごとマンテ爺に渡すと、マンテ爺は愛らしい姿で器用に前足を使って薬を飲むのであった。

「おぉぉぉ凄いのぅ。あの腐った卵のような匂いがしなくなったわい。じゃが、アレクの匂いも消えてしまったんじゃ。すまんが、見失わぬように抱えておいてくれんか?」

見事に不快な匂いは消し去ったのだが、全ての匂いが消えてしまった所為で、もし迷子になった時に探せなくなると言って抱っこを要求するマンテ爺。

「わかったよ。ずっと抱えておくから心配しなくていいからね」

アレクは、マンテ爺を抱きかかえて膝の上に乗せるのであった。

「調合スキルか!その他にもありそうだが、スキルを秘密にするやつもいるからな。聞かずにおいてやる」

全知全能薬学までは、わかっていないようだが、素材がいきなり現れたことで他にもスキルがあるのではと思う料理長であった。

ヤトも敢えて聞く必要はないといった感じで、スキルについて触れようとはしなかった。

アレクは、軽率だったかなと思ったのだが、二人ともいい魔族だと認識しているのでスキルを使用したのである。

「ありがとうございます。説明すると大変なので助かります」

アレクがお礼を言うと同時に馬車が止まる。

「着きました。気をつけて降りて下さい」

バズが、馬車の扉を開けて言う。
アレク達は、順番に馬車を降りるのだが、ヤトは馬車の中に残っている。

「あれ?ヤトは行かないの?」

「はい!案内人には料理長もおりますし、タカハシ伯爵様も少人数の方が、ごゆっくりできるだろうと思いまして。ですので、お二人でごゆっくりしてきて下さい。私共は、こちらでお待ちしていますので」

ゆっくりしてほしいのもあったのだが、店での二人の様子を見て自分がいると邪魔になるだろうと考えたヤトは残ることに決めたのだ。

「そうかぁ...気にしないでよかったのに...でも、そういうことならお言葉に甘えさせて頂くよ」

「はい!ごゆっくりしてきて下さい」

そう言ってヤトとバズは、アレク達を見送るのであった。
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