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第2章 魔ノ国の調査隊

第209話 人間の御者と魔ノ国の街並み!

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昨日は、ワインや火酒やエールなどが振る舞われて大人達だけが盛り上がる感じになってしまったので、まだ成人を迎えていないアレクは、飲みたいのを我慢しながらマンテ爺を連れて寂しくベッドに向かい寝るのであった。

キョエーキョエーキョエー

朝を迎えると相変わらずハゲ泣き鳥が外の木で鳴いている。

「うわぁぁぁ、うるさいなぁ。そんなに俺に禿げてほしいのかよ。禿げてるのはゴルドンさんだけで十分なの!」

間近にゴルドンがいたら、本気で泣いてしまいそうなことを言うアレクであった。

「マンテ爺は、よくこんなうるさい中寝てられるよな」

相変わらず仰向けでお腹を出しながら安心仕切ったように寝るマンテ爺。

トントントン

「ヤトです。朝早くに申し訳ございません。お迎えに上がりました。温泉へ向かいましょう」

ヤトは、普通なら失礼に当たるので、こんな朝早くから訪ねるようなことはしないのだが、アレクなら許してくれるだろうということと、ふとした時に貴族であることを忘れてしまうくらい接しやすい人物だと思っているからこのようなことができるのである。

「は~い!マンテ爺を起こして、着替えたら行くから待ってて下さ~い」

アレクは、慌ててマンテ爺を起こして、服を着替えるのであった。





「お待たせしました。行きましょう」

「タカハシ伯爵様、また畏まった話し方になっておりますよ」

笑いながら指摘してくるヤト。アレクは、あっ!と思うのであった。

「ごめんごめん、つい癖で出てしまうんだよね。気をつけるよ」

頭を掻きながら答えるアレク。

「癖なら仕方ありませんね。二人でいる時は話しやすいように話して下さい」

「ありがとう。ヤト。それで、これから温泉に直接向かう感じかな?」

そう話しながら王城の玄関を出る二人。

「まずは、朝食を食べに行きましょう。この馬車にお乗り下さい」

玄関を出ると、豪華な馬車が用意されており、御者が待っていた。

「タカハシ伯爵様、初めまして!本日、御者を務めさせて頂きます。バズと申します」

魔族なのだろうが、角や尻尾がなく見た目が人間そっくりなのである。

「よろしくお願いします。つかぬことをお聞きしますが、バズさんは人間ですか?」

最初は、きょとんとした顔をしていたが、納得したような顔をするバズ。

「はい!人間でございます。帝国から逃げてきたところを魔王様に助けて頂きまして、今こうやって王城の御者として働かせて頂いております」

「そうだったのですね。平穏無事に暮らせていそうでよかったです」

見た感じ栄養が行き届いた体をしているのと顔もツヤツヤで満足のいく生活をしていることが窺えたのだ。

「はい!帝国では毎日の生活が苦しく生きることに必死でしたが、魔ノ国に来てからは仕事も楽しく満足いく給金を頂き、住む家まで
提供してもらい、魔王様には感謝してもし足りないくらいです」

笑顔で答えるバズに、アレクはよかったなと思うのであった。

「それはよかったです。バズさんが、今後も楽しい毎日を過ごせるよう願っています。本日は、長くなるかもですが、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願い致します。では、気をつけてお乗り下さい」

バズは、馬車の扉を開けてアレクとヤトが乗るのを見届けるのであった。

「え?こんな広いの?それにフカフカで座り心地最高~」

それを聞いたヤトは微笑みながらアレクを見るのであった。

「中は魔道具で空間拡張してあります。椅子は、専属の者が最高の素材を用いて仕上げております」

空間拡張で部屋並みに広い馬車とフカフカな椅子に、魔ノ国のスケールの大きさを痛感するアレクであった。

「では、出発致します」

御者のバズから号令がかかる。すると、ゆっくり進み王城を後にするのであった。





それから、馬車はひた走り街へと辿り着いた。街並みは王国と大差はないのだが、道幅がとにかく広いのだ。
何故かというと、飼い慣らしている大きな魔物や大きな魔族がいるからである。

「ここなら大きくなったマンテ爺でも気にせず歩けるんじゃないかな?」

マンテ爺も、外の街並みが気になるのか、小さい体を目一杯伸ばして窓の縁に前足を引っ掛けて眺めているのだ。

「そうじゃな。ワシも余裕で歩けそうじゃわい。それにしても、色んな種族がおって活気のある街じゃな」

竜人やヴァンパイアや鬼人やハーピィーやらそれ以外にも沢山の種族がいるのだ。アレクは、何故太陽の下を平気でヴァンパイアが歩けているのと思うのだったが、気にしたら駄目なような気がして受け入れることにしたのである。

そんなことを思っていると馬車が停車する。

トントントン

「タカハシ伯爵様、ヤト様、到着いたしました」

そう言って、馬車の扉を開けるバズ。
そしてアレクが、外へ出て見たのは高級感溢れる外観の建物だったのだ。

「うわぁぁぁ」

「タカハシ伯爵様、こちらで朝食を取って頂きます。では、入りましょう」

驚いているアレクを気にする様子もなく、店の中に入っていくヤト。

「えっ、ちょっと待って」

それに気付いたアレクは、慌ててヤトの後をついていくのであった。
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